国立環境研シンポジウム

 

パネル展示

パネル展示

 

国立研究開発法人「国立環境研究所」(茨城県つくば市)の公開シンポジウム2016に参加した。テーマは「守るべき未来と『環境』の今」~地球・生物・循環・安全・社会の半歩先を語ろう~。

6月17日には京都で開催され、24日は東京メルパルクホール(港区芝公園2)で開かれた。住明正理事長の開会あいさつによれば、「環境研は現場研究の中核的研究機関」らしいが、環境関連では「総合地球環境学 研究所(地球研)が京都市にある。環境研にも地球環境研究センターが置かれている。

この日の公開シンポでは6つの研究成果が報告された。地球環境センターの三枝信子氏による講演は「地球をめぐる温室効果ガス」-どこでどれだけ減らせるか?-だった。

三枝氏の結論は「『ここでこれだけ減らせます』という答えは今はまだありません」というものだった。パリ協定で決まった削減策を的確に実行していく中で答えを見つけていくしかないということだ。

パリ協定では2020年以降の気候変動対策の枠組みが決まった。途上国を含む全国連加盟国が参加し、産業革命前からの気温上昇を2度より低く抑える(努力目標は1.5度未満)目標が設定された。

これまでの研究によると、「2度未満に抑えることは現状のCO2排出削減の取り組みに比べて、極めて強い排出削減を行っていく必要がある。今世紀末には排出量を実質ゼロにまで持って行く必要がある」という。

■日本は2030年度までに13年対比で26%減らす。50年には80%減らす、今世紀後半にはゼロにまで持って行く(国連に提出した約束草案)

■家庭やオフィスの場合、30年までに40%減らさなければならない。

これらの目標を達成するためには「今ある技術の延長や今あるプランでは間に合わない。さまざまな技術開発やインフラの開拓が必要だ」と強調した。その一つがCO2を分離・回収し、それを深海や地中に貯留する技術だが、人為的に排出量を減らす手法の1つにすぎない。

これだけではゼロ目標を達成するのは難しい。よって現在大気中にあるCO2を積極的に除去することが必要だ。バイオ燃料作物を栽培したり、大規模な植林を実施することなども行っていく必要がある。

要は信じられないほどハードルが高い。工場だけでなく、家庭やオフィスにも削減が求められる。果たしてそれが可能なのだろうか。地球が滅びる前に人類が滅びることになるのではないか。

地上や海上の温室効果ガスの濃度やその変動はこれまで先進諸国に偏在している測定局で観測が行われてきたが、地球大気の測定は7年前までは夢物語だった。しかし、日本が2009年1月に世界で初めて打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)がそれを可能にした。地表面から上空約70kmまでの大気中のCO2の総量を観測できる。

いぶきが地球大気全体の月別CO2平均濃度について、2016年1月までの暫定的な解析を行った結果、2015年12月に初めて400ppmを超え、400.2ppmを記録したことが分かった。地上観測点に基づく全球大気の月平均値では既に400ppmを超えていた。地表面だけでなく、地球の大気全体で温室効果ガスの濃度が上昇し続いていることを示している。

 

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