雪かきにみる日本の公共精神
一夜明けて、恐る恐るベランダから外を見た。雪は降り止んでいて、明るい日差しが注いでいた。ベランダの手すりに雪がないのは風で吹き飛ばされたためだ。ずいぶん強く風が吹いていた。台風の風みたいだった。
東京都心の積雪は27センチ。1969年(30センチ)以来、45年ぶりだと大騒ぎだ。都心から離れた西部の練馬区ではそれ以上の積雪だ。とにかく半端の積もり方ではない。
自宅は車の通る道から奥まったところになる。3軒続きの一番奥だ。何にしても、通りまで道を作らなければならない。そうでないと、どこへもいけない。花壇用のスコップと掃除用のちり取りで除雪作業に取り掛かった。スコップで道筋を作り、その跡をちり取りで残りの雪をすくい取る。
その作業を1時間ほど繰り返した。水分を含む雪は重い。中腰で作業をやるので、腰に来る。通りまで何とか行き着いた。その先は小学校の裏門。今日は都知事選挙の投票日。投票に行くためにも除雪は必要だ。車が通った跡はむしろ踏み固められて固い。途中で断念した。
こういうときにいつも率先してやる人とそうでない人がいる。近所のお父さんと高校生くらいの娘さんが頑張って、投票所のところまで道を作ってくれた。
私のスコップを見かねて、雪かき用のスコップを貸してくれた。「ポリカスコップ」。DIY大手のアステージ社(本社新潟県燕市)製で、「丈夫で長持ち」「頑強」「雪ささり良好」のラベルが張ってある。前から買っておいたものだという。心掛けが私とは違う。
雪はこれまでに何度も降っている。その都度、雪かきが必要だった。そのときは間に合わなくても、どうせ1シーズンに2~3度は降るのだから、雪かき用スコップを買うヒマはあったはずだ。買ってなかったのはその気がなかっただけだ。
投票に行こうと外に出たら、すっかり除雪が終わっていた。もちろん、お隣さんやそのお隣さんが除雪してくれていた。私も朝やったが、ほんの一部だけ。エビでタイを釣った気持ちだ。
別に区役所から指示されたわけでもない。自発的に、無理しない形でそれが行われている。日本人の公共精神は実にすばらしい。あらためてそのことを思った。
都知事選挙に行く。歩いて1分の小学校の体育館。投票を終えて外に出ると、広い校庭はまだ雪の海。明日までに溶けるのだろうか。人海戦術で除雪作業をやるのかもしれない。