資本・技術集約型にシフトする中国の製造業

こちらはシンポの主催者である帝京大学の郭四志経済学部教授

 

東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は3月2日、帝京大学主催の中国経済シンポジウムで、「資本・技術集約型へ転換する中国の製造業」と題して講演した。

中国の製造業はかつて、「安価で豊富な労働力」が最大の強みとされ、労働力を大量に必要とするアパレル、雑貨、おもちゃといった産業で強い国際競争力を発揮してきた。

ところが2005年を契機に、労働力不足、労賃の上昇が次第に顕著になり、2008~09年のリーマンショックでその勢いは一時的に鈍るものの、その後再び賃金が上昇に転じた。

賃金の上昇は、それを上回る労働生産性の上昇、あるいは為替レートの下落がなければ輸出は困難になるものだが、実際は中国の輸出シェアは2005年の7.3%から10年には10.5%、15年には13.9%へと上昇した。為替レートは名目04年の1ドル=8.3元から14年には6.1元。実質実効為替レートも丸山教授の計算では53%上昇した。

これは何を意味するのか。つまり、総体として中国の輸出は、労働集約型生産技術から資本・技術集約型生産技術に転換し、労働生産性の上昇が起こったと考えざるを得ない。

2005年以降、深セン・農村部の賃金は急速に上昇し、都市部の賃金とあまり変わらなくなった。その結果、一般ワーカーの賃金水準(中国3都市=北京、上海、深セン)はクアラルンプールやバンコクよりも高く、シンガポール、韓国、台湾を除いてアジアの中でも高賃金になった。

衛生陶器(便器)=1997年まではそれほどではなくて輸入が多かった。15年は輸入3611万ドル、輸出は46億ドルの貿易黒字で、世界輸出の58%を占めた。重量当たり単価は2.5ドル/kgで、第2位のメキシコ(1.7ドル)より高いものの、第3位のドイツ(6.3ドル)、第4位のイタリア(5.9ドル)に見劣りがした。ブランドとして日本ではTOTOかINAXだが、アメリカではアメリカンスタンダードやコーラーだが、中国ブランドはあまり聞かない。

中国の一番の中心地は広東省佛山市。有力なブランドはここにある。ほかには広東省潮安市、山東省 博市や河南省許昌市、長葛市など。潮安市と長葛市は中低級品が中心だ。

中国の衛生陶器の市場構造は極めて分散的で最大シェアのコーラーと言えども2%以下。第2位のTOTO。

佛山の企業はウオッシュレット(特定メーカーの言い方)。知能便器。機能は同じようなもので、人が入るとフタが自動的に開く。パイプの形を変えてリクライニングで水が流れるようにする。彼らのとって残念なことに中国の有力メーカーがウオッシュレットみたいなものを作れるというのは中国国内でもあんまり認識されていない。ほとんど認識されていない。だから日本に来て爆買いする。彼らは悔しがっている。よりグレードアップしようとすると、まだまだ努力が必要だ。

潮安市では何が起きているか。下焼した便器をベルトから降ろして。毎月何十社が潰れているのが実態だ。

ドローン=この産業の存在を知ったのは2015年。既に世界シェアの6~7割を占めている。トップメーカーはDJI(深セン)。2006年に香港科技大学の院生によって設立された。大当たりで20人出始めたが、目下、従業員数6000人に拡大。

高級なおもちゃ。中国の実力ではあるけど、これが何の役に立つのかよく分からないところ。何の役に立つのかを世界のユーザーとともに世界のユーザーとともに考えなければいけない。DJIがうまく言っているのは先進国のユーザーと対話してこれがどういう役に立つのかということを情報交換しているというオープンな姿勢があるのが良かった。

アパレル=どうしようもなく労働集約型産業で、労働力を機械によって代替させることが困難。賃金上昇によって輸出向け工場が中国から他の国に移るのは必然だ。

中国は長く「世界のアパレル縫製工場」であったことから、その技術や経験は他国に移せない。CADデータを送らなければならないが、私はできない。どうすればいいのか。消費者の需要に即応する能力を高めることで消費地に工場を残すことも考えられる。

industrrie4.0を実践する報喜鳥集団。すべてオーダーメイド。これ自体は日本にもあるが、これがすごいのはドイツのindustrie4.0で言われる「マス・カスタマイゼーション」を実践中。つまり大量生産でありながら、カスタマイズする。工場内のハンガーに1個1個ICチップが入っていて、そこに服の情報が入っている。作業者は1着ごとに違う作業を要求される。ntelligent hanger sytem。

彼らが言うにはリードタイムは7日間。日本でも同じようなことをやっている会社もあるものの、約3週間。なかなかすごいものだ。

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