通信と放送の融合

 IT(通信技術)の進歩がすさまじい。あらゆる分野にITが採用され始め、その普及速度は文字通り、加速度的だ。携帯電話の基本操作はそれでも何とかクリアできたものの、iPODやポッドキャスティング、ワンセグ放送などとなると、もうお手上げだ。

 次から次へと新手の技術が登場し、どこまで付いていけるのか不安だ。どこかの時点で、付いていく努力を放棄することになるのだろう。もう居直って、むしろ、旧技術に固執するのを良しとするのが目に見えているような気がしてならない。

 ライブドアのニッポン放送株買収騒動以降、社会的にも大きくクローズアップされているのが「通信と放送の融合」。それが身近なところで着々と進行し、「わしゃ知らん」というわけにいかないのが実情だ。

 最も分かりやすい例がテレビ。「わしゃ知らん」で済ませたいと思っても、それだと、2011年7月25日以降、今のテレビでは番組を見られなくなるからだ。「地上アナログテレビ放送」がデジタル化され、「地上デジタルテレビ放送」に移行するからだ。

 移行そのものは03年12月1日から関東、近畿、中京、東北と順次始まっており、06年12月までに全国の放送局でデジタル放送が開始される。11年7月24日まではアナログ、デジタルの両放送が並行ランされるが、11年7月25日からはデジタル放送に一本化される予定だ。

 「通信と放送の融合」の関係で、今最も注目されているのが「通信・放送の在り方に関する懇談会」(総務相の私的諮問機関、座長・松原聡東洋大学教授)。06年1月20日の第1回会合から議論を開始し、「夏の骨太の改革には何とか盛り込みたい」(松原座長)考えだ。

 現状はテレビ=地上波で見る。これがすべて。しかも、県域単位でしか見られない。東京では7局が視聴できるが、7局見られる地域はむしろ例外で、全国的には3局しかみられない地域や2局しか見られない地域も存在する。地上波の中継塔の関係で、電波が届かないからだ。

 しかし、ITが進歩した結果、テレビは地上波(UHFアンテナ)以外でも見られるようになった。衛星波(パラボラアンテナ)やCATV(放送ケーブル)、インターネット(通信ケーブル)がそれで、しかも、地上波のように県域単位ではなく、全国で視聴できる。

 つまり、伝送路が多様化し、地上波=テレビ放送ではなくなった。しかし、現行法は技術の進歩に対応した形になっておらず、さまざまな点で不都合を生じているのが実情だ。懇談会の議論は国民の視点から、放送法を利用者本位に改正することを目指しているが、とりわけ地方のテレビ放送局にとっては既存のビジネスモデルを崩される大改革。死活問題である。

 2月9日(木)、日本記者クラブで行われた松原座長の記者会見には200人ほどの会員が詰め掛け、関心の高さをうかがわせた。NHK改革も俎上に上っている。うっかりしていると、技術革新に取り残される。取り残されても一向に構わないが、実害を被ることだけは勘弁してもらいたいものだ。

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