「日本の電力業界はクライシス」

 

自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長

 

自然エネルギー財団は3月9日、都内で「トランプ米政権下の米国のエネルギー政策」と題してメディア懇談会を開催した。

トーマス・コーベリエル理事長は冒頭、「日本は自分たちが特別な存在であると思っている。日本における自然エネルギーは世界の他の国に負けないし、風力も太陽光も十分あるにもかかわらず、他の場所よりも高く付く。せっかく同じ質のものがあるにもかかわらず。単に1.5倍高いのではなく、何倍も高い。2倍、3倍、4倍高い」と指摘。その理由の1つは、日本の電力市場が系統など独占状態にあるためだ。新規参入が難しい。日本の規制市場は非常に複雑で、海外からみれば電力市場を再規制のプロセスで、『電力を下げる』というものではなくなっている。需要家にとって下げようという規制改革でもない。

海外の専門家は、この日本の動きについて、「昔ながらの業界を守るためとの解釈をせざるを得ない。非常に言いにくく、これが正しい解釈ではないと思いたかったが、結局、『日本は重大な事態に陥りつつある』という解釈が会議室の雰囲気だった。

一方、他の国では自然エネルギーの導入が急展開で起こっている。中国、欧州、北米、南米などでは非常に安くなっている。前例がないほど、史上最低水準になっている。太陽光と風力が新規電力としてはほとんど世界中で一番安くなっていると海外から報告があった。

コーベリエル理事長は、「これは日本にとってクライシスだ。危機状態だ。長期的に電気代および電気代に依存する産業・工業のコストが全世界より日本で高いということになれば、経済成長は日本で難しく、日本産業界の競争力も打撃を受ける」と述べた。

東芝が危機に陥っている。なぜこうなったのか。グローバルな電力市場がどのように動いて変わっているか。エネルギー供給がどう変わっているか理解が遅れたからだと指摘した。財団としてはこのことをパッションを持って言っているにもかかわらず、皆さんがなかなか理解しない。東芝のように理解が遅れている。東芝のようなことが日本全体で起こらないことを期待している。かなり緊急事態だ。急いで日本が国際的な動きにキャッチアップできるように変わらなければいけない。

本日のメディア懇談会もこうした日本の状況を米国の状況を知ることによって浮かび上がらせるためだ。

 

ロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス共同創設者

 

ロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス共同創設者・主任科学者は世界の電力システムがどれだけ早く変わっているかについて説明したいと述べた。エネルギーを節約するということ。米国で1975年、政府・産業界がGDP1ドル分を生み出すのに必要なエネルギーは節減ができないと言った。その1年後、1年間で72%はエネルギー原単位は下がると異端的な発言をした。40年で55%エネルギー原単位は下がった。

一方で、2010年までにできたイノベーションだけでもさらに効率は3倍高めることができた。私の言った2倍の効率化ができる。しかも実コストは3分の1で節減できる。それから7年経過した2017年でも控えめだ。車両、建物、工場を全体として最適化すると大型の節減ができる。しかも、コストも小さくできる。収穫逓減どころか、収穫逓増。これを「統合的デザイン」と呼んでいる。

私どもがエンパイア・ステート・ビルを徹底的な改修工事(レトロフィット)を実施し、エネルギーコストを38%(年間440万ドル=約3億4000万円)落とすことができた。3年でレトロフィットの投資を回収できた。その3年後、レトロフィットをデンバーの官庁のビルで行った。建ててから半世紀だった古いビルだったが、その当時にベストの新しい米国のオフィスよりも効率が良くなった。

しかし、当時の米国の新オフィスの効率はわれわれの半分だった。われわれのオフィスは創エネをした。暖炉もないしボイラーもないし冷房もないが、創エネをした。こうしたビルは日本のビルよりも効率が高い。国際比較をすると、日本のビルはもはやあまり効率的ではない。ここでも大きな改善の余地がある。これを行うための技術は10年以上前に実用化されている。

何が改善されたのか。技術そのものではなく、改善されたのはデザインだ。組み合わせの仕方、選び方、それをどう使うか。それが変わった。テクノロジーもデザインも変わっているので、効率化はどんどん加速している。これまで照明も効率化されてきた。

例えば、LEDが10年ごとに効率が30倍になる、明るさは20倍になって、値段は10分の1になっている。これまでの照明が良くなったというのは過去の話であって、5年もすれば、世界電力の8分の1が不要となる。これほど早く変わっているものはあるか。

LED、太陽光でPVで光がエネルギーになる。5年間で太陽光は隕石のように衝撃を与えた。価格が下がった。太陽光の値段は化石燃料による米発電所の値段よりも安くなっている。

風力と比較すると、旧来型の石炭火力、原発も採算が合わなくなっている。であるからこそ、日本のルールは風力を実質的に禁止するような状況になっているのかしれない。このような強力な断絶を起こすような8方向からの攻撃が電力業界に向かっている。この世の終わりのパックマン8人は早く動いている。加算的に増えるのではなく、指数関数的に増える。一匹狼ではなく、群れで狩りをする、増殖をする。20年代の電力業界の収益をどんどん失わせていく。異星人のような競争環境となっていて、通常の電力会社は付いていくことができない。

2年前、在来型の発電所は「恐竜」だと言われていた。大きすぎて柔軟性がなくバックアップとしても意味がないと言われていた。これを言ったのはグリーンピースではなくて、UBS(スイス・ユニオン銀行+スイス銀行が合併)だった。

それだけ早く変わっているか。オランダの需要家は自然エネルギーを電力会社からではなくて直接、他の需要家から買うことができる。自分の電気をここに写っている人から買った。安い上、子豚が可愛いから電気を買おうと決めた。この結果、電力を供給している男性からクリスマスカードが届いた。東京電力がお客と親しくできるでしょうか。あり得ない(ブーブー)という感じだ。

米国では自然エネルギーが一番安くなっている。卸の電力価格が書かれている。太陽光はスケールアップが進んでいる。自然エネルギーが安くなるとわれわれはもっと使える。だからもっと安くなる。ドンドン安くなる事態に誰も付いていかない。

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