アジサイの秘密

 わが家の軒先でアジサイ(紫陽花)が咲き始めた。人家の軒先などにひっそりと植えられ、梅雨の季節になると、途端に立派な花を咲かせる。開花期間は1カ月ほどだろうか。1年のほとんどは見向きもされないのはそれが定めか。

 非常に身近なアジサイなのだが、その実、「七変化」の理由など分からないことが結構多い。関心を持つことが普段ないからなのだが、調べてみると、それなりに複雑で、知りたいことになかなかたどり着けないのである。

 アジサイは日本固有の花。それを「1790年にジョセフ・バンクスがロンドンのキュー植物園に持ち込んだ。19世紀初期にはすでに紅色の花が咲くアジサイがつくられ、20世紀になると、ベルギー、オランダ、フランスを中心に育種が進み、現在数百種に及ぶ品種が知られている」(山と渓谷社『日本の樹木』)。

 この改良された品種が日本に逆輸入され、西洋アジサイまたはハイドランジャーと呼ばれている。通り掛かりによく見掛ける毬状のアジサイがそれだ。タンポポも日本古来の白い「日本タンポポ」はほぼ絶滅し、「西洋タンポポ」(黄色いタンポポ)に席巻されたようなものだ。それでもアジサイはまだガクアジサイやヤマアジサイとして奮闘しているようだ。

 調べるのにはそれなりに時間がかかる。時間の余裕がなかればならないし、ゆったりした気分も必要だ。植物図鑑も参考にしたが、やはり便利なのはネット検索。ただ、自分の欲しい情報の在りかに行き着くまでが結構大変である。しかし、探し回れば見つかるものである。「紫陽花の色の話」に行き着いた。

 それによると、アジサイの花の色はいろいろだが、どの色であっても色素は同じ「アントシアン」。全く同じアントシアンが濃い赤色を出したり、淡い青色を出したりしているのだという。これまた不思議である。元の色素はアントシアンだが、それだけで花の色が決まるのではなく、根が土壌から吸収する金属元素アルミニウムと花の中で合成される補助色素の3者の関係で花の色が決まるのだという。

アントシアン(アジサイの花に元々含まれている色素)
  +
補助色素(花に色がつき始めるにしたがって花の中で合成される色素)
  +
アルミニウム(根から吸収される金属元素)

 一般によく、土壌が酸性なら青、アルカリ性なら赤になると言われるが、そう単純でもなさそう。土中のアルミニウムの量も関係してくるのだという。とにかく発色のメカニズムは非常に複雑である。酸性・アルカリ性は人間の男女の産み分けにもたとえられるが、どうやらこの3者の関係も絶妙の配合のようだ。詮索などせず、花の色を楽しむことに精出せということなのだろうか。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

東京日誌Ⅱ

Previous article

サクランボ