硬膜外ブロック注射

 

牧田総合病院蒲田分院

 

最初に脊柱管狭窄症を発症したのは2013年9月だった。左足先までの強いしびれとお尻の重い痛みが一緒だった。5分か10分も歩くと歩けなくなりストップ。少し休憩するとまた歩ける間欠性跛行が目立った。

会社近くにあった銀座医院に行った。病状を訴えると脊柱管狭窄症と診断され、MRIも撮った。けん引など理学療法によるリハビリを行ったが、痛みはそれほど強くなくなり、自然と軽快となった。

しばらくは痛みやしびれと無縁の生活が続いた。この脊柱管狭窄症が再発したと気づいたのは17年11月だった。症状も4年前とそっくり。診断を仰いでも同じだし、病院に行くのをグズグズしていたが、やはり「行くべし」と決断し、18年3月に他の病気(潰瘍性大腸炎、不整脈、糖尿病)でもかかっている東京山手メディカルセンター(新宿区百人町)に行った。同じ病院でのデータ共有の重要性を知ったからだ。同じ病院なら診療科が違ってもデータを誰でも見られる。

東京山手メディカルセンター(旧社会保険中央総合病院)を含む全国の社会保険病院や厚生年金病院、船員保険病院などは14年4月に独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が直接運営する病院グループの一員。特に肛門科が有名で、私もここで潰瘍性大腸炎の手術を受けた。

東京山手では18年3月、脊椎脊髄外科を受診。1年間で3人目となる医師はMRIの画像を見ながら、「腰が悪いのは確か。かなり悪いが、この程度で症状が出ない人もいる」と述べ、「手術をしたいかしたくないかは患者次第」と答えた。要は自分が困っていれば、手術をしてほしいと本人が言ってくるからだろう。

生活に困難を感じてくれば、手術をしてほしいと行ってくるはずだ。しかし、手術である。しかも神経をいじるのだ。恐ろしいと思い出したら足がすくむ。その見極めが付かなくて患者は迷っているはずだ。時間ばかりが経っていく。

私も迷っていたが、きょう、「いろんな医師の意見を聞いたほうがよい」とセカンドオピニンを求めて牧田総合病院蒲田分院(大田区西蒲田4)の福井康之医師の診察を受けた。同医師は国際医療福祉大学三田病院(旧東京専売病院)の元副院長・脊椎脊髄センター長、同大学塩谷病院(栃木県矢板市)院長。

医師・病院と患者をつなぐ医療検索サイト「メディカルノート」によると、福井医師は慶応大学を卒業後、米バーモント大学、San Diego Center for Spinal Disorders(サンディエゴ脊髄障害センター)などの海外留学も経験。豊富な脊椎手術経験を持つ腰痛・座骨神経痛の名医。「手術して治すのではなく、治る患者様を手術する」をモットーとし、正確な診断と分かりやすい説明で定評があり、患者の信頼も厚いという。著名な患者に石原信雄元官房副長官やみのもんた氏などがいる。

 

診察終了後につい庶民の街・蒲田のグランデュオ蒲田でコスパの極端に悪いスイーツを食べてしまった(モンブランのタルト=ラ・メゾン アンソレイユターブル蒲田店)

 

会社の元同僚の紹介で福井医師の診察を受けた。福井医師は明快だった。触診とMRI、レントゲン画像を、それを元に説明した。「腰痛ではない。加齢現象により脊椎が変形した結果、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、中を通る神経が圧迫されて痛みを生じる疾患だ」と指摘した。

1年前に東京山手で撮ったMRIと比較し、1年間で病状は進化した。症状としては末梢神経の中で最大の座骨神経(お尻から太ももの後ろ側を通り、ふくらはぎ・足先に至る神経)に沿った痛みが座骨神経痛として表れる。座骨神経痛を訴える患者の90%以上を占めるのが「椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」の2つ。症状は似ているが、狭窄症はしばらく歩くと足が痛くなって歩けなくなり、前屈みで休むと痛みが和らいで再び歩けるようになる「間欠性跛行」という症状が特徴だ。

 

『座骨神経痛』の治療法(財団法人 日本法制学会2003年7月第1刷発行)

 

私の場合は典型的な脊柱管狭窄症。一度狭くなった脊柱管が自然に広くなることはありえず、加齢による変形の進行もあり、自然治癒が期待できないため、根本的な解決には、神経を圧迫している狭窄状態を手術的に取り除く以外方法はないという。

座骨神経に座骨神経痛が出ている個所を特定できた。あとは手術の効果だ。「手術では狭窄を解除し神経を除圧することはできますが、傷ついた神経を直接治すことはできません。従って、手術の効果は手術前にどれだけ神経が傷ついていたか、その程度と術後の回復力に依存します。一般に神経の回復力は、罹病期間と年齢に反比例します(病気の期間が長く、高齢者ほど回復力は劣ります)」(座骨神経痛の治療法『お尻から脚が痛い』103ページ「手術承諾書」)。

硬膜外ブロック(仙骨裂孔硬膜外ブロック)注射を打った。脊髄を包んでいる膜を硬膜といい、硬膜の外側の空間は硬膜外腔(こうまくがいくう)という。診察室で行える神経ブロックの1つで、硬膜外腔に下(尾骨部)から上(腰椎部)へ向けて局所麻酔薬とステロイド薬液を注入。一時的に交感神経や知覚神経を抑制することにより、血行障害を改善したり、疼痛を緩和する治療法だ。

その場ですぐにやってくれた。時間もそんなにかからない。効くか効かないか個人差が大きい。私には効かなそうだが、何でもチャレンジである。

福井医師の診察は簡潔、明快だった。これだけはっきりと説明できるのは自信のある証拠だろう。「名医」と呼ばれるのもあながちウソでないかもしれないと思い始めた。

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