受けたいと思っても受けられないPCR検査=人権侵害を恐れるか国民の義務か

 

 

PCR検査はなぜ増えないのか

 

■無症状で感染リスクの低い人は受けられない

 

新型コロナウイルスの感染者数が過去最大を更新するなど感染拡大が続いている中、政府が旅行代金の半分を補助する「Go To トラベル」事業も22日から始まっている。

東京都の小池百合子知事は23日、都内で新たに366人の新型コロナウイルス感染者が確認されたことを明らかにした。これまでの最高は17日の293人で、過去最多を大幅に上回った。23日から4連休だが、「政府は東京都を除外しつつもGo To キャンペーンでどんどん旅行を奨励している」のに対し、小池知事は「外出を控えるよう都民に呼び掛けた」。どうもちぐはぐである。

23日朝テレビを付けると、羽島慎一モーニングショー(午前8時~9時55分、テレビ朝日)をやっていた。どの局を見るかは決めていないが、「コロナの女王」と言われている岡田さんや玉川徹氏たちがコメントを述べる。

その中で7月23日の「そもそも総研」は個人的に関心のある「PCR検査はなぜ増えない?」を分科会メンバーの小林慶一郎に聞いていた。世界各国ではPCR検査が盛んで、望めば誰でもいつでもただで実施してくれる。それに比べて日本は実施を決めるのが医師や厚労省の医系技官(厚労省で働く保健医療に関わる制度づくりを担う技術行政官)が判断する。

検査を受けられる人は発熱患者やその濃厚接触者、無症状で感染リスクの高い人に限られる。無症状で感染リスクの低い人は行われない。

 

無症状者は検査受けられない

 

■「検査受けたい」だけではノー

 

個人的にはPCR検査は受けたい。何もなくても陰性であることを確認できれば、それを証拠に堂々と外に出られる。今のように、自分は無症状ながら、いつどこで罹るか不安を抱きながら歩き回るのは辛い。しかも東京内でも区内のどの辺りが危ないのか、どの地域は注意する必要があるのか。そういうことも何も知らされていない。

そんな不公平なことがあってたまるかという気分だ。小池氏によると、7月23日は20代と30代が6割を占める一方、40代や50代にも感染が広がりつつあるという。そうなると、60代や70代も怖い。基礎疾患を持つ人ばかりだ。

不安をあおるような情報開示の仕方だ。それでいて、政府は「どんどん旅行をしてくれ」と言っている。半面、これは東京都を除いてである。よく分からない。

新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「ステイホームや自粛8割削減をすれば感染が下に行くことは間違いない。ただし今は社会経済と感染防止の両立という大命題がある」と政治家みたいな発言をしている。この人もよく分からなくなってきた。

 

 

人権侵害批判が怖いのでは・・・

 

■「人権侵害」批判を恐れる医系技官

 

小林氏は厚労省の医系技官の中に「感染症対策をやることによってハンセン病などのように人権侵害を起こしたという批判を受ける恐れがある」と指摘し、彼らの抵抗の「根っこには『人権侵害をやった』というふうに言われたくない」気持ちがあるという。

現場の医師や政治家、医系技官らは「検査能力」を増やすことではみな一致している。しかし、安倍首相が言うように増えないのは「目詰まり」を起こしているからだ。

対策関係者は「感染症の検査をして陽性が出れば当然、患者は隔離をしなければならない。しかも検査と隔離は必要最小限でなければならない」。しかし検査はエラーが付きものだから、健康な人が感染者に間違われ、隔離されてしまう「偽陽性」もあり得る。

日経のコラム・大機小機は「健康な偽陽性者を出してしまったら、それは大きな人権侵害だ。そのような人権侵害は絶対に起こしてはならないという信念がある」と言う。

「信念に従えば、検査の数も対象者もなるべく絞り込むことが正義である」。事前に感染している確率が高い人に対してのみ慎重に検査をすることが正しいということになる。

この信念は確かに正しいが、一方で「数千万人の日本人が検査の少なさに不安を感じている」のも確かである。このバランスをどう取るかだという。

小林氏は「社会の側がちゃんと哲学を提示しなければいけない。これは人権侵害じゃない。偽陽性が出ても必要な隔離措置に入ってもらう。それは社会全体で補償する。陽性になって無症状なら宿泊施設に行って1週間だけ我慢してもらうことはある種国民の義務だというふうに議論を立てなければいけない」と述べた。

同氏は「裁判員制度の裁判員に当たったのと同じこと。時間や労力を拘束されるが、国民の義務としてみんな認めている。陽性になったら宿泊施設に入るのは国民の義務だというふうに合意を作ることができるのではないか」と語った。

 

偽陽性出すのは良くないと厚労省

 

■検査を増やすのも国民的コンセンサスが必要か

 

玉川氏は「偽陽性になることを恐れてPCR検査を増やせないのか」と質問したのに対し、厚労省はこう答えた。「偽陽性が発生するから検査の数を増やしていないという考えはない。検査をすれば、一定の割合で偽陽性者が出るだろうが、そうなることで入院したり医療資源を逼迫させてしまうことは考慮しないといけない」。

玉川氏は厚労省があえて「偽陽性者の入院は良くない」と付け加えていると強調した。元国立感染症研究所研究員で白鴎大学教授の岡田晴恵さんは「裁判で訴えられたら負ける」ということでしょうかとコメントした。

「感染症の場合は10日ですが、ハンセン病の場合は一生だった。これが違う」と岡田氏は述べた。「パンデミックの中で偽陽性の人はかなり少ない。この検査を増やさないことによってどれだけの人命が損なわれるか、どれだけの経済が破綻するかということを考えたときに国民の義務ではないかというコンセンサスを得ることが大事なのだろう」という。

玉川氏はこれは完了を責めて解決する話ではないと指摘した。国民の議論が必要だと述べた。日本のPCR検査が増えるかどうか。「1週間とか制限されるかもしれないが、多くの命が救われるならと議論がなるかどうかが日本のPCR検査が増えるか増えないかのポイントではないかと思う」と述べた。

どれ1つとってみても難しい。難しいというよりも日本人は何を決めるのも時間がかかるのだ。PCR検査1つとっても大変なのだ。そのことを思い知った。

 

 

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