「米のベネズエラ政権転覆策は失敗」-駐日大使
セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで10日会見し、米国がグアイド国会議長を押し立てて強引に行ってきたマドゥロ政権転覆策が失敗に終わったとの見方を示した。
イシカワ大使は日系2世。2005年に32歳の若さで駐日大使として着任。14年間にわたって大使を務めている。
・日本では改元行事のただ中にベネズエラではクーデタのニュースが入ってきた。それを引き起こしたのは民主主義を標榜し、大統領選挙を求めていたグアイド国会議長だった。
・しかし、24時間以内に事態は収束した。その背景が分かってきた。2つの疑問に答えたい。4月30日に一体何があったのか。それとベネズエラの政治情勢に及ぼす影響について話したい。
・バランスのとれた報道があった。一方で、空軍基地の中でクーデタを呼びかけたと報じる新聞もあった。以下タイムラインに従って事実を述べる。
・4月29日18時に、ベネズエラ情報局にいた兵士たち100人ほどに「刑務所で暴動発生、それを鎮圧するから出動用意との上官から指示」
・4月30日の午前3時にバスがきて乗せられて空港近くの高速道路で下ろされた。
・午前5時前、兵士たちは初めて「君たちはベネズエラの歴史をつくるのだ」とクーデタであることを知らされる。
・その直後から兵士たちは騙されたことを知り、離脱し始める。
・5時すぎ、グアイド氏はビデオを通して「自由のための作戦だ」と演説。しかし、このとき、その背後には20名ほどの首謀者グループしかいなかった。
・6時18分 ベネズエラ政府のツイッターでクーデタの企てを防ぎ始めたと発表。国民に冷静に対応するよう促す。
・7時すぎに一部市民500人ほどが基地に入ろうとして混乱するが、事態は沈静化に向かう。
・首謀者の一人ロペス氏(グアイド氏と同じ党に所属する議員)はチリ大使館に逃亡。グアイド氏は行方をくらまし拘束を逃れたものの、司法の裁きを受けることになるのは時間の問題だ。
・兵士たちが下ろされたのはアルタミラ・インターチェンジ。カラカスに向かう重要な交通の要所。つまり兵士らは空港基地の外にいた。
・別のビデオによると、ロペス氏は落ち着かない様子で、兵士の規律もバラバラだった。1人の兵士の証言によると、「騙されて現地に連れて行かれた」ことが分かる。
・なぜ今回のクーデタ未遂事件が世界を駆け巡る大事件になったのか。市民の参加も少なく重要性に欠けるのになぜ大事件になったのか。ベネズエラの政治的方向性を見せる事件だったから。
・グアイド氏は遂に実像を見せた。同氏はこれまで表面的にしろ民主主義を標榜し選挙を求めてきたが、実際武器をとり、暴力に訴え権力を手に入れる用意があることを暴露した。嘘やだましを軍隊に対して働くことまですることも分かった。
・アメリカとともにグアイド氏を後押ししてきた南米諸国に変化が生じてきている。米国の支持するリマグループ会議はベネズエラの政権交代を求めているが、同グループでさえ、5月3日に開かれた会議で姿勢を少し変化させた。いくつかの国はグアイド氏から離れる行為を示した。
・米国の介入主義は続いている。ポンぺオ米国務長官は4月30日、「本日、グアイド暫定大統領が自由作戦を発表した。米政府はベネズエラの人々が自由と民主主義を求めることを全力で支持する」と述べた。
・グアイド氏はこれまでたびたびデモを呼び掛けてきたが、参加者は減少している。
・ベネズエラは現在非常に複雑で難しい状況にある。国民の多くは不満を抱え不便な状況の中で生きており、なかにはデモに出た人もいる。こうした人たちは失望している。グアイド氏が暴力を使ってでも権力を得たいという真実の目的を知って失望している。
・米国の支持を受けたグアイド氏の真の目的が明らかになった。民主主義を抱えているにもかかわらず暴力に訴えて権力を取ろうとしている。
・米国の意図に対する反感はベネズエラ国内のみならず国際社会にも広がりつつある。米経済学者ジェフリー・サックス氏は「ベネズエラに対する米国の経済制裁によって4万人が命を落としている」と述べた。