NHKスペシャル『マネー資本主義』

 NHKスペシャル『マネー資本主義』(全5回)の第2回「”超金余り”はなぜ起きたのか?~カリスマ指導者たちの誤算~」を見た。世界を襲っている金融危機をもたらしたのは膨大なマネーを世界に溢れさせ、無謀な投資を可能にした”超金余り”。

 その引き金を引いたとして厳しく批判されているのがアメリカの政策だ。この政策は誰がどのような理由から決定したのかに迫る。オリジナルドラマも交え、今、世界で起こっていることを平易に解明しようとしており、実に見ごたえがあった。

 危機の種を蒔いたのはそれまでのドル安容認政策を転換し、ドル高政策を導入することによって米国にマネーを集中させ、米経済を未曾有の好景気に導いたクリントン政権下のルービン元財務長官(投資銀行ゴールドマン・サックス元会長)。

 グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は低金利政策を継続することによってルービン路線を継承。マネーサプライを膨張させ続けた。市場に任せれば経済はうまくいくとのグリーンスパン氏の経済哲学が政策転換を遅らせる判断ミスを呼んだ、と指摘する。

 ルービン氏がドル高政策に転換するに当たっては日本も一役買った。1ドル=79円75銭という円の史上最高値更新で日本全体が円高・ドル安に悲鳴を上げていた時期と重なっており、武藤蔵相(当時)などがルービン財務長官に、米国債の売却を口にしながらドル安防止対策を取るようねじ込んだ経緯もあるからだ。

 ”超金余り”の実行行為者はルービン氏であり、グリーンスパン氏ではあるものの、それを呼び込むにあたっては日本も絡んでいたのだ。アメリカのせいだけにするわけにはいかない。

 米経済は”超金余り”になる中で、自動車などの製造業は衰退し、金融を中心とした資本主義に突っ走っていく。そして暴走する。主役は投資銀行。誰も暴走を止められなかったのである(第1回は「”暴走”はなぜ止められなかったのか~アメリカ投資銀行の興亡~」)。

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