英国政治の現状は熟慮のプロセスではなく「混乱」

 

筑波大学の近藤康史教授

 

ゲスト:近藤康史筑波大学教授
テーマ:BREXIT迷走の背景-英議会政治の変質
2019年6月12日@日本記者クラブ

筑波大学人文社会系の近藤康史教授がイギリス議会政治の変調とその要因について日本記者クラブで話した。

「ブレグジットをめぐる英国政治混乱は、2大政党から多党化への流れが背景にあると指摘した。ブレア労働党政権の分権改革で誕生したスコットランドなどの地域議会で地域政党が成長。加えて、欧州議会選挙は、国政選挙の小選挙区制ではなく比例代表制で実施されるためUKIPなど小政党が存在感を示すようになり、多党化が有権者に浸透していった。さらに、保守党、労働党ともEU政策について党内で意見が割れ党の結束力が低下したことも混乱に拍車をかけたと解説した」(土生修一日本記者クラブ事務局長)

・議員たちが非常に分かれている中で過半数を占める合意形成というのは難しい。メイ首相にとっても難しかったが、どの首相でも今の状況だと難しい。

・保守党と労働党をまたいで穏健、離脱勢力が存在する。政党間対立を横断している。EU残留が労働党で、EU離脱が保守党といったすっきりした対立ではなくて党派をまたいだ争点になっている。同じ党内でもまとまらない。党派をまたいでまとめようとしてもうまくいかない。

・保守党党首選は7月22日の週に決まる見通し。ボリス・ジョンソン氏ら5名が出馬を表明している。

・これまでは「延期」「延期」できたが、とにかく「離脱」をしなければならない方向で動いている。離脱をしないと保守党の支持率が下がるのは確実との危機感も議員側にはある。強硬離脱をしなければならないのかはともかく、離脱はしなければならない方向に動いている。また「延期」「延期」は避けたいのではないか。保守党の重心が動いている。

・進むとしては2つの方向だ。メイ首相は労働党との合意も視野に入れていたが、これは消えた。保守党内で離脱でまとまらなければならないし、そうでないとブレグジット党に代わられる。危機感で一体感を取り戻す。これが1つの見通しだ。まとまらなければ合意なき離脱もあり得る。

・(民主主義のねじれをどうやって解決するのは民主主義国である英国でどのような評価を得ているのか。今起こっている状況は決められない政治なのか、民主主義的な熟慮の姿なのかどうか)。

・英国の有権者のレベルでは決められない政治が批判されており、「混乱」と捉えられているとしか言いようがない。国民投票についても何の合意もなく、「離脱」の結果に右往左往している姿は混乱としか呼べない。

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