国民に不安を抱かせる政治は要らない

明日にでも辞めるとみられていた菅直人首相が辞めるどころか、辞めるに当たって自分から条件を出し、それをめぐって与党民主党はもとより、自民党・公明党などの野党を巻き込んだ形で政治の混迷が日増しに深刻化している。

攻められていたはずの菅首相は居座り期間が長期化するに従って一段と意気軒高。早期辞任を実現するべく躍起の岡田幹事長ら民主党執行部や小沢グループを含めた党内反菅勢力の足元を見透かした形で逆に攻勢を仕掛ける始末だ。

どこまで信じて良いのか疑問だが、世論調査の結果を見る限り、菅首相への支持は20%を割り込み、居座りには「NO」を突き付けた格好だ。しかし、国民からいくら「NO」と言われようと、首相を指名したのは民主党。国民はどうにもならないのだ。要は民主党政権に「NO」が突き付けられたのだ。

民主党に政権担当能力がないことが明確になった以上、一刻も早く、総選挙を実施し、民意を反映した政治を行うべきだ。しかし、民主党執行部も政権を失うことが怖いようだ。いったん握った権力を手離せないのだろう。

菅首相と個人的に親しい作家の石川好氏がいつだったか、FM放送の番組で、「菅さんは市民活動家出身だから、世論の風向きを常に意識している。政界では鳩山由紀夫前首相のことを宇宙人と呼んでいたが、本当の宇宙人は菅さんだ」と話していたことを覚えている。

菅首相の行動・発想パターンは政治家というよりも市民活動家のそれなのだ。ポピュリズムそのものだ。思い付きで行動するのが最大の特徴だ。こうしてみると、小沢一郎氏や鳩山氏が政治家らしい政治家に思えてくるから不思議だ。

エネルギー政策を中心に、政策の基軸が二転三転するのでは何も信じられない。信頼を失った政治家が何を言っても誰も聞く耳を持たない。政治は漂流し、国民の不安は高まるばかりだ。国の前途を不安にさせる行動を取っているのが首相で、本人はそういう意識が全くないのならば、こんな恐ろしいことはない。

一方で、菅首相が辞めたら問題が解決するかと言えば、そういうことは全くないのだろう。首相を支持し、支えているのは民主党内でも10人ぐらいらしいが、解散しない限り、衆議院での絶対多数は崩れず、民主党政権が続くだろう。

悲しいのはダメ民主党に代わって政権運営を担える自民党の支持率もほとんど上がらないことだ。時事通信社の世論調査によると、今年7月の内閣支持率は前月比9.4ポイント下落し、12.5%。2009年9月の民主党政権発足以降、最低を記録した。不支持率は11.6ポイント増の71.2%。

しかし、自民党の支持率は15.0%。前月(14.6%)とほぼ横ばいだ。民主党支持率は10.0%。国民の自民党への期待も低いのだ。国民のほとんどは民主党も自民党も信用していないのだ。23日、BS朝日の「激論!クロスファイア」に出演した石破茂自民党政調会長は「自民党が変わったことを国民に認めてもらえる努力が足りない」と自党の努力不足を認めた。

自民党はよほどインパクトのある政策を打ち出さない限り、国民の信頼を取り戻すのは難しいだろう。民主党に期待した多くの国民はそれに裏切られ、今や政治には完全にソッポを向いた感じだ。国民を幸福にするどころか、信頼を裏切り、さらには将来への不安を煽るような政治家は要らない。そういう悲鳴のような声が津々浦々から上がっている。

政治から目を逸らせてはならない。むしろ政治にこれまで以上に関心の目を向け、政治家の覚醒を促す努力を少しでも継続すべきだ。政治を無視し、政治から遠ざかることは簡単だ。しかし、その中からは何も生まれない。未来も夢も生まれない。子どもたちの将来もない。

日本の明日もない。日本が貢献できる国際社会にとってもマイナスだ。日本が世界に寄与できることはたくさんあるはずだ。それが内向きの政局に翻弄され、方向性を確実に見失った形だ。世界にとっても不幸である。

 

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