『ドローン情報戦』

 

 

作品名:アメリカ特殊部隊の無人機戦略最前線『ドローン情報戦』
著者:ブレット・ヴェリコヴィッチ
クリストファー・S・スチュワート
訳者:北川蒼(きたがわそう)

 

著者のヴェリコヴィッチ氏は10年以上にわたってテロ対策と情報分析活動に従事した軍用ドローンのエクスパート。アメリカ陸軍特殊部隊(DELTA)のドローン技術者・情報分析官として、アフガニスタンやイラクなど対テロ戦争の最前線で活躍。多くの戦功をあげブロンズスター・メダルや戦闘行動バッジを授与された。またデューク大学でMBAを取得。除隊後はドローンによる東アフリカでの野生動物保護など活動の幅を広げている。

本書は世界的なドローン戦士とピュリッツァー賞ジャーーナリストによる「もっともリアルな戦場と心情」と帯にはセンセーショナルに書かれているものの、当局による様々な表現規制もあって期待通りの面白さは味わえない。

そこをうまく表現するのがプロの世界だが、ピュリッツァー賞ジャーナリストも難しかったのかもしれない。少なくても私にはそれほどリアルではなかった。訳者の力量も響いているのかもしれない。

最も生々しい現実は文字では表せないのかもしれない。「パラマウント映画化取得」とあるので映像化に期待したい。

ヴェリコヴィッチ氏によると、彼が陸軍に入隊したころ、ドローンはまだ珍しい存在だった。ドローン1機を使えるだけでも貴重な経験なので、イラク侵攻後のサダム・フセイン追討作戦中は、どの部隊も索敵用に無人機(プレデター)の使用許可を得ようと争奪戦を繰り広げたという。

同作戦から約10年後にヴェリコヴィッチ氏が陸軍を除隊するころには、自分たちのチームだけで3機のプレデターを指揮し、3機が別々の高度から異なる角度で攻撃対象を監視していた。ドローンはすべてを見張り、決して眠らない。

戦争の仕方がドローンの出現ですっかり変わったのだ。同氏より前の時代の戦争においては、航空支援とは、基本的に援護射撃と空爆を意味した。歩兵部隊は長期の野戦任務を手探りで行い、航空戦力が敵の抵抗力を弱めてくれるよう祈った。市街戦では、建物の角を曲がった先に、扉の向こうに、覗いた窓の中に何があるのか、ほとんど見当がつかないまま活動していた。

しかし、現在は、特殊部隊において任務中には常にドローンが上空にいる。それだけ有用な兵器なのだ。海外でのあらゆる作戦行動、イエメンでの海軍特殊部隊ネイビー・シールズによる急襲、シリアでの人質救出作戦、ソマリアでのテロリスト拘束作戦などでは、必ずドローンの支援があると考えていい。準備作戦段階から作戦遂行中、そして後始末にいたるまで、すべてにドローンがかかわっている。

彼の部隊はテロとの戦いの最前線にある「ボックス」で活動していた。ハイテク・スパイであり、その任務は戦争がどれほど進化したかを物語っている。

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