「やめる自由のない技能実習制度は廃止を」鳥井一平氏

 

「技能実習は廃止すべき」と主張する鳥井一平氏

 

ゲスト:鳥井一平(特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)
テーマ:日本の労働を誰が支えるのか
2019年4月26日@日本記者クラブ

 

外国人の権利保護運動を続けてきた移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)の鳥井一平理事長が外国人の受け入れ政策の変遷をたどりながら、現制度の問題点を指摘した。

・移民政策とかどうかという問題ではない。移民がいるのに移民政策がないということはない。まっとうな移民政策ではないことに問題がある。

・昨年秋の臨時国会で改正入管法が成立した。特定技能1号、2号が創設され、入管局が入管庁に昇格した。事実を正面から見ていないことに驚いた。

・外国人というのは日本独特の使い方ではないか。移住労働者と呼んだほうが正確だ。1980年以前のオールドカマーとそれ以降のニューカマー。

・日本の場合、労働ビザや就労ビザはない。就労資格を持っている労働者、オーバーステイ労働者、難民、難民申請中、留学生。

・労働保険の加入が進んできた。統計値が実数値に近づいてきたなという印象を持っている。

・オーバーステイ(非正規滞在)は1993年がピークだった。29万8000人(統計値)。実数は30万人を超えていた。経済活動に貢献したし、社会活動にも寄与した。今年1月のデータで7万4000人いる。一定の業種(下支えしている産業)で働いている。

・日系ビザが1990年に創設された。創設されてどんと上がったが、2007年をピーク(37万6000人)をピークにリーマンショックで下がった。その後は上がっていない。

・外国人春闘が1993年3月8日にスタートする。「生活と権利のための外国人労働者」の一日行動として登場した。ほとんどがオーバーステイの労働者。警察官が旅券を見てオーバーステイだと連れて行ったら、社長が「工場のラインが止まっちゃうよ」と言って連れ戻した。これを当たり前のようにやっていた。東武沿線、16号沿線にはたくさん働いていた。外国人労働者がたくさん乗り降りしていたが、彼らはいないことになっている。誰も見ないことにしている。それが実態だった。今年も行われている。省庁との交渉を実施している。

・私はもともと全統一労働組合(東京都台東区上野)のオルグ(組合や政党の組織拡充のため本部から派遣されて労働者・大衆の中で宣伝・勧誘活動を行うこと。またその人。オルガナイザー=デジタル大辞泉)の仕事をしている。

・20名からスタートし、今や40カ国、3000人を超えるネットワーク活動になっている。私にガソリンかけて火をつけた社長がいた。死にかけた。だから自分を「炎のオルグ」と呼んでいる。

・日本の産業を下支えする移住労働者の100の相談には100の物語がある。場当たり的な受け入れ政策の中でこういう問題が起きている。

・受け入れ政策の中心は外国人技能実習制度。外国人研修制度を作った。留学に枝分かれで研修を作った。外国人技能実習制度は省令制度を改正し、「特定活動」として1993年に創設された。研修は増えていない。増えたのは国際研修協力機構(JITCO)による技能実習。実にずるいやり方だ。

・零細企業も移転すべき技術を持っている。ただ零細企業には技術力はあっても経済力はない。生活費を与えて技術を教えることはできない。最低賃金に張り付いている。

・米国務省人身売買年次報告書2007年度版で同制度が人身売買、奴隷労働ぽいと指摘された。18年度版まで毎年続けている。国連自由権規約委員会が08年10月に勧告し、18年も国連人種差別撤廃委員会から指摘を受けた。

・安く労働者を使うブローカーとしての新たなビジネスが成立している。技能実習制度をめぐってピンハネして非常に大きなお金が労働者の賃金ということで動いている。

・構造的な問題だ。時給300円。強制帰国。なぜ強制帰国が怖いのか。労働者は保証金(50万~100万円)を送り出し機関に借金をして預けて日本に来ている。契約で日本で何があったら没収する明記されている。途中で帰らされると借金を抱えることになる。だから途中帰国はものすごく怖い。

・今はデポジットを設けることは禁止されているが、名目を変えて今も続いている。

・なぜこういうことが。制度を理解しない一部の不心得者のせいだとずっと言われてきたが、それだったらとっくに解決しているはず。私は「邪悪な欲望に変貌する社長」がいるからだ。

・技能実習制度を受け入れる社長たちはヤクザや暴力団はほとんど少ない。人の良さそうな普通の人たちだ。これが変わってしまう。冗談で「帰らすよ」というと実習生がビクッとする。これをみていて「これはいけるな」。労働契約上でいう労使対等原則はこの制度下では通用しない。気に入らなければやめることができるのか。やめることができない。労働契約で最も大切なことは最後に許されていることは「こんな会社やめてやる」。やめることができるということだ。この技能実習制度はやめることができない。何でもできる奴隷時代に戻ってしまう。労働者は従うしかない。

・日本にもすばらしい労働契約法があるが、これが有効にならない。外泊禁止、恋愛不可など。中絶か帰国か。こういう契約があっち側で生きている。全部が送り出し機関が独自に考えたものではない。日本の管理団体など受け入れ側がアイデアを出している。人を変えてしまう恐ろしい制度になっている。

・構造そのものが奴隷労働構造になっている。その構造をやめる自由がない。

・そこへずっと出てきたのが2020年五輪だ。17年11月に技能実習法が施行された。職種と受け入れ枠が拡大された。最初は外国人労働者問題としての論議だった。外務省の外国人課が担当部署だが、人数も少なく非常に奇異だ。横断的な取り組みが必要だ。

・安倍政権になって「外国人労働者」が禁句になった。「外国人材」に置き換わった。

・日本はこれまでオーバーステイ容認政策や日系ビザの創設で対応してきたが、2010年に技能実習制度を設けたことで現場が荒廃してしまった。技能実習生に技能を教える人がいない。これが現場の実態だ。担い手がいなくなってしまった。対応できない。

・受け入れと共生。労働と生活は1人の労働者の中で分かれるのか。切り離せない空間ではないか。法務省は説明をしているが、資料の中に共生の部分がない。受け入れた労働者が家に帰ってからどういう生活をするのか。相談窓口を作るとしか言っていない。もっと細かなことが必要だ。労働者は人間なので、それにまつわるいろんなことが必要になる。リスクに関する説明がほとんどない。

・移民がいないと成り立たない社会。これから受け入れるんではない。既にいるんです。今起きている問題を見るんです。課題も移民が教えてくれる。耳を傾ければどういう政策が必要か見えてくる。

・現場は即戦力ではない。担い手を求めている。来たら育てていく。東京も出稼ぎ労働者の街だ。出稼ぎ労働者で作られた街だ。世界中全部そうだ。4月から間違いなく増えてくる。

・労使対等原則にされた担保され、「違い」を尊重しあう多民族・多文化共生社会に進んでいきたい。

・技能実習制度は廃止すべきだ。廃止して困る人はだれもいない。困るのは金儲けの機会がなくなったブローカーが困るだけ。ウソを言うな。ずるいことはだめだ。困っているから助けてくれと言ってくれ。労働者が足りないんです。

・登録支援機関(ブローカー)に頼るしかない。あるいは売り込んでくる。ブローカーが生まれてくると余分な費用がかかる。受け入れ側も元をとらないといけないし、移動してくる労働者側も余分な費用がかかるのでこれを取り戻すためには働かないといけないという関係ができてしまう。

・国が送り出して、国が受け入れて、民間の組織は介入させない仕組みが必要だ。これでブローカーを排除する。ハローワークを活用するのが一番だ。労働市場のマッチングは法務省・入管庁にはできないことだ。蓄積もない。できないことをできるかのごとく言ってしまう。労働市場のマッチングは厚労省。ハローワークの活用を考えたほうがよい。

・特定機関の登録支援機関には個人も含めている。団体だけではない。管理団体が横滑り、あるいは派遣会社が参入している。派遣会社が制度の中で管理団体に参加しているので派遣会社としてはできないが、派遣会社内に共同組合を作って派遣会社を作っている。

・やくざや暴力団よりももっとひどい。きれいというか偽装というか、本当に知恵が回る。欲もこれだけ考えるか。もうかるところをめざとく見つける。そういう人たちがいるんですね。合法ブローカーであることがタチが悪い。ここが問題を深く潜行して見にくくしている。

・議論が起きたこと自体は良かった。日本社会に外国人労働者を受け入れなくてはならない実情がある。ポジティブな面もある。

・レタス生産高日本一で有名な長野県南佐久郡川上村。レタス御殿が建っている。ブローカーも悪いけど、現場(農家)もひどいのではないか。何から手を付けたらいいのか。外国人労働者に声を上げる力を付けることに尽きる。彼らが自由に物を言うことができない。物を言えるように制度を変えていく必要がある。やめる自由がない。移動できる自由がない。

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