『大友二階崩れ』

 

受賞あいさつをする赤神諒氏

 

辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の選考委員3人とともに

 

第9回日経小説大賞の授賞式・座談会が2月21日、東京・大手町の日経ホールで開かれた。第1部は贈賞式、第2部は辻原登、高樹のぶ子、伊集院静3氏と受賞者の赤神氏を交えての座談会が開かれた。

著者の赤神諒(あかがみ・りょう)氏は1972年京都市生まれ、同志社大学文学部卒。現在上智大学教授(環境法)、弁護士。環境法では「5本の指に入る」と自分で話す自信家で、実績もその通り。大学教授は「3日やったらやめられないのは事実です」とのたまうほど。

「関西人であることは笑いを取ることがDNA」と自分に言い聞かせ、あいさつしたゼミ生からも「いつも笑いが絶えないゼミ」と賞賛されている人物。

こんな彼が小説に挑んだ。今回の受賞作『大友二階崩れ』のほか、苦節8年。「質より量」を大切に、大友テーマだけでも6本の在庫が既にあるという。他のテーマも入れると、20冊程度は書いており、在庫もたっぷり。出版する意向のある方はぜひアプローチしてほしいと売り込んだ。風水アドバーザーやパワーストーンセラピストなどの資格もとって文字通り資格マニア。

「1つのことに優れた人は何にでも優秀だ」を地でいったようで、最初から最後まで自己PRに終始し、司会者をして「これだけ自己PRの熱心な人は初めて」と驚いた。

辻原、伊集院両氏が強く押し、それに高樹氏が賛同した。「人物」はともかく、作品は問題ない。「ストーリーの運びがプロはだし。受賞は当たり前。大友氏という実にいい鉱脈を見つけた。自分の宝庫をつくった」(辻原氏)ようだ。

 

受賞作の『大友二階崩れ』

 

天文19年(1550年)、九州・豊後(現在の大分県)の戦国大名・大友氏に起こった政変「二階崩れの変」を、時の当主・大友義鑑の腹心、吉弘兄弟を通して描いた本格歴史小説。

大友家20代当主・義鑑が愛妾の子への世継ぎのため、21歳の長子・義鎮(後の大友宗麟)を廃嫡せんとし、重臣たちが義鑑派と義鎮派に分裂、熾烈なお家騒動へと発展する。

家中での精力争いに明け暮れる重臣の中で、一途に大友家への「義」を貫いた吉弘鑑理と、その弟で数奇な運命で出会った姫への「愛」に生きた鑑広を主人公に、激しく移りゆく戦国の世の、生身の人間ドラマが繰り広げられる。

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