日比谷図書館

 日比谷図書館は最も好きな図書館だ。かつて会社が隣りにあったため、何かと言ってよく使わせてもらった。それが調べごとだったり、考えごとだったり、単なる居眠りだったりしたことも多かった。時には会社のデスクではできない仕事を持ち込んで精を出したこともある。

 広尾にある調査参考専門の都立中央図書館や国会図書館などにもお世話になったが、貸し出し専門館である日比谷図書館の利便性、大衆性、気軽さを凌ぐ図書館にはまだお目に掛かっていない。地下の食堂のカレーライスはなぜあんなにうまいのだろう。

 外見はとてもオシャレな建物とは思えない。耐震補強されたものの、そんなに頑丈のようにも見えない。雑多な人が集まるので、そんなに知的な風でもない。アカデミックという点では大学図書館には多いに負けるはずだ。

 それでも日比谷図書館が好きだった。自分の唯一の著作を書架で眺めるのがささやかな個人的な喜びでもあった。その本もいつの間にか姿を消した。日比谷図書館とは長い付き合いである。節目、節目で立ち寄って、勉強したり、居眠りしたりした。

 この日比谷図書館も今年で開館100周年。展示物を見ていたら、この図書館の変遷が伺える。大変な歴史である。これからも頑張って欲しいと思っていたら、今年4月から「東京都立」から「千代田区立」に変わるという。生き残るために変わるのだろうか?

 この図書館に来る前に、東京宝塚劇場の隣りにある日比谷三井ビルに行った。久しぶりに「まい泉」のトンカツが食べたくなったからだ。それなのに、地下の食堂街は1店を除いて全部撤退していた。「昭和35年の建物で老朽化し、建て直しのため」(管理センター)だとか。

 どこもかしこも今や「CHANGE」が主流。変わることが当たり前の世の中だ。それはそれで理解できるが、変わらないほうが良いものや、むしろ変わってはいけないものもあるはずだ。変わらないことの美しさや落ち着きといったものも否定できない。変わらない物に触れたときの安らぎは何なのだろうか。こんなことを考えること自体、もう時代遅れなんだろうな。

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