国際開発ジャーナル主幹・荒木光弥さんの出版記念会
1967年に国際開発ジャーナル誌を創刊し、以来今日に至るまでずっと書き続けている現役ジャーナリストだ。今回出版された「途上国援助 歴史の証言1990年代」は荒木さんが同誌に毎回連載している社説的コラム「From the Editor」(現在は「森羅万象」に改題)を収録したもので、そのまま日本のODAをめぐる問題意識が浮き彫りになっている。1970年代、1980年代に続く第3部だ。
「ジャーナリストは少し売れるとすぐ評論家になったり、文化人になるが、荒木さんはジャーナリストのまま。キーパーソンの役割も高い志、理念がないと続かない」(吉村氏)。それを実践しているところが荒木さんらしい。
「日本は経済大国になっても、軍事大国にはならない。戦争はしない。そういう日本らしい形のODAを目指すべきだと考える」というのが故大来佐武郎(元外相)氏を師と仰ぐ荒木さんの基本的スタンスだ。軍事力に頼らない日本らしい貢献が必要だとの考え方である。
危機的な財政状況に加え、ODAを国連常任理事国入りの切り札に使い、それが見事に失敗した外交政策の破綻など、「ODAはいろんな意味で過酷な批判にさらされている」(明石康元国連事務次長)のが現状である。
この日のパーティーは荒木さんの出版記念という場でもあるが、やはり、「わが国のODAなど開発援助の沈滞ムードの払拭を願って関係者が一同に集い、一層の発展へ向けて語り合う場を提供できればと思う」(発起人代表の渡辺利夫拓殖大学学長)というのが隠された趣旨でもあった。
荒木さんは実に若々しく、いつも精気に満ちている。「この若さ。ほとんど年齢不詳の世界。しかし最近、実はそんなに若くはないことを発見してびっくりした」とは佐藤重和外務省経済協力局長。1936年生まれ。業界はまだまだ、荒木さんを必要としていることだけは確かなようである。