『シチズンフォー』

 

「国家は、あなたを監視している」

「国家は、あなたを監視している」

 

作品名:『シチズンフォー』(スノーデンの暴露)
監督・撮影・プロデューサー:ローラ・ポイトラス
2014年アメリカ・ドイツ・映画@第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞
試写会@2016年5月10日日本記者クラブ
6月全国順次ロードショー@シアター「イメージフォーラム」(渋谷区渋谷2)

世界は遂に国家VS国民の時代に入った。国家は国民を保護する組織だったはずだが、いつの間にか国民を監視する存在に変貌した。実際の対象は国家にとって不都合な人物・組織だけだろうが、顕在化しない対象もいる。よって、無差別に監視する。収集されるのは個人情報だ。

映画の中で「プライバシーを侵害することは自由を侵害することに等しい」という指摘が語られた。その通りだ。国民を監視する国家は民主主義国家とは言えない。自由は侵されてはならない。たとえ、それが国家に敵対するものだとしても。

2013年6月、米の2大情報機関、CIA(中央情報局)とNSA(国家安全保障局)に属していたエドワード・スノーデンが、国家による一般市民の通信データ収集の実態を根拠となる内部資料とともに暴露した上、自ら実名で名乗り出た。

その一部始終をリアルタイムで記録した「時代の生の証言」が本作だ。スノーデンからの接触、香港で密かに行われた独占インタビュー、スクープ記事の公表と反響、そしてスノーデンの脱出までの真相を観客は目撃することになる。

米政府はテロ対策として、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなど世界のIT企業のサーバーに直接アクセス。米最大の通信会社AT&Tからも個人のデータを収集していたという事実は衝撃的だ。もちろん、日本の個人情報も違法に流出している可能性もある。流出していることを前提に考えたほうがいい。

国家は個人情報保護法を制定し、個人情報保護を名目に逆に個人が他者や国家の情報にアクセスすることを困難にすることに成功した。そうした状況を作りながら、国民の個人情報を組織的に収集している実態は驚くべきことだ。

ジャーナリストは国家権力の監視役。監督のローラ・ポイトラス氏はイラク戦争についてのドキュメンタリー映画で高い評価を得る一方、米当局から監視や妨害を受けてきたジャーナリスト。2013年初め、「シチズンフォー」と名乗る人物から暗号化されたメールを受け取るようになる。

ローラはその人物に会うため、旧知のジャーナリスト、英紙ザ・ガーディアンのコラムニスト、グレン・グリーンウォルド氏とともに香港に飛ぶ。そこに待っていたのはスノーデン氏だった。

最近のパナマ文書による告発といい、ジャーナリストの仕事の重要性を改めて考えさせる映画だった。

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