医療機器開発を主導する「バイオデザイン」プログラム

 

シリコンバレーは、アイデアを商業化していくのが非常に上手(専門セミナーから)

 

第8回医療機器開発・製造展(MEDIX)専門セミナー「米国に学ぶ!医療機器イノベーションをおこす仕組みとは?」~日本発の医療機器開発の実現に向けて~を受講した。

講師は池野文昭米スタンフォード大学医学部主任研究員。注射器、体温計、人工臓器、カテーテル、MRI、生体情報モニターなどあらゆる医療機器の開発・製造に携わっているメーカーが参加した。

バイオデザインと聞いてもピンと来なかったが、要はスタンフォード大学のポール・ヨック博士らが2001年に開発した医療機器イノベーションをけん引する人材育成プログラム。

開発の初期段階から事業化の視点も検証しながら、医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発し、イノベーションを実現するアプローチを特徴とするプログラム。医学・工学・ビジネスの3分野を連携させた医療機器開発のための教育プログラムだ。

フェローシップと呼ばれる約1年間のコースでは、医療機器開発のリーダーを育成するために、臨床現場のニーズを出発点として、課題解決型のイノベーションを欠かせないデザイン思考やスキルを実践的習得する。

世界各国から応募があり、18倍を超える高い競争率の中、年間で8名が選抜される。14年間で40社の起業を実現し、400件以上の特許出願がなされ、50万人を超える患者が本プログラムで創出されたデバイスによる恩恵を受けている。

大阪大学、東京大学、東北大学は2015年6月29日、米スタンフォード大学とバイオデザインプログラムに関する提携契約に調印した。医療機器産業とも連携しながら日本の医療機器イノベーションをけん引する人材育成プログラムに「ジャパン・バイオデザインプログラム」を15年10月より開始する。

発表によると、世界の医療機器市場は現在の3300億ドルから2018年には4500億ドルにまで大きく成長する見込み(Espicom社データ)。一方、日本発の医療機器のシェアは米国に大きく引き離されており、貿易赤字も8000億円に上る。

「日本は、診断機器は輸出優位だが、治療機器(高額)は多くが輸入であり、植え込み型治療機器の多くは米国からの輸入に頼っている。つまり、病気治療の根幹は、米国に牛耳られていると言っても過言ではない」と池野主任研究員は指摘する。

これまでも医工連携や産学連携によるさまざまなアプローチが行われてきたが、現状では市場のニーズをうまく捉えられず、事業化に至らない、すなわち死の谷を越えることのできないケースが依然多く存在するのが実態だ。

このような背景から、わが国でも医療現場におけるニーズを基にした医療機器の開発、さらにはニーズの事業化までは一気通貫でけん引できる人材の育成が必要であるという結論にいたり、さまざまなプログラムを検討した結果、「スタンフォードバイオデザインプログラム」にたどり着いた。

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