『フリーライターになろう!』

「ノウハウ本」というよりか、思いっきりの「ワタクシの本」でした

「ノウハウ本」ではなく、思いっ切り「ワタクシ本」でした

 

書名:『フリーライターになろう!』
著者:八岩まどか(やついわ・まどか)
出版社:青弓社(2012年4月15日第1刷)

 

いつだったか、どこだったか、思い出せないのだが、どこかの書店の書棚を眺めていて、この本と目が合った。手を出して、中身をぺらぺらした。ぺらぺらどころか、5分か10分か立ち読みした。なかなか面白いなと思った。しかし、そのときはそのまま買わなかった。

会社勤めをやめ、フリーで活動しようとしていたときだ。会社ジャーナリストを35年もやってきて、自分なりのジャーナリズム論というのはもちろん持っているつもりだが、それでも会社ジャーナリストとフリージャーナリスト(あるいはフリーライター)とは違うはず。どこがどう違うのか分からない。それを明確にさせたいという気持ちがあったからだ。

その後、自宅近くの図書館で再会した。別の本を借りに行ったとき、何気なく返却本が積まれているキャビンを見たら、この本が目に入った。表紙のデザインが黄色であることも気づいた理由かもしれない。そして、借りてきた。仕事の合間についつい読みふけってしまった。

著者の八岩まどか氏は何とも個性的だ。魅力的だ。単なるノウハウ本ではなく、本書には著者の個性がふんだんに盛り込まれている。紛れもなく、フリーライターとして仕事している自分をそのまま書いているからだ。自分論を書いているからだ。

「自分はこんなライター稼業をしている。フリーという生き方は結構辛いが、それなりに面白いですよ。よかったら、やってみませんか」という私的ライター論だ。だから、読者の共感を呼べる。

◍「ライターになるための方法は1つではない。こうすれば必ずライターになれるという正解はないのだ。ライターにとって大切なのは、自分ならどう考えるか、どう行動するかである」

◍「日本語の『ライター』とは、物書きの業界では『何でも屋』にあたるからだ。あえて日本語で表現するとすれば『よろず物書き引き受け業』とでもあるのが最も実態に近いだろう」

◍「日本の物書きの世界では、ライターと作家にははっきりとした違いがある。あるライターはその違いを、『作家は個性を主張し、ライターは一般的な視点を重視する』と表現している。作家は文章を書く場合、それを自分の作品として表現する。それに対して、ライターは取引相手から依頼されて書くのが一般的だ。ライターと作家は違う存在であるが、微妙につながってもいるのだ」

◍「フリーライターは、原稿を書くという仕事によって生活している人間だ。サラリーマンと違うのは、企業の社員として勤務するというスタイルをとらず、フリーで仕事をしている点にある」

●「『継続は力なり』という言葉があるが、ライターの仕事はまさにこれにあたる。苦しくてもしがみついて、ライターとしてやっていくこと-それがライターとして生き残る最低の条件といえるのだ。・・・私がフリーライターになりたてのとき、某週刊誌のデータマンをやった話を第2章で書いた。当時、ノンフィクション作家鎌田慧さんの連載について書いたことがある。取材が終わって新橋の寿司屋で一緒に飲んでいたとき、鎌田さんに、『大丈夫、力があればそのうち表に出られるよ』と言われた。私が『力って・・・、何でしょうか?』と聞き返すと、間髪を入れずに、『やる気だよ!』という答えが返ってきた。その時の言葉をいまでもよく思い出す。とくに苦しくなったときに、私が支えられた言葉である。これからライターを目指す人にも、ぜひこの言葉を贈りたい」

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