強権化するトルコ・エルドアン政権

 

会見するメリチ・トルコ大使

会見するメリチ・トルコ大使

 

ゲスト:アフメト・ビュレント・メリチ駐日トルコ大使
テーマ:クーデター未遂事件
2016年7月20日@日本記者クラブ

 

どこの国にも国内事情があるのだろうが、15日夜に発生したトルコ軍の一部によるクーデター未遂事件と、その後の政権側の強権発動は日本人の感覚からみれば、とても理解できないことだらけだ。

エルドアン大統領は20日夜、クーデター未遂事件を受けて3カ月間の非常事態を宣言。反政権勢力の大規模な排除に乗り出した。エルドアン大統領の政敵で、米国に住むイスラム教指導者ギュレン氏がクーデター未遂事件に関与したと断定し、「テロ組織に関係する者を全て排除する」構えだ。

クーデターを起こした軍人らを拘束するのはまだしも、国家教育省はギュレン氏を支持する2万2000人の教員らを解任、私立の教育機関で教える2万1000人の免許取り消しも決めたと報じられている。

それにしてもやり方があまりにも強権的だ。独裁者そのものだ。「表向きの理由はギュレン氏支持者の排除だが、政権の意に沿わない世俗派やリベラル派勢力にまで弾圧が及んでいる可能性が高い」(日経21日付夕刊一面)という。

ギュレン氏は1999年から米国で事実上の亡命生活を送っている。しかし、トルコ全土でエリートを養成するための私塾を展開し、国家機関の中枢に支持者を送り込んできた。傘下の有力企業も多く、支持者の数は国内で100万人以上に上ると言われる。

一方、ギュレン氏はエルドアン氏が創設した公正発展党(AKP)が2002年に政権を獲得した当時は、政権運営の人材を提供するなど協力関係にあった。捜査当局内部のギュレン系が13年に政権中枢の汚職疑惑の捜査に乗り出したことで両者の亀裂が決定的になり、エルドアン氏はギュレン氏に近い企業の接収など弾圧を強めていたとされる。

エルドアン氏はギュレン系をテロ組織と断定しているが、要は政敵だ。政敵を排除するために国家権力を利用しており、外から見れば強権発動、権力乱用としか思えない。メディア規制も強化している。

メリチ駐日トルコ大使は会見でトルコ政府の立場を説明するために開かれたが、トルコ政府側の強権姿勢ぶりが突出した印象を強く抱いた。大使はクーデター未遂事件について、「明らかにギュレン氏の企てだ。関わりの深い学校や教会が日本にもあり、日本政府に活動停止を求めている」と述べた。そこまでやるかと思った。

トルコに関しては親近感を抱いていたが、そうした印象ががらりと変わった。首相時代からエルドアン氏の強権ぶりは目立っていたが、今回の事件で決定的になった。

トルコはシリア難民対策やイスラム国(IS)対応で重要な鍵を握る国だ。英国がEU離脱決定で世界にショックを与えたばかり。フランスやドイツ、バングラシュでもテロが頻発し、今度はトルコがおかしくなった。米国では乱暴な独裁者的大統領候補がメキシコとの間に壁を築くと正式に表明した。

世界は不安定と混迷と保護主義の時代に突入しつつある。みんなが勝手に自分の立場を主張し始めた。協調も何もあったものではない。

 

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