ノーベル化学賞に「リチウムイオン電池」開発の吉野彰氏

 

吉野彰さん(71)、ノーベル化学賞受賞決定(NHKテレビから)

 

吉野さんは旭化成名誉フェロー(同上)

 

「リチウムイオン電池」の開発で(同上)

 

スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2019年のノーベル化学賞を、旭化成の吉野彰(よしの・あきら)名誉フェロー、米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授(97)、米ニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム卓越教授に授与すると発表した。日本のノーベル賞受賞者は27人目(米国籍を含む)。

受賞理由はスマートフォン(スマホ)や電気自動車(EV)に搭載するリチウムイオン電池の開発で主導的な役割を果たしたことだ。スマホやEVを生み、世界の人々の生活を変え、産業界の発展に寄与した。

リチウムイオン電池は充電して繰り返して使える蓄電池。電極の間をリチウムイオンが行き来することで充電と放電を繰り返す。正極にコバルト酸リチウム、負極に炭素材料などを使う。

スマホやノートパソコンなどの電子機器、ハイブリッド自動車やEVなどに広く普及している。リチウムは軽い元素で、電極液の中を速く移動して電極をスムースに出入りする。このため、従来のニッカド電池やニッケル水素電池に比べて、高容量で大電流に耐えられる電池に育った。高容量、高出力を目指した改良が進む。

10日付日経朝刊によると、ウィッティンガム氏がリチウムイオンを使った蓄電池の基本原理を突き止めた。これを踏まえてグッドイナフ氏は1970年代後半にリチウムイオン電池の正極の開発に取り組み、コバルト酸リチウムを発見し、80年に発表。吉野氏はこの2人の成果を生かし、リチウムイオン電池の「原型」を作った。

吉野氏は正極と対となる負極に炭素材料を使うことを考案。ショートを防ぐセパレーターなどを含め、電池の基本構造を確立して85年に特許を出願した。

91年にソニーが世界に先駆けて商品化した。ノート型パソコンや携帯電話などに採用され、同社の看板として一時代を築いた。

現在ではパナソニックが世界大手と位置づけられるほか、旭化成や東レなど材料分野でも日本企業が重要な役目を担っている。

市場投入から四半世紀が経過したいまも総合的な性能でリチウムイオン電池を上回る電池は登場しておらず、需要は伸びている。調査会社の富士経済の予測では、2022年のリチウムイオン電池の世界市場は17年比2.3倍の7兆3900億円にも達するという。

吉野氏は、日経新聞のインタビューに対し、「無駄なことをいっぱいしないと新しいことは生まれてこない。自分の好奇心に基づいて新しい現象を見つけることを一生懸命やることが必要」と強調した。「好奇心が重要」であるとの言葉がこのブログの趣旨と一致する。同感だ。

吉野氏は毎年候補に上がっていたの受賞してほっとしたことだろう。「化学賞はあまりにも間口が広いのでデバイスにまで(受賞が)回ってくるのに時間がかかった」と受賞には自信をのぞかせていた。

 

 

 

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