「念ずれば叶う」原メソッド

 

原晋青山学院大学陸上競走部監督

 

ゲスト:原晋(はら・すすむ)青山学院大学陸上競走部監督
テーマ:箱根駅伝4連覇達成
2018年2月5日@日本記者クラブ

正月恒例の箱根駅伝で4連覇を達成した青山学院大学の原晋監督(50)が会見した。そこで話したのは成功談よりも、関東の大学に限定されている箱根駅伝の全国化や実業団間の選手移動の自由化など日本陸上界の改革プランについてだった。

・無事に終わったことを関東学連を代表して御礼を申し上げたい。全国津々浦々の指導者に原を信じて、大学を信じて送っていただいた生徒さん、指導者、親御さんたちにも御礼申し上げる。

・94回箱根駅伝。何が勝因なのか。これは3年だけの話ではないと思っている。指導14年目を終えた。15年目を迎える。1年1年の卒業生たちの熱き思いを積み重ねて今を作り上げた。

・12月10日の14人のチームエントリーに先立ち、9日に全体ミーティングを行う。チーム内で16人にメンバー発表を行う。レースの展望を学生たちの前で伝えた。その時点で勝利は間違いないなと言えるようだった。3連勝したときとほぼほぼ変わらないチーム状況で、ほぼほぼ同じようなレース展開ができるのではないかな。3区から独走、後半は楽勝ペース。シミュレーションをした。そういう状態だった。

・神奈川大学や東海大学チームも強い。後半勝負を少しは考えていた。吉村キャプテンから3日前に本人が足が痛いと申し出があった。当初アンカーの起用を考えていたが、変更した。これが青学の強さかな。自分自身の状態をウソ偽りなく伝えていく。それがチームを思い、責任感につながった。箱根駅伝はごまかしが効かない。

・MVPが誰かと言えば、1区を走った鈴木。出雲で負けてどうなるかなと思った。東洋大学が最初に行ったが、ターゲットとしていたのは神奈川大学、東海大学だった。その2校より前でタスキを渡した。良い流れを作った。

・14年目が終わるが、14年間を整理すると、3期に分けられる。1~5年の予選会突破期。6~10年目のシード権維持期。11年目以降の連勝期。どこが一番しんどかったかなと言うと、最初の5年間かな。非常に辛い思いをした。なかなか部がまとまらない。原をなかなか信じてもらえない。競技実績ない中で、選手に信じてもらえなかったが、母校の世羅高校、大学系列の中京高校、キリスト教系列の九州学院の先生方に大変お世話になった。先生方が私を信じ、大学を信じ、優秀な人材を送っていただいた。これが今日の青学の成果につながっている。

・どこが一番嬉しかった瞬間かなというと、やはり33年ぶりに出た箱根駅伝の出場権確保したときの胴上げ。今でも嬉しい。

・連勝期に入った。原メソッドがある程度確立した。例えば夏合宿の1期、2期、3期合宿で3年間ほぼほぼ同じことをやっている。7割以上の選手が箱根駅伝16名にリメイクされるデータが出ている。8月の全体合宿に入る前に数値化して説明する。来年以降もこのメソッドに則って5連覇、6連覇できるかなと思う。

・すべての大学に追い付ける考えは毛頭ない。それぞれの大学のメソッドがある。自信を持って取り組むことで大学陸上界を盛り上げていけば良い。原が勝ったから原メソッドを真似る必要はない。真似することはマイナスだ。それぞれの立場で、それぞれの大学の特徴を活かしながら、しのぎを削って陸上界を盛り上げていく。こういう構造にあるべき。

・喜びは非常に陸上ファンが増えたかな。女性を含め若いファンが多い。相模原市の隣接キャンパス主催パレードに3万人が駆け付けた。若いファンが多かった。幅広い。パイの奪い合いではなく、パイを拡大する。当初はテレビ出演することをタブーとされたが、「ちゃらちゃらするな」「なんでテレビなんかに出ているのか」などと言われたが、「出ることは決して悪くはない」「陸上界の発展のために広報活動をしているとの信念を持っているとしてやり続けた結果、多くのファンを増やしたのかな」「イコール競技人口を増やすきっかけにもなった」

・青学メソッドの確立の中で高校生たちが青学の門を叩いて約9割以上が自己ベストを更新してくれている。チーム力だけでなく、個々の競技力の向上にもつなげている。手前味噌だが、志願者が今年も対前年比で1200人増えている。まだ増えると思う。2004年から開始し、当初3万7000人くらいだった。14年の歳月をかけて今6万人を超えている。2万3000人くらいここ10年で青学志願者が増えている。陸上だけでとは毛頭言うつもりはないが、それだけの貢献はさせていただいている。

・高校生が大学に入って伸びている。学習面でも青学に入れば、学習メソッドがしっかりある。伸びるんだということを大学生中心に教育レベルを上げようともしている。

・悲しみは国立競技場問題。専用競技場になるとの発表があった。残念な結果になった。冷静に考えれば、当たり前のこと。一杯にしたことないはずだ。陸上を世に広げていく。普及させることを怠った。今日こういう結果を生んだ。反省する必要がある。一杯にする発想で取り組んでいく必要がある。

・箱根駅伝の全国化がなかなか議論されない。報道ベースではある。「そうだね」という発想に変わるべき。旧態依然の組織では発展はない。地方組織の大学組織はお金がもうからない、忙しいと言って無理矢理会長あるいは役員をお願いして引き受けてもらっている。関東学連の所属はお金もある程度もうかるし、ブランド力もある。しかし、それが旧態依然の組織が変わっていないのが問題だ。これだけ全国ブランド化されて視聴率があれだけのものになり、純益を生み出すような大会になっている。組織そのものが順応できていない。どうあるべきかという議論をもっとしていく必要がある。陸上界の大きな発展にはならない。好きとか嫌いだとか、派閥だとの議論ではなしに。陸上界、社会全体として議論を展開していきたい。

・実業団チームの問題点。高校、大学とレベルが上がってきている。しかし、東京五輪に向けて実業団チームがもっと一枚岩になって取り組まないといけない状態だと思う。若手がマラソン取り組んでいる、チームジャパンとしてもっと取り組むべきだ。実業団連盟の移籍が部長のハンコがないと実際できない仕組みになっている。自由に移籍出来る形をとらないと、国内の実業団駅伝に枠をくくって世界を見る枠組みを持たないと世界とは戦えない。指導者も危機感をもって、会社も危機感をもって選手と向き合って強化をしていかないと「俺の言うことをきかないとハンコを押さないよ」では問題がある。

・中距離種目が受け皿として卒業後に競技を続ける環境にない。駅伝があるから長距離は割と強化できる。方策の1つとしてゼッケンが1社だけだが、これを背中とかエリなどスポンサーをとれるように規制改革を行うべき。トラック競技の公認競技場は幅跳びなどすべてが整わないと公認されないが、国内認定競技場では規制を緩和すべき。長距離専用、中距離専用の公認競技場をつくるのが望ましい。

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