『運び屋』

 

運び屋

 

作品名:『運び屋』(原題The Mule)
監督/製作:クリント・イーストウッド
キャスト:アール・ストン(クリント・イーストウッド)
コリン・ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)
2018年アメリカ映画@飯田橋ギンレイホール

 

「退役軍人のアールは家庭も顧みずユリの栽培に情熱をかけていたが、やがて事業に失敗しすべてを失う。金もなく孤独な日々を送っていると、ある仕事を持ちかけられる・・・」

「うまい話に乗せられ巨額の報酬を得た”伝説の運び屋”の実話を、イーストウッドが約10年ぶりの主演で映画化した」(Vol211)

 

デイリリー

 

デイリリー

 

デイリリー

 

ずっと気になっているのが主人公アールが大切に栽培しているデイリリー(Day lily)という花だ。ニューヨーク・タイムズのスポーツ部門エディターのサム・ドルニックがニューヨーク・タイムズ・マガジンに書いた運び屋を務めた90歳のレオ・シャープが愛していた花だ。

ドルニックは記事(2014年6月11日初出)の中で「デイリリーは色、形、サイズにおいてバリエーションが限りなく、凝った小さな植物を生み出す」という。

また「デイリリーは率直で、美しく、セクシーなのだ」(ユリ鑑定家のシドニー・エディソン)ともいう。

「デイリリーは通常12個のつぼみがつき、それぞれが1日だけ花開く。異種交配が容易なところが魅力の一つとなっている。おしべを引き抜き、別のめしべに花粉をこすりつけるだけでグリーンのひだや黄色のドット、小さな花びら、ブルーのストライプといったあなた好みの特質を備えたユニークで新しい花が開花する」としている。

全米デイリリー・ソサエティに公式に登録されているだけでも7万5378種のデイ・リリーがあるという。レオ・シャープはデイリリー愛好家にとってのドン・キング(アメリカの大物プロボクシングプロモーター)であり、彼の名を冠したデイリリーが180近くが公式に登録され、育種家として高い評価を受けている。

 

風に飛ばされわが家の庭先に根を張った野生化している高砂ユリ(鉄砲ユリに似ているが、ラッパ状の6弁花の外側に紫褐色の筋があるのが特徴=練馬・板橋のタウン誌Kacce8散歩ウォッチング)

 

はっきり言ってディリリーのことはどうでもいい。重要なのはアールのライフスタイルだ。アールは品評会でリリーを褒められ有頂天になるが、うっかり1人娘の結婚式に出るのを忘れてしまうことだ。

栽培家として高い評価を得ていても、家族を顧みることがなかったことの象徴としてこのエピソードが組み込まれている。「仕事を優先し、他人にかまけて家族をないがしろにしてきたせいで、その後アールは一人娘や妻から見放されていく」(香取淳子公式サイト

あとは押して想像すべきだ。12年後のアールは家族から見放され、家は差し押さえられ、金も底を付いてしまった。インターネット時代にアールの仕事が追いつかなかった。

そんなときにお金になるといわれ、何を運ぶか知らされないまま、目的地までブツを届ける運び屋の仕事に手を染めた。言われるまま車を運転して思いもしない大金を手に入れる。

コカインだった。

クリント・イーストウッドは1930年5月31日生まれ、カリフォルニア州サンフランシスコ出身。89歳。この映画を撮ったのは87歳のときだった。

彼は映画評論家の町田智浩氏とのインタビューで、「アールは私だけでなく、多くの私の世代の男たちを代表している。我々の世代の男たちは、人間の評価をいかに仕事で成功したかで計りがちだ。でも、価値観は時代と共に変わっていく。いくら歳をとってもそれに追い付かなければ。人は何を学ぶのに、遅すぎることはないんだ」と述べている。

 

 

エンディング曲Toby Keith『Don’t let the old man in』

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