水産物の消費拡大も輸出頼みか

 

会見する全漁連の長屋信博氏

会見する全漁連の長屋信博氏

 

農林中金総合研究所主催の記者ブリーフィングで、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の長屋信博代表理事専務から、水産物の消費拡大に向けた取り組みを聞いた。ブリーフィングは毎月1回実施しており、今回が90回目。

もう7年ほど続いていることになる。継続されていることに敬意を表したい。なお、私が出席するのは今回が2回目。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)のブリーフィングにも参加しており、自分なりに関心分野の農業問題と原油・資源問題のウオッチ体制を敷いたつもりだ。

国内水産物の消費量は10年間で20%以上減少した。農水省および水産庁の調べによると、2000年度の消費量は853トンだったが、10年度には680トン(概算値)に落ち込んだ。同省「食糧需給表」からみると、魚介類の消費動向(純食料ベース)は01年をピークに、13年までの12年間で約32%減少した。

魚介類が減少したのに対して、増加したのは肉類だ。「国民栄養調査」からみた魚介類と肉類の摂取量は06年あたりで入れ替わり、それ以降、肉類は増勢を堅持しているものの、魚介類は総じて落ち込みが続いている。

魚屋の減少と魚の消費が落ち込んでいることとは関係がありそうだ。経産省の商業統計によると、鮮魚小売店舗数は約30年間で約3万7300店舗減少した。1982年の5万3133店舗から2012年には1万5833店舗になった。コンビニエンスストアの店舗数がほぼ同時期に約4万4000店舗増加したのと対照的だ。

水産庁が水産物の消費拡大策として2012年から取り組んだのが「ファストフィッシュ」プロジェクト。手軽、気軽に調理できる水産加工品を認定し、需要拡大を図った。12回の選定で商品数3067品、企業数522社が登録した。

ファストフィッシュは消費者ニーズに合った対策だったが、漁業者としては物足りない。漁師自慢の魚を選定し、本当の魚のおいしさや旬などについて情報発信する施策に取り組んだ。「プライドフィッシュ」プロジェクトがそれだ。

地元で水揚げされ、旬を明確にした漁師自慢の魚「プライドフィッシュ」を春夏秋冬4魚種を選定し、こだわりの魚を求める消費者の需要に応えることで消費拡大につなげる考えだ。

これまでに34都道府県で110魚種のプライドフィッシュが誕生した。ただ正直言ってあまり数が多すぎて、何を食べたら良いのかよく分からない。各都道府県に平等に配慮した、いかにもお役所仕事的な選定だけに、どれだけ成果が上がるか疑問だ。

水産庁が期待しているのは輸出の拡大だ。日本国内の1人当たり食用魚介類供給量は2000年以降大きく減少しているものの、世界では人口増を背景に上昇している。海外における日本食レストラ店舗数も2006年の約2万4000店から10年には約3万店に達し、13年3月時点では約5万5000店を記録した。日本食店では魚が主要メニューなので、消費拡大の重要な推進力となる。

これとの絡みで面白いのは、日本貿易振興機構(ジェトロ)が外国人を対象に、「好きな寿司ネタ」を訊ねたところ、一番多かったのは「鮭」だった。日本産水産物ではなく、ノルウェーやチリ産が中心。日本産水産物を売り込もうとしている関係者にとってはがっくりな結果だった。2位はまぐろ、3位えびなどは日本産だ。

農水省は今後の輸出戦略について、各県バラバラで取り組むのではなく、ブロックや地域でまとまって、オールジャパンとして重点品目を重点国・地域に積極的に輸出する取り組みを支援し、ジャパンブランドの確立や産地間連携による周年出荷体制の実現に取2020年までに水産物輸出額3500億円を目標に掲げている。

 

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