竹害を乗り越えて利活用が拡大する「竹イノベーション」

竹は繁殖力が強く、いったん植えると手に負えず、放置林として様々な竹害(ちくがい)も引き起こしている。一方で春のタケノコは食材としては極めて美味で和風料理には無くてはならない存在だ。

諸外国からの安価な竹材輸入の増加、タケノコ農家の後継者不足なども絡まって荒れた山が増え続けている。

手を付けられない害毒のような特製と竹製品やタケノコとしての捨てられない美味を合わせ持つ竹は何とも言えない謎の多い、不思議な食物だ。

NPO法人農都会議は8月26日、「竹素材・バイオマス活用の最新事例」~新たなバイオマス利用、エネルギー利用を考える~を開催した。

まず「土木・建築分野での竹バイオマス利活用事例」を話したのは福岡大学工学部社会デザイン工学科の佐藤研一氏。竹イノベーション研究会も主宰している。

 

福岡大学工学部の佐藤研一教授

 

佐藤研一氏がやっているのは要は土木。土木はダサいので社会デザイン工学科と名前を変えて学生を集めているのだという。道路と土質を研究している。

・竹の専門家ではないものの、「竹イノベーション研究会」を設立し、講演することも多い。

・九州は竹が多い地域。放置竹林の問題が顕在化している。特に鹿児島、大分、福岡は放置竹林が深刻化している。島津藩が中国から持ってきた竹がタケノコ消費だったり、建築分野でたくさん使われていた頃は良かったが、今は竹林も高齢化し、持っている山の人が放置してしまう。

・竹は葉っぱが上のほうしかない。いったん生え始めるとあっという間に1~2カ月で10m~20m上がるので下の樹木を全部枯らしてしまう。山がどんどん荒れていく状態だ。

・国交省に呼ばれて山に行くと、大概竹林が滑っているといつも感じている。5位までに4県入っている。西日本地区では竹が繁茂している。

・現状ではNPOとか地域団体が連携し利活用しようと炭にしたり、農業資材、畜産資材に。鹿児島県では中越パルプが紙の製造に竹を使われているほか、熊本県玉名郡南関町(なんかんちょう)には竹の一大拠点もできている。

・竹はイネ科の植物。日本には淡竹(はちく)、真竹(まだけ)、孟宗竹(もうそうちく)がある。顕微鏡でみると、繊維状で、非常にポーラス(porous、多孔質な、穴の多い)な状態。戦時中は鉄筋がなかったのでコンクリート構造物に竹を入れた「チッキンコンクリート」を作っていた。

・土木分野に竹が使えないか。15年ほど前から研究を始めた。竹チップを持ち込まれて研究をスタートさせた。チッパーシュレッダーを作っている最大手の「大橋」(佐賀県神埼市)。

・竹チップを用いた土系舗装材料の開発に着手した。土系舗装は舗装材料が引っ張りに弱く、さらに乾湿繰り返しに伴うひび割れが発生し、長期耐久性に問題が指摘されていた。これに竹チップを加えることでひび割れ劣化対策と歩き心地の改善が強く求められている(竹繊維力効果の期待)。

・従来は引っ張り強度に弱い土に固化剤を投入し衝撃吸収性の低下を図ったが、固化剤の添付量を削減し、竹チップを加えることで竹の靱性吸収性を増加させ、引っ張り強度を増加させた。歩き心地の向上を図るとともに、ひび割れ防止対策にもなるのではないか。

・良い結果が出たので2008年9月「あんずの里運動公園」(福岡県福津市)で施工実験。100平方㍍。静岡市、浜松市、名古屋市、久留米市、豊田市、大阪市・・・。九州域外からの依頼多い。

・浜松市の個人戸建て住宅の施工事例。竹チップ舗装は草が生えない。理由がよく分からない。4年経過。まだ文句が来ていない。ひび割れ、摩耗性も大丈夫。

・豊田バンブーやマフラーミュージアムなどでも施工している。

・大分県日田市の県道法面(のりめん)防草対策を実施した。豊田市でものり面対策を講じ効果を得ている。

・なぜ草が生えないのか。実験室で実験(2週間)を実施。目下研究中。

・竹チップの吸収材としての有効利用法の検討。吸水性に着目。特許取得。ヘドロの回収も実施した。

・竹チップは大橋に頼めば売ってくれるが、九州域外は高い運賃で運べない。

・竹イノベーション研究会(BIC)を作って取り組みを始めた。2012年9月設立。

 

 

樹木医で木風社長の後藤瑞穂氏

 

木風(こふ)の社長で樹木医である後藤瑞穂氏が次に語った。竹の素材を使った樹木治療の話をした。父は造園家で「将来は緑が少なくなって環境が悪化する。自分たちが吸う酸素の分を植えなさい。そういう時代が到来する」と言っていた。

・熊本県の女性樹木医第1号だった。里帰り出産で帰省していたときに樹木医を知って樹木医になった。12年前に東京に出てきた。

・昔は木が樹木医に診断してもらう時代ではなかった。人間、動物だったが、樹木はモノ扱いが多い。木も命で生き物。具合が悪いのは原因がある。解明、改善して活かしてやりたい。

・木のおかげで生きている。恩返しみたいなものだ。治療に何を使うか。竹がどのくらい活用されているか。マーケットとして樹木医は重要な位置を占めていると考えている。

・樹木の中身がどれくらい腐っているか。それくらい治療すればよいかも分かってくる。風邪とがんでは治療する中身も違ってくる。スピリチュアルな人を思われるが、CTスキャン「ピカス」(PICUS弾性波画像診断システム)を科学的に機械を使って診断している。街路樹の場合、優先順位を決める。

・土壌改良を行う。栄養を与え、健全なところが増えるように治療する。樹木の場合、一度傷や空洞ができるとそこがふさぐことはない。肥大成長させ外に大きくし健全な材を増やすことで空洞率を下げて危険性を低下させていく。こういう方法で治療していく。

・この土壌改良に竹が使われてきている。竹を発酵させるパウダー状のものを土壌の中にすき込んで治療に使っている現場がだんだん増えている。私は竹を使うことが多い。

・木を守って調べることによって土地の価値を上げることも樹木医の仕事の1つ。森林の管理も実施している。森林の整備も行っている。単木を扱うとのイメージもあるが、森林全体や並木とかも手掛けている。

・埼玉県立公園の指定管理者も行っている。ブレスパイプ(呼吸をするパイプ)。緑道が痛んでいたのでそこに入れることで根に通気性を確保することによって樹木も元気になる。人も歩ける。市川八幡神社のクスノキに使うことになった。2019年特許取得。

・熊本県は竹林が多い。竹ひごや土留め資材を作ったりしていたが、竹チップを使って個人邸に使用、草が生えない。

・土壌から少し出るくらいに入れる。物理性を良くしていくのが大事。水が10センチくらいしか行かなかった硬い地盤にこのパイプを使ってより奥まで水を送り込める。竹と炭とか成分を摂る。浄化されるとともに酸素材も入っていて酸素が穴から外に放出される。

・根は呼吸をしている。常に新しい水が入っていく。新しい空気が土壌中に入っていくことで根が呼吸して発達する。土壌微生物も呼吸できる。竹の抗菌性もあって活用している。いずれは生分解性にしたい。

・日本ほどではないものの、ベトナムも竹がある。日本の中身とドッキング。アジア全体で竹を活用していく。パウダー。

 

バンブーエナジー技術部長の笹内謙一氏

 

笹内謙一(ささうち・けんいち)氏はバイオマスエネルギー利活用のための技術士事務所PEO技術士事務所(神戸市)の代表取締役であると同時にバンブーエナジーの技術部長。中外炉工業(大阪市中央区)元理事。

・バンブーエナジーは熊本県南関町。福岡県との県境に立地し、昔は関所があった。2105年10月設立。資本金2億2000万円。岡田久幸社長。親会社にバンブーホールディングスを設け、関電などが入っている。

・バンブーフロンティアで材を集め、バンブーエナジーで加工(発電)し、バンブーマテリアルで材にならないものを建築資材を製造するいわゆるカスケード利用を一カ所にまとめて実行している。

・総事業費45億円で始めたが、フタを開けたら50億円を超えている。一大事業。60~70人で最終的には120人体制。

・全体のスキームを「ゆめ竹バレー」と呼んでいる。バンブーエナジーは廃材を処理する処理場。周辺市町村から竹を集めている。竹を使って電気を作って、かつ熱を作って、それをバンブーマテリアルに売却している。

・電気代は非常に安く11.8円/kw時。熱は5.5円。九電より安い。収益上がらない。こちらの運転利用を制限することによってこちらでもうけてもらう。バイオマス利用としては理想的な形になっている。

・私はエネルギーが専門。エネルギーというのは基本的に「もうかりません」。バイオマス発電やりたがっているが、ハードルが高く「やめときなはれ」。

・材は材として売っている。エネルギーは石油との戦いだ。安い。薬はグラムで売っているが、エネルギー材はトンいくら。お金の値打ちが違う。マテリアルで稼いでもらう。

・竹は2003年ごろから取り組み、痛い経験をしている。専門はガス化。竹は嫌いだ。山口市でガス化をやった。YGCガス化発電設備。大失敗。木チップができるなら竹もできるだろうとやったが、バイオマスに蒸し焼きにしてガスを起こしそれで電気を回す。このときに出るチャート(炭)を燃やしてガス化の熱源にしていた。木質バイオマスは全然問題ない。竹を燃やすと溶岩状になって溶けてしまう。溶岩でドロドロ流れている状態。通常は灰にしてここから落とすんだが、落ちないし冷えると固まる。途中で燃えなくなる。冷やして開けたら炉の中がコンクリートのように固まっていて削岩機を持ってきて2,3度繰り返した。竹なんかやめやと言ったのが最初だった。

・エネルギー屋から言うと、竹は燃やすべきではない。熊本で竹の発電所やりたいといわれたが、やめときなはれ。体で体験している。できるわけがない。断ったが、しつこい。竹を燃焼させるが、竹だけじゃなかったら何とかなるんじゃないの。バーク。

・山口大学と一緒にバークを混ぜると、実験室でバーク8、竹が2なると融点が上がってクリンカできない。理屈はそうだが、木質バイオマスボイラーを使って実際に燃やした。クリンカの問題はバークを混ぜれば何とかなることになった。

・塩素分は熱交換器の温度を下げれば問題ない。発電効率が悪くなる。ORC(オーガニックランキングサイクル方式)熱電併給設備に打って付けだ。NEDOの売り込み文句「初めての竹、日本で初のORCです」。15億円のうち10億円がNEDO。

・2018年度から事業開始。19年度4月に試運転完了。5月から実証運転開始。9月29日に竣工式。

・悩みは温水利用の検証と利用先の拡大。温水が4倍出るが、使用先がきちっとない。

・竹年間2万トン。バークは100%燃料用だ。

・竹は竹林だから生えている。誰も使っていない。ただ。しかし、竹を持ち出して作業場に持ってくる作業に掛かるコストはトン当たり1万3000円(南関町)かかる。FITで使われている木材は安くてトン9000円、高いところで1万2000円。竹は杉、檜より高い。草本系の草。木質ではない。竹は森林ではない。難しい。

・竹は着火性がいい。バークと相性が極めてよい。

・ORCは無人。全自動運転。タブレットで遠隔で燃焼の様子を見ることができる。日本にはゼロ。原発主体の電気事業法の足かせがあり、設備費も高く、日本国内で普及しない。

・土場にを通り越して異物が混入している。

・最終的には温水も利用できれば投入したバイオマスエネルギーの77.2%を使うことができる。温水なしだと50.2%。熱利用がいかに大切か。

・竹は不思議だ。抗菌性がある。灰をペレットに詰めてブレスパイプに詰めたら効果あるのではないか。灰にミネラル分も含めて成分が残る。タイアップしたらいいのではないか。

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