確定申告


 確定申告最終日。いつものように押し掛けた善良な納税者で熱気に包まれていた。なぜか、この確定申告をやらないと春が来ないような気がしてならない。サラリーマンだから会社から年末調整され申告する必要がないのだが、医療費の還付申請をすれば、いくばくかは戻ってくるのではないかと期待して今年は出掛けた。

 確定申告をするのは2年ぶりだが、今年は申告会場の雰囲気がガラッと変わっていたのに驚いた。例年なら、会場は椅子に座って机の上でボールペンと電卓片手に職員に相談しながら申告用紙に書き入れていくのだが、まず低い机も椅子もなかった。

 あったのは脚長の長椅子の上にずらっと並べられたPC。座る椅子はなく、全員立ったままでPCを操作しながら、職員の指示を受けつつ入力する。申告書を何度も読みながら書き込んでいくあのアナログ的な作業はなく、数字を打ち込めばPCが自動計算。確かに機能的だが、じっくり考えるゆとりがないのはさみしい。

 電卓をたたきながら、納め過ぎで還付になるのか、それとも収め足らずに納税を余儀なくされるのか、極めて微妙なところで、意外とどきどきする。あれはあれで楽しい。年に1回、それでも税金について主体的に考える貴重な時間だった。あの張り詰めたような緊張感も悪くなかった。そんな雰囲気がもう消えてしまった。

 自宅でできる「e-Tax」(国税電子申告・納税システム)を使うことも考えたが、利用するためには電子証明書の取得が必要。本人確認のためには当然必要なのだが、これが大きなネック。区役所まで出向かなければならずひどく面倒。おまけに手数料が必要なのでは使えない。最高5000円の税額駆除を受かられるメリットを強調しているが、まず、事前準備の壁が高い。

 サラリーマンだけでなく、納税者全員が確定申告すべきだと思う。給与から天引きされるのでは自分の納税額をしっかり意識することができない。徴税側としては課税客体を完全に捕捉できるサラリーマンほどありがたい納税者はない。しかも彼らの納税意識を刺激しないで済むとなるとなおさらだ。

 自分の納税額をしっかり把握し、納税者としての意識を確立するためにも確定申告の全員義務化が望ましい。e-Taxは税務署側の都合だけを優先したようなもので、納税者側のメリットは雀の涙程度だ。短くとも今日は久しぶりに税について考えた1日だった。

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