二宮尊徳生家

 思い立って二宮尊徳(1787-1856)記念館(神奈川県小田原市栢山2065-1)を訪ねた。二宮尊徳にまつわる遺品・資料を展示している小田原市立。金次郎のほうが通りがよいが、後年、尊徳に改名した。

 生家は記念館のそば。寛保2年(1741)ごろ、祖父銀右衛門が分家したとき建てられたもので、江戸時代中期のこの地方の典型的な中流農家住宅。尊徳はこの家で生まれ、すぐ近くを流れる酒匂川(さかわがわ)の大洪水のため16歳のとき一家離散。この家も売られたり移築されたりしたが、昭和35年に誕生地に当時の姿で復元された。

 金融危機が拝金主義にかぶれた人間の欲望に一撃を与えた結果、経済と道徳の両立を唱えた尊徳の考えが改めて見直されている。人間のすることは何でも行き過ぎるものである。想像力が貧困なのだろう。痛い目にあっても、また同じことを繰り返して懲りない。

 「道徳なき経済は犯罪なり、経済なき道徳は寝言なり」。原典を確認できないが、このようなニューアンスのことを言っているという。今こそ尊徳の考えが生かされるべきではないか。

 生家のすぐそばを流れる酒匂川。病気の父に代わって堤防工事に出たりした。堤防補強のため彼の植えた松の苗が今では大きく育った。「坂口堤」と呼ばれる。

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