不合理なアジアLNG市場

ブリーフィング風景

ブリーフィング風景

 

久しぶりに「石油天然ガス最新動向ブリーフィング」に出席した。主催は独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)。バックグランド情報を得られる便利な機会だが、大学の講義風なので、あまり専門的過ぎて、関心のないテーマだと眠くて辛い。

今回のトピックスは原油価格下落のサービス企業への影響、原油価格下落の既存油田の生産などに対する影響(メキシコ)、石油・天然ガス消費鈍化の要因と今後の見通し(中国)だったが、最後の「日本を取り巻くLNG情勢と取引の流動性向上に向けた動き」は面白かった。

 

キャプチャ1

 

天然ガス市場の最大の特徴は石油市場と違って世界市場が形成されていないことだ。歴史的に北米、欧州、アジアといった個別の地域市場に分断され、各市場間をまたがる流動的な取引もほとんどなく、天然ガス価格は各市場の事情・方式によって別個に決定されている。

 

キャプチャ2

 

たとえ3市場が分断されていても、結果的に3市場で形成される価格が同じか、それほどかけ離れたものでないならばさほど問題ではないが、現実は大きくかい離し、とりわけアジア市場で決まる価格は不当に高い「アジアプレミアム」を強いられているのが実情だ。

北米のガス価格は需給によって市場価格(指標:Henry Hub 、Socal)で決まっている。欧州は歴史的に石油製品に連動した形で長期契約で決まっている大陸と市場価格(NBPスポット価格)で決まる英国の2通り。北米は2009年以降、シェールガス需給が大幅に緩和した結果、価格が低下した。

欧州も油価高騰でガス価格も高騰したが、景気低迷や安価な石炭流入による天然ガス需要減少で天然ガス価格は低下した。買い手の価格交渉力もある。

これに比べて、日本の場合は原油価格に連動した長期契約価格となっている。油価高騰がLNG価格価格にもろに反映したほか、3.11後は原発停止によりLNG依存が大幅に高まり、高価格を余儀なくされた。調達手段もLNGのみであり、価格交渉力も弱い。

ブリーフィングしたJOGMEC調査部の永井一聡氏は、「元々から日本が不当に高いLNGを契約させられていたわけではない」としながらも、世界ガス市場の分断、非合理的な価格体系による構造的問題が「アジアプレミアム」を生んだと指摘。アジアプレミアムを解消し、「日本(アジア)が世界のガス価格と常に同等の価格で調達できること」を目指す必要があると強調した。

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