単なる風邪も「喫煙」によって「肺炎」に=ウイルスの「下気道」侵入を許さない!
■たばこはCODID-19と親和性が高い
日本医師会の横倉義武会長は17日、新型コロナウイルスに関する日本記者クラブの記者会見にライブ出演し、感染者のうち何が重症化のきっかけになっているのかについて、「1つはたばこ(喫煙)。このウイルスはたばことの親和性が高いと言われている」と答えた。自分が10数年前まではヘビースモーカーだったことを告白し、これを機会に禁煙をするよう呼び掛けた。
たばこは各種臓器、組織に障害を起こし、いろいろな疾患を生じやすくなる。特にがん、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫・慢性気管支炎)は喫煙による影響が大きく、喫煙関連3大疾患と呼ばれているほどだ。
糖尿病ネットワークによると、日本禁煙学会はCOVID-19が重症化しやすいのは①高齢者(60歳以上)②喫煙者(過去に喫煙していた人も含めて)③ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある人④糖尿病や肝疾患などの慢性疾患のある人ーとしている。
たばこが肺がんをはじめとするさまざまながんや、脳卒中・心疾患などを引き起こすことは既に承知されている。それだけではなく、喫煙は肺をはじめとする呼吸器や全身の免疫系にも悪影響を与える。
たばこにはニコチンだけでなく、一酸化炭素(CO)シアン化水素(HCN)などがんや心血管疾患、呼吸器疾患の発病リスクを高める5000種以上の有害物質が含まれているという。
今回のコロナ禍で明確に分かったのは喫煙や受動喫煙が「たばこ肺」と言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、肺や免疫力へのダメージになるだけでなく、COVID-19の感染や重症化のリスク要因にもなることだ。
インフルエンザ、ノロウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)などの感染症についても喫煙者は感染しやすく、感染すると重症化しやすいことで知られているが、COVID-19でも同様であることが判明したとされている。
■コロナは「下気道」にウイルスの侵入を許す
日経Goodyによると、新型コロナウイルス(COVID-19)肺炎はインフルエンザと同じ呼吸器系疾患であり、「肺に炎症が起こった」状態だ。多くは感染症で、気道から侵入した細菌やウイルスなどの病原菌が肺の中で炎症を引き起こす。
過日、高血圧症で毎月1回通っている私のかかりつけ医は「風邪を引かないようにしてくださいね」と何度も忠告した。なぜかと聞いたら、「風邪とコロナは紛らわしい」という。区別が付きにくいのだという。
風邪は別名「上気道炎」というように、気道のうち、食べ物も通る上側「上気道」(喉頭から上)で炎症が起きている。これより奥の空気しか通らない下部が「下気道」(気管から肺まで)で、体のさまざまな防御システムがあるため、健康な人なら細菌やウイルスの侵入は許さない。
つまり、普通の風邪の場合、ウイルスが侵入したとしても上気道止まりとなる。だから、たいていの場合、喉や鼻などの炎症で終わるわけだ。
しかし、COVID-19に感染すると、まず風邪のような症状が1週間ほど続き、ほとんどの人はそれで回復するが、そうならない人も出てくる。つまり、上気道にとどまらず、下気道にもウイルスの侵入を許すことになる人も出てくるわけだ。
■「肺に始まり、肺に終わる」
「肺に始まり、肺に終わる」という。具体的な症状もインフルエンザに似て、発熱と咳から始まり、やがて肺炎を発症し、さらに深刻な症状へと進行する。
ナショナル・ジオグラフィック日本版によると、COVID-19は人間に感染すると、急速に肺を侵そうとする。肺の空気の通り道である気管支の表面には、粘液を作る細胞と繊毛を持つ細胞がある。粘液は、肺を病原菌から守りつつ、乾燥を防ぐ。繊毛は、花粉やウイルスなどのゴミを取り込んだ粘液を押し出して、体外に排出する働きも持っている。
米メリーランド大学医学部のマシュー・B・フリーマン准教授は、SARS(重症急性呼吸器症候群)はこの繊毛のある細胞に感染して死滅させるのが得意だったという。死んだ繊毛は抜け落ちて、ゴミや粘液と一緒に気管支に溜まる。同じことがCOVID-19でも起こっているとフリーマン氏は考えている。
これはCOVID-19が重症化に至る第1段階のウイルスの複製だ。第2は免疫の過剰反応、第3は肺の崩壊。この3段階を経て重症化に至ると世界保健機構(WHO)はみている。
最初期の調査では患者の多くが両方の肺で肺炎を起こしており、息切れなどの症状を訴えていたと報告されている。
ウイルスの侵入を察知した体は、肺へ大量の免疫細胞を送り込み、損傷を取り除き、組織に修復に乗り出す。これが正常に機能していれば、炎症のプロセスは厳しき管理され、感染した範囲はとどめられる。ところが、まれに免疫系が暴走して、健康な組織も含め、あらゆるものを破壊してしまうことがあるという。これが第2段階である。
次の第3段階では、肺はさらに損傷し、呼吸器不全に陥る。また、死に至らないまでも、肺に後遺症が残ることもある。WHOによると、SARSの患者は肺にハチの巣状の穴が開いていたというが、COVID-19の感染者にも同様の病変が報告されている。過剰に反応した免疫系が組織を傷付けるせいで、こうした穴が開くようだ。
フリーマン氏は「ここまでくると、人工呼吸器が必要になる。また、酸素を取り込む場所である肺胞と、その周りをめぐる血管の間の透過性が高まって、胸水がにじみ出てきたり、血液に十分な酸素を送れなくなる。深刻な場合、肺は水であふれ息ができなくなる。そして亡くなってしまうのです」と語っている。
■70代の免疫力は10%に低下
一般に免疫力は思春期でピークを迎え、40代で半分に、70代で10%に落ちこんでしまうといわれる。加齢とともに、肺炎にかかるリスクも確実に上がっていく。
咳によって異物を吐き出すのも防御システムの1つだが、これも加齢とともに衰えるという。ウイルスや細菌がのどの奥まで侵入すると、気道の表面にあるセンサーが異物を察知して脳に伝え、脳は即座にのどに対して異物を吐き出すように指示する。これがせきだという。
雲は必ず晴れる。雲の上には青い空が待っている。「その希望を持って国民が皆で協力した先に明るい未来を作っていこう」。そう願わない人はいない。