日本の厨房を変えるスチコン

 

スチコンオーブンを使った調理実演by日本調理機(東京ビッグサイト青梅展示棟)

 

鯖のチリソース煮(同)

 

出来上がりました(同)

 

アグリ・ビジネス・ジャパン(ABJ)2019が9月11日(水)~13日(金)開かれた。今年は東京ビッグサイト会場が来年の東京オリンピックのプレス会場になるためセミナー会場もTOC有明4階に変更され、展示会場とセミナー会場が分離される形となった。

両方の会場間はミニシャトルバスの送迎サービスが行われていて、初日はもたもたしたものの、意外とスムースだった。併設展へも相互入場が可能なので、今回はフードシステムソリューション展ものぞいた。

びっくりしたのが厨房の世界。家庭用ではなく学校や病院など業務用の調理システムにはたまげた。しっかりした管理栄養士さえいれば、あとは食材を用意するだけ。難しい知見も不要だ。

 

10月発売開始のスチームコンベクションオーブン

 

実演を見学したのは日本調理機株式会社(本社・東京都大田区東六郷)ブース。大型のスチームコンベクションオーブンを設置し、実演が行われた。10月から新発売される予定だという。

これまでも展示場で何度か見たことはあったが、深く意識したことはなかった。もちろん自宅にもない。「コンベクション」(対流)という言葉も知らない。どういうものか関心があった。

ほとんどの家庭に普及している電子レンジやトースター。どちらも加熱調理を行う調理家電だが、最近では電子レンジともトースターとも違う新しい調理家電「コンベクションオーブン」なるものが登場している。

コンベクション(対流)を利用したオーブンのことだ。ヒーターなどを利用して焼き上げるオーブンに、ファンで風を起こして空気を対流させることで熱風を起こし、その熱風によって食品を加熱するものだという。

ヒーターの熱だけでなく、ファンの風を加えた熱風によって調理することで、ゆっくりと食材を加熱できる調理家電だ。

業務用と家庭用が販売されており、業務用は大型が主流だ。熱と熱風による2段階の加熱がコンベクションオーブンの特徴。水を入れることでスチームを発生させて水蒸気で焼き上げるスチームコンベクションオーブンもある。

電子レンジはマイクロ波によって水分子を振動させることによって加熱する。
オーブントースターは電磁式のヒーターの熱によって加熱する。
コンベクションオーブンは熱風の対流によって加熱する。

調理後の料理の仕上がりは電子レンジともオーブントースターとも違ったものとなる、という。

最終日の最後の実演で、献立は「鯖のチリソース煮」(冬の献立)だった。1バット24切れ分を8分+10分で調理する。材料は鯖の切り身、片栗粉、油、ごま油、玉ねぎ、にんじん、たけのこ、ピーマン、パブリカ、干ししいたけなど。

出来上がったものが見学者に提供され、味は濃かったものの、結構おいしかった。一定程度以上のレベルのものが機械であっという間にでき上がる。他にもモチコチキン、ブルコギ、大学芋の実演が行われた。日本調理機の製品で作れるレシピは「日本のおいしいお昼ごはん」「世界のおいしいお昼ごはん」「15時のおやつ」「季節を感じる旬ごはん」などに分類されて同社のHPに掲載されている。

もちろん銀座や赤坂などの高級料理店の手の込んだ料理には及ぶべくもないが、ある水準のものを年期の入った料理人でなくても簡単に料理できる。しかも大量に作れる。学校や病院、社員食堂などには打って付けではないか。

不動産広告サイト「コモンホーム」によると、「コンベクションオーブンは熱風によって食材を加熱するため、庫内の温度が均一になり焼きムラを防ぐことができるほか、じっくりと均一に加熱することによって焦げにくく、食材の中までゆっくりと火を通す調理が可能となる」。

会場は熱機器メーカーのマルゼン(東京都台東区根岸)や業務用冷蔵庫メーカーでコンベク最後発のホシザキも含めコンベクオーブンが展示の主力だった。

このコンベクは日本のイノベーションかと思ったが、残念ながら違った。ドイツのラショナル社が1976年に世界で初めて開発。現在世界シェア54%を握っているという。2台に1台だからすごいシェアだ。しかも、普通の一般人は自分で料理しなくなってきている。高級な味は分からなくなってきている。ゆえに市場は拡大中である。

日本でもラショナル・ジャパンを1992年に設立。大手スーパーマーケットや有名飲食店、病院や社員食堂、食品加工工場などで使用されている。日系メーカーもラショナルに追随している。

今は業務用厨房市場が主市場だが、いずれ家庭用も登場してくるだろうなと思っていたら、既にありました。三洋電機が2010年10月に「蒸す・焼く・煮る」を同時に行える家庭用スチコンを発売済み。その後もタイガー魔法瓶がコンベクションオーブン「やきたてkAS-G130や日立が1万円を割る「やきたてKAT-A130」を新発売。シロカは今年1月にコンベクションオーブン「すばやきST-2A251」の販売を開始している。

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