新素材「セルロースナノファイバー」~産業資材は裏山から~
一般社団法人「蔵前工業會」(東京工業大学同窓会)主催の「バイオマスセミナー」が東工大蔵前会館(目黒区大岡山2)で行われた。東工大は行ったことがなかったので興味もあった。
東急目黒線大岡山駅を降りると、目の前がキャンパスだった。その近くにスマートな会館もあった。駅周辺とキャンパスが渾然一体になっていた。街とキャンパスが融合しているケースはあるが、駅と溶け合っている大学というのは初めてだった。
この日のテーマは新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)。CNFは、樹木や竹などに含まれる植物繊維をナノレベルまで細かく解きほぐした超極細繊維。CNF材料は、炭素繊維のように軽くて強いのみならず、透明材料にもなり、多方面での高機能製品の開発や実用化が進められている。
CNFは、樹木などの植物由来なので環境に優しく、国産資源が利用でき、再生可能でもある。次世代の新世代として各方面から注目されている。
CNF研究の第一人者が京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授(生物機能材料分野)。今春、CNFについて取材した際、矢野教授の研究成果も紹介した。
そのお礼を言うつもりもあってセミナーに出席した。CNFの研究は現在、非常に盛り上がっているが、心配なのはその勢いがいつまで続くか。矢野教授に講演後そのことを尋ねると、「あと2年待って欲しい。必ず成果を出す。そうしないとせっかく盛り上がっているのに、CNFが社会から忘れられてしまう。それが怖い」と答えた。スピード感を求められているのは研究の世界も同じだ。
植物繊維(パルプ)を作るところまでを既に事業化しているのが製紙会社だ。京大などと連携して実用化に取り組んでいる。中でも日本製紙は先行しており、いち早くグループ会社の日本製紙クレシアが大人用紙おむつを製品化した。