阿久根前市長が提起した問題

 

 22日午前放映のテレビ東京「週刊ニュース新書」に16日実施の鹿児島県阿久根市の出直し市長選挙で敗れた竹原信一前市長(51)が生出演した。当選した新市長ではなく、落選した人物に出演を依頼した理由について、キャスターの田勢康弘氏は「竹原氏の提起した問題は単に阿久根市だけの問題ではない。日本そのものが問われている」と説明した。

 2008年秋に市長に就任した竹原氏は一部市民の解職請求(リコール)による住民投票で失職。それに基づいた出直し選挙は当選した西平良将氏8509票、竹原氏7645票。独善的な市政運営が批判されたにしては、票差864票で、市民のほぼ半数が竹原氏を支持したことを意味する。議会を開かずに専決処分を乱発する強引さに対し「独裁者」と糾弾されたり、県知事や総務大臣から違法性を指摘されながらも、高い支持を得たのはなぜか。

 竹原氏は対立した市議会について、「芝居・談合・多数決」と批判。官民格差是正のために市職員ボーナス半減、議員日当制など痛快とも思える改革を矢継ぎ早に打ち出し、市民の喝采を受けた。ただ、反対派との対話を拒み、支持者とも相談せず、議会も開かないまま専決処分を繰り返す手法は強い批判を浴びた。それも「市民のための独裁ならいい」という考えだ。

 竹原氏は番組の中で「身分制度」という言葉が何度か口にした。「公務員身分」のことだが、今一つよく分からないので調べてみた。プロフィールで自らを「日記作家:竹原信一」と呼ぶ日記ブログ「阿久根時事報 住民至上主義」の今年1月2日付日記に「阿久根から始まる日本革命」と題して書かれていた。

 「この国に、はるか昔に無くなったはずの身分制度があります。公務員です。公的にも『公務員身分』と呼び、一般市民には与えられない特権があります。この特権によって、公務員は市民ではなく国家を守る存在に仕立て上げられています」

 竹原氏の言いたいのは、「公務員身分」制度に守られている市議会議員(特別職地方公務員)の改革。国家権力やカネのためではなく、市民のために活動するよう改革すること。行政は「芝居・談合・多数決」のなあなあ政治で「大人の対応」をしてきたが、「損をしているのは住民。住民に気付かせないようにするのが教育とメディアだ」と指摘する。

 「私が市長をやったのは市民に気付かせるため。その道具だ」と竹原氏。同氏の指摘は恐らく正しい。指摘は正しいが、手法は正しくない。暴走だろうし、民主主義のルール違反だ。しかし、だからと言って、竹原氏の指摘の正統性は消えない。これがまた問題なのだ。いやはや・・・

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.