藤原伊織「シリウスの道」

 藤原伊織の長編ミステリー「シリウスの道」を読み終えた。子供のころ一緒に育った幼馴染、辰村祐介、浜井勝哉、半沢明子の3人のある「秘密」が生んだ数奇な物語。東京の広告代理店を舞台に、ネット証券立ち上げ宣伝プロジェクトの進行とともに、物語も展開する。

 中心人物は「東邦広告」京橋第12営業局5部の辰村祐介副部長。同じ情報産業とは言いながら、広告業界の内情はさっぱり分からない。分からないながらも、時代の先端を走っている産業であることだけは何とか感じられる。それにしても、読了後も理解できない部分が多い。

 そんなことはどうでもいい。本を読む楽しみというのは、どれだけ、物語の登場人物に感情移入できるかどうかだ。登場人物の言葉、態度、行動パターンを違和感なく、認めることができるかどうかだ。辰村祐介の行動は桁外れで、普通のサラリーマン、一般の生活人の基準とは掛け離れている。かと言って、それが感情移入を阻害する理由にはならない。

 それにしても、文章がやけにうまい。練りに練り上げた文章だろうが、ほれぼれするような会話が繰り広げられる。日常生活ではこんな会話のキャッチボールはまず、無理だろうな。でも、これが文学なのだろう。

シリウス:大犬座の首星。光輝全天唯一の白色星。白色矮星と連星を成す。オリオン座に続いて冬の空を飾る。(広辞苑)

①ダックスフントのワープ(1987年2月、集英社)
②テロリストのパラソル(1995年9月、講談社)
③ひまわりの祝祭(1997年、講談社)
④雪が降る(1998年6月、講談社)
⑤てのひらの闇(1999年10月、文芸春秋)
⑥蚊トンボ白鬚の冒険(2002年4月、講談社)
⑦シリウスの道(2005年6月、文芸春秋)

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