電中研「エコキュート」開発設備見学

 財団法人「電力中央研究所」(本部・東京都千代田区大手町1-6-1)の横須賀地区にある研究施設を見学した。敷地面積は20万㎡。電気事業に関する研究と、その成果を通じた社会への貢献が最大の任務だ。研究費などの運営費は9電力の寄付によって賄われている。見学した主な研究設備は以下の通り。

 ▼CO2ヒートポンプ実験装置=自然冷媒を用いた高性能ヒートポンプの研究

 大気の熱を汲み上げて、自然冷媒CO2に伝え、それを圧縮することで高温にして、その熱でお湯を沸かすシステムがヒートポンプ給湯機。エアコンなどのヒートポンプはこれまで、フロンガスを冷媒に用いているが、オゾン層破壊や地球温暖化問題から使用が制限される方向。電中研では自然界に存在し、毒性・可燃性のないCO2を冷媒に使用することに成功し、2001年5月「エコキュート」(商品名)を世に送り出した。30%の省エネ性が売り物だ。今後の課題は高性能化(高効率、高出力)、小型化。
 
 ▼バイオマス/廃棄物炭化・溶融・ガス化実験設備=多様なバイオマスの混合利用が可能な                                  高効率発電システムの開発
 「バイオマス」は動植物から生まれた再生可能な有機性資源のこと。代表的なものに家畜排泄物や生ごみ、木くず、稲わら・もみがらなどがある。これらのバイオマスの持つエネルギーを電気や液体燃料に高効率で転換する技術の開発に取り組んでいる。ここでは木質系および廃棄物系バイオマスを混合利用でき、中小規模(数トン~200トン/日)でも高効率で環境にやさしいガス化発電技術の開発を行っている。

 ▼減圧アーク除染装置=プラズマを用いた放射性配管類の表面除染技術の開発

  安定したエネルギー供給を行うためには、原子力発電所の解体時などに発生する配管類の放射性廃棄物を再利用し、環境負荷を低減することが重要。放射性廃棄物の表面に付着した放射性核種を除き、きれいにするために、放電の一種である減圧アークが金属基板上の酸化皮膜を選択的に高速で除去する性質を利用し、これを表面除染技術として応用したものだ。化学液を用いた化学除染など既存技術に対して、除染時に発生する新たな二次廃棄物が少ないのが特徴だ。基礎研究を継続中で、実用化にはまだ時間がかかる見通しとか。

 見学した6月7日は曇天ながら、三浦半島西岸の相模湾はほど良い風が吹きわたっていた。見学を終え、サーファーたちの姿を眺めながら、バスで逗子に。せっかくだから、電車で3駅の横須賀まで足を伸ばす。湾内には潜水艦が2隻。軍港である。駅前のスナック「マイルストーン」(横須賀市汐入町1-3中丸ビル2F)から湾を眺めながら、めったにこない理科系情報の洪水に疲れた脳を休めた。
 

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