「図書館で言葉を磨く」

「探しているものの隣りをつい見てしまうのが図書館の面白いところだ」

 

開館1周年記念文学講演会
『作家が語る「日比谷×文学×図書館」』第3回
作家・阿刀田高「図書館で言葉を磨く」
2012年12月8日(日比谷図書文化館)

 

千代田区立日比谷図書文化館(日比谷公園内)は最も好きな図書館だ。都立だったときはもちろん、昨年11月に区立としてリニューアルオープンしたあとも使わせてもらっている。改装はされているものの、建物そのものは昔のままだし、個人的な思い出も詰まっている。

千代田区民でなくても、練馬区民でも寛容に受け入れる度量の大きさも気に入っている。千代田区に人が来てくれることが区の発展に貢献すると考えているからだろう。インターネット席もあるし、ちょっとしたデータベースも使える。PC持ち込みもOKで、無線ならどの席でも使える。

10月からフリーになって、通り前の日本記者クラブの会見にはよく行く。会見に出たあと、図書館で調べ物をすることもある。セットで使うと使い勝手が格段に向上する。地下鉄も同じ駅だから、交通費も助かる。データイムホームレス&ノマドワーカーの私には理想的な場所だ。

阿刀田氏は1935年(昭和10)東京生まれ。早大文学部仏文化卒。国立国会図書館に勤めた。彼の作品は1冊も読んでいないが、日本ペンクラブの会長を務めたことは知っている。2012年4月に、11月にニューアル開館した山梨県立図書館の館長に就任した。

●自分の好みの、自分のレベルに合った、読んで楽しい本を見つけて読むのが一番。

●「読書保険」。最初に多少の努力は必要だが、読書習慣を身に付けてしまえば、歳をとれば、配当がきちんと巡ってくる。歳をとらなくても配当がある。今の保険は怪しいですが、「読書保険」は大丈夫ですよ。

●どうしたら読書好きの子供になるか。環境が大きい。大家族だったので、言葉遊びの中でいつの間にか言葉への興味・関心が培われた。日本の言葉遊びは世界一だ。日本語は他言語に比べ、音が少ない。だから同音異義語がたくさんある。親父ギャグなど日本文化そのものだ。「始め」という字について言えば、「女の無口は初めだけ」

●IT機器自体が図書館だ。図書館の中をぶらぶらしていると、思い掛けないものが見つかったりする。IT機器では探しているものの隣は見えない。それが図書館や古本屋などと違う。図書館では必要なものの隣やその隣を見てしまうのが面白い。

●目的ばかりを真っ直ぐ見つけようとするのではなく、変なものを「よそ見」することが意外と重要だ。セレンディピティ(Serendipity)。思い掛けないものを偶然に発見すること。「棚からぼた餅」と似ているが、決定的に違うのは努力していること。ニュートンもそうだし、コロンブス、キューリー夫人、ジェンナーもそうだ。ノーベル化学賞を2002年に受賞した日本の田中耕一氏は混ぜる試薬を間違えたことが大発見につながった。

●セレンディピティに恵まれる人と恵まれない人がいる。恵まれる人は脇見する人、そうでない人は自分の穴だけを掘っている人。ただ、それを捉まえる力、実力は必要だ。将棋の長考も将棋以外のことを考えたりしていて、それでそれまで思い付かなかった一手を思い付いたりするらしい。

●セレンディピティはユーモアと関係があるようだ。ユーモアというのも脇見みたいなものだ。別の角度から見るということ。図書館に効用があるとすれば、こういうものではないか。

●図書館にとって大事なのは「人、本、建物」の順だ。これは揺るぎない。IT機器の品揃え、速さ、便利さには図書館はかなわない。図書館には人がいる。こうした親しみの中にこそ、知的機関としての役割があると思う。

●日本人は本を探す場合、伝統的に書名から探すことが多い。これは著作権などの権利者意識が薄いためではないか。欧米の場合は著者名から探すのが一般的だ。

●自薦自著3冊
・『日本語を書く作法・読む作法』(角川書店)
・『ことば遊びの楽しみ』(岩波新書)
・『旧約聖書を知っていますか』(新潮文庫)

●とりわけ『旧約聖書を知っていますか』は世界の神話をわかりやすく読み解いた阿刀田古典シリーズの「旧訳聖書」版。取っ掛かりは「アイヤー、ヨッ」。アブラハムーイサクーヤコブーヨセフ・・・。4人の頭文字を取って「アイヤー、ヨッ」。アブラハムの子がイサク、イサクの子がヤコブ、ヤコブの子がヨセフである。

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