グラミン日本が始動

 

グラミン日本理事長の菅正広氏

 

一般社団法人のグラミン日本(東京都中央区)が9月13日、東京に設立された。理事長には元大蔵省(現財務省)大臣官房参事官やアフリカ開発銀行日本政府代表理事、世界銀行日本政府代表理事などだった菅正広明治学院大学教授が就任した。

グラミン日本は日本の貧困層・生活困窮者に低利・無担保で少額融資を行い、起業や就労によって貧困から脱却するのを助けるマイクロファイナンス機関。

2006年、バングラデシュのグラミン銀行創設者ムハマド・ユヌス博士が同銀行とともにノーベル平和賞を受賞し、マイクロファイナンスが欧米先進国を含め世界中に普及・拡大。グラミン銀行の日本版で、日本にも必要されていると判断した。

グラミン日本はユヌス・ソーシャルビジネスとして設立。したがって、ユヌス・ソーシャルビジネス7原則に基づいて運営される。

1.利益の最大化ではなく、社会問題の解決こそが目的であること。

2.財務的には持続可能であること。

3.投資家は投資額を回収するが、それ以上の配当は分配されないこと。

4.投資額以上の利益は、ソーシャルビジネスの拡大や改善のために使うこと。

5.環境へ配慮すること。

6.スタッフは標準以上の労働条件・給料を得ること。

7.楽しみながら仕事をすること。

 

グラミン日本のビジネスモデルは設立当初は貸金業者として登録・運営し、10年後に預金取扱金融機関への移行を視野に入れている。グラミンアメリカを参考に必要な資本として7億円をめどに寄付、基金、賛助会員会費、クラウドファンディング、公益信託方式などで資金を調達。5年後に単年ベースでの収支黒字化を目指す。

融資名称はグラミン・ローンで、融資対象は日本の貧困ライン以下の生活困窮者(約2000万人)で、働く意欲があり、生活をステップアップしたい人。互助グループ(5人1組)を作ることが条件となっている。

最初の融資額は最高20万円からスタート。2回目以降は返済状況を見ながら増額も可能。融資期間は6カ月または1年。無担保で連帯責任。

融資形態は互助グループに対するグループ融資。毎週1回のセンターミーティングや事前の金融トレーニングなどに参加することが必須。グループのメンバーは原則として支店から1時間圏内に居住していることが条件となっている。

金利は6%(元利均等返済)。融資資金は所得を創出する。費消される資金にはしない。返済は毎週。据置期間なし。

日本は国民の6人に1人、約2000万人が貧困ライン(約122万円)で生活している。1人親世帯の過半数が貧困で、貧困格差が広がっている。このような国はOECD35カ国の中では日本以外にない」ということが言われている。

日本人にとってはギョという感じだが、この貧困は衣食住にも困る「絶対的貧困」ではなく、社会全体の中で広がっている「相対的貧困」だ。社会全体ではそんなに深刻ではないという意識が強いが、実はそうではない。

貧困率というデータは、厚労省の国民生活基礎調査として公表されている。日本の貧困率の最新値は2015年で、相対的貧困率年15.6%と前回調査(12年)の16.1%からやや改善した。一方、17歳以下の子どもを対象とした「子ども貧困率」は13.9%と16.3%よりも大幅に改善した。それでも7人に1人の子どもは貧困に陥っている状況だ。

国際的に見ると、日本は米国(16.8%)に次いでG7中ワースト2。ひとり世帯ではOECD加盟35カ国(2010年時OECD平均は11.3%)中ワーストワンだ。

貧困率は、収入などから税金や社会保障費などを引いた「等可処分所得」の中央値の半分未満しかない割合を示す人の割合のこと。中央値は年間245万円(2015年)だから、年間122万円未満の可処分所得しかない世帯を相対的貧困層、その割合を貧困率と呼ぶ。

この中央値は20年前の1997年には297万円だった。これが245万円に低下した。中央値が52万円も下がった。月額にして4万3000円。日本はこの20年間は「失われた20年として経済低迷期だった。

同調査の「貯蓄」についてみると、「貯蓄のない世帯」が全体で14.9%、母子世帯に限ってみると37.6%に増える。「生活が苦しい」と答えた人は全体で56.5%、母子世帯では82.7%が生活苦を訴えた。

現代の日本で、貧困は「失職、病気、ケガ、事故、配偶者との離別・死別、介護などによってほとんどの人に起こり得る、明日は我が身の問題」だ。

日本の母子世帯の貧困率は58.7%(2009年11月調査)と世界でも突出して高い。生活保護水準の所得に届かない低所得にあえぐ現状がある。

高齢者も深刻だ。総務省発表の推計人口(9月15日時点)によると、70以上の人口は前年比100万人増の2618万人と総人口に占める割合は20.7%と初めて2割を超えた。65歳の高齢者も44万人増の3557万人で、28.1%と過去だった。就業者総数に占める高齢者の割合も12.4%と過去最高だ。

17年の高齢者の就業者数は807万人と過去最多。7割近くの4人に3人は「自分の都合のよい時間に働きたいから」と非正規の職員・従業員を占めた。

今後日本はあらゆる世代の年齢層が貧困にあえぐ時代が来ると言っても良さそう。クローズアップされている母子家庭と高齢者ばかりでなく、「日本国民総貧困化」なのかもしれない。

日本の貧困の現状は個人の問題としてではなく、社会の問題として取り組むべき時期に来ている。

グラミン日本は理念として、「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会」「貧困・生活困窮に陥った時、そこから脱却する助けがセーフティネット/ソフトインフラとしてされている社会」を掲げている。

いろいろ問題はあるだろうが、このように社会を変えていくと資本主義の性格も変わってくるはずだ。

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