カネボウを買った男
ゲスト:川田達男セーレン会長兼最高経営責任者
テーマ:チェンジメーカーズに聞く⑲
2017年3月17日@日本記者クラブ
セーレンは福井市に1889年(明治22年)生まれた総合繊維業。128年目の今はグローバル展開し、利益の7割は海外で出している。1987年に川田達男氏(47歳)が社長に就任し、今も同氏が会長兼最高経営責任者(CEO)のポストにある。
セーレンの中核は染色加工。繊維業界は原糸メーカー-機織り-染色加工-裁断・縫製などすべてがプロセス加工。それが常識で、他の分野に手を出すことは伝統的になかった。そうなると、トータルな品質管理ができないほか、コスト管理も不可能だった。それを破天荒の発想で断ち切った。
帝人、旭化成、東レなどの原糸メーカーを飲み込むことは無理だったが、内製化したいという夢を持っていたので2005年にカネボウが売りに出たので買った。繊維部門は全く再起不能の状態だった。
原糸メーカーとして立ち直らせるよりも、糸を作る1つの機能として欲しいと買収を決断した。原糸メーカーの機能を持っていることと、それに伴いすべての工程を内製化していることが最大の差別化だ。世界でもこういう企業はまだない。
自由に海外に展開できることとなり、現時点で海外24拠点。利益の70%以上を海外が生み出している。繊維分野の技術基盤を中心に、デジタルプロダクションシステム「ビスコテックス」(VISual COmmunication TEChnology System)、車両資材、スポーツファンション、環境・生活資材、エレクトロニクス、メディカルと多彩な分野で活躍の場を広げている。
あくまで繊維の技術の延長線上での技術展開を行っていく。非衣料・非繊維を攻めていく。繊維だからこそ差別化できる「不易流行」が社則だ
工業社会から情報社会に社会構造が転換しつつある。大量生産からパーソナルなものに、計画生産から自給生産、サプライヤーがイニシアチブを持っていた時代からユーザーがイニシアチブを持つ時代になってくる。今までは10色~20色だったが、ITで持って1667万色を表明することが可能となった。もう表現できないものはない。
今までは2000m作らないと経済ロットになりませんでしたが、1mから1着分でも作れる。もちろん、2000mでも安く作れる。時間の概念も1年単位から週間単位になった。水やエネルギーも半減し、在庫もバーチャル在庫。ホテルのような環境で仕事ができる。
パーソナルオーダーシステム。等身大のCADに47万着のバーチャル衣料を自由自在に着せ替えできる。47万着の中から1着を選び作る。CAD/CAM(computer aided design/computer aided manufacturing)。200台をオペレーター3人で制御している。
これまでは大衆に物を売っていたが、これからは固衆に販売できるようになった。21世紀型産業がコスト的な東南アジアに負けた。これからは先進国方の物づくりをもう一回日本に取り戻そうと経産省の支援ももらっている。
「make your brand」(人の持っていない私だけのブランドを提供しよう)。基本的には47万の中からあなただけのブランドを選ぶ。
セグメント別売上高(2015年度合計は1072億円)の構成では車両資材(カーインテリア素材、エアバッグ、加飾パーツなど)が57.0%、ハイファッション24.7%、エレクトロニクス5.0%、環境・生活資材6.5%、メディカル5.9%、その他0.9%。