”援助大国”はどこへ行った

 日本国内で、中国向けの円借款供与停止を中心に、政府開発援助(ODA)削減問題が国民的コンセンサスを得つつある中で、国際世界では逆に援助を増額する取り組みが強まっている。つい数年前までは世界最大の援助国の地位を謳歌していたのが丸で嘘のような転落ぶりだ。”援助大国”は果たして、どこへ行ってしまったのか。

 それにしても対中ODAの9割を占める対中円借款の激減ぶりは際立つ。2003年度の供与額は967億円で、過去最高だった2000年度の2144億円に比べ、実に半減した。わずか3年である。中国自体の経済発展や軍事費増大が日本国内の世論を刺激し、対中ODA削減を招いたほか、援助の重点対象そのものがインフラ整備から、環境対策や人材育成などにシフトしたことも背景にある。

 「10%近い高度成長を続ける中国に、貴重な血税を援助する必要があるのか」という分かりやすい議論が対中援助削減論を主導、日本政府も3年後の2008年度をめどに円借款については停止する方針を中国側にも伝えたようだ。2005年度のODA政府予算が前年度比3.8%減の7862億円と6年連続で減少したのもむべなるかな、である。

 3月7日(月)、外務省で開かれたODAの基本方針を話し合う「ODA総合戦略会議」第21回会合でも対中援助をめぐって議論が展開され、町村信孝外相も「いかに(停止に向け)軟着陸させるか、中国側と意見交換を始めた」と言明、停止方針を確認した。

 然るに問題は日本以外の先進国。対照的に、米国、フランス、ドイツなどが増額に踏み切ったからだ。英国も今年7月にスコットランド・グレンイーグルスで開催するサミットではアフリカ貧困問題を主要議題に設定しており、援助が大きなテーマになる見通し。そうした中で、大幅削減路線に転換した日本は難しい立場に追い込まれることも懸念される。

 折りしも、アナン国連事務総長の特別顧問として、ジェフリー・サックス米コロンビア大学教授が3月7日に町村外相と会談。サックス教授から、日本同様に国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指すドイツが、ODAを2014年までに対GNP(国民総生産)比で0.7%に引き上げる方針だと指摘され、苦しそうだった。ちなみに日本は0.2%程度。ODAの集票力は抜群だっただけに、政治外交面での影響力低下が心配だ。

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