小沢一郎氏が出馬表明=民主党代表選

 日本経済は円高・株安圧力にさらされ沈下する一方で、この未曾有の国難を一致団結して突破していかなければならないのは猿でも分かるはずだが、国家と国民の将来を指導する政治家の住む永田町には国難突破よりも重要なことがあるようである。

 権力闘争だ。もとより政治家を目指す人種には権力志向が強い。実現したい政策があって、それを実現するために力を求めていく。大半の政治家は、実現すべき政策があるからこそ永田町を目指すと思いたいが、中にはただ権力を握りたいだけで政治家を志す不心得者もいるかもしれない。

 権力志向者は政界だけではない。経済界でも官界でも学界でも、あらゆる世界にその種のたぐいの人種は存在する。人間の性(さが)だと言ってしまえばそれだけだが、それなりに修業を積んだ人間は、権力志向をぎらつかせないものだ。抑制が働く。それが人間の品性、品格というものである。

 小沢一郎前幹事長が26日朝、鳩山由紀夫前首相と会談し、前首相の支持を得たことを理由に、政権党・民主党の代表選(9月1日告示・14日投開票)に出馬表明した。2人は3か月前に、第一線を退いたはずである。鳩山氏は政界引退すら口にしていた。

 それなのに、今回の政局では菅直人首相と小沢前幹事長の間の仲介役を務め、小沢氏は鳩山氏の支持を理由に出馬を決意したという。鳩山氏は記者団に「私の一存で小沢先生には民主党に入ってもらった。その経緯からして私としては応援する。それが大義だと思っている」と述べたが、よく分からない。鳩山氏の言動には理解できないことがあまりにも多すぎる。

 何が何だか分からない。野党時代の代表選ならともかく、与党となった民主党代表選は首相選びに直結する。永田町の関係者にとっては、自分の仕事やポストにそれこそ直結する以上、冷静ではいられないのは当然だろう。首相選びそのものの代表選が日本の将来やわれわれの日々の生活にも影響する以上、われわれも自分には関係ないと距離を置くわけにもいかない。

 この日午前、スズキの鈴木修会長軒社長が都内で開いた新型車の発表会見で質問され、「(円高などで)日本が沈没しないような対策を立ててから、争いをやってもらいたい」と述べたと伝えられた(日経夕刊)。国民不在の権力闘争を見せ付けられる国民はたまったものではない。

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