「中国経済は三重苦」津上俊哉氏

 

 

ゲスト:津上俊哉(つがみ・としや)国際問題研究所客員研究員
テーマ:中国経済と米中関係の行方
2019年8月8日@日本記者クラブ

 

国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏が「中国経済と米中関係の行方」について話した。

・中国経済には異なる2つの経済が同居している。

・ITを利用したニューエコノミーは躍進。民営企業が主役。QRコードを利用した低コスト決済サービスが大きく普及。今や日本は周回遅れ。Ⅰ(デジタル、スマホ、AI、ビッグデータ)、E(EV=電気自動車)、B(ビッグサイエンス)。実地に試してみる・問題があればそこで直す。社会実装のスピードとパワーは中国の右に出る国ない。

・暗いのはオールドエコノミー。重厚長大型製造業、不動産、公共投資。主役は国有企業や地方政府。投資と借金頼み。

・街頭カメラ、顔識別システムを用いた治安システムはどこの国でもやっていること。中国は「やっているからな」とそれを国民に知らしめる。国民はそれで安心し嫌ってばかりではない。

・EVはうまくやっている。成功した。世界のEVの半分は中国で走っている。EVでは勝者に。人為的なマーケット創造。Big scienceが離陸し、中国の科学技術は端倪すべからざるところにきた。優秀論文の国別引用回数でもコンピューター科学、数学、化学などで米国を上回った。20年後には毎年中国人のノーベル賞受賞者が毎年出る。最後に日本人が受賞したのは何年前になるということになるだろう。

・「中国製造2025」(2015年発表)は各国で強い反響を呼び、IOT(米)、インダストリー4.0(独)、コネクテッド・インダストリー(日)などの構想の競争状態に。中国科学技術水準の急速な向上を見て、中国のtargeting型産業政策に対する欧米の脅威感、警戒感が急上昇。

・米国の中国に対する警戒感、脅威感は過剰評価されている。恐れすぎている。勝負はこれからだと思える部分はたくさんある。足下をみて未来を予想するからだ。GDPも抜かれる可能性があるし、科学技術でもそう。対中不安感の行き過ぎている部分がある。

・ニューエコノミー経済が好調の一方で、経済は3重苦に直面している。

・過去10年間の投資のやり過ぎた。バブル後のバランスシート調整期に入った。ツケはやはり払わざるを得ない。これは避けられない。これがだんだんはっきりしてきた。

・民営企業を取り巻く厳しい環境。企業債務が急増すると次はバブル崩壊が起こる。IMFは数年前不景気、行政の「一刀切」問題、資金調達難。極左言説の横行、根底にある「官功なりて民は万骨枯れる」構造。

・マグニチュード的にはこの2つが極めて大きく、その上に泣きっ面に蜂のように重なってきたのが米中貿易戦争。世間的にはトランプが戦争を仕掛けたので中国経済が失速したという結びつけ方だが、実態は少し違う。経済が悪化している時に「泣きっ面に蜂」が正確だ。

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