英語リスニング強化には「高速音読法」=「ハウツウ本」漁り60年の顛末
書名:『英語学習の極意』
著者:泉幸男
出版社:文藝春秋(2015年4月20日第1版発行)
■60年も英語を勉強しているのに・・・
泉幸男著『英語学習の極意』(文春新書)をブックオフで買ってきて読んだ。これまでハウツウ本はくさるほど読んだが、どれもそれらしく思わせるだけで悲しいほど身につかなかった。
それでもある程度時間を置いてだが、ハウツウ本を読み続けることはやめられない。どの本もそれなりに面白く、またためになることもいくつかは盛り込まれていて、自分がいつか英語をマスターできる姿を思わせるからだ。
しかし今は72歳。残念ながら英語はもちろん、どの言葉もマスターできていない。これまでの投資額は約500万円は下るまい。勘定したことないが、へたすると、もっと支出しているかもしれない。
中学1年から英語を勉強し始めて、受験英語も含めずいぶん勉強してきた。語学学校も幾つか通ったり、さまざまな機会を得てそれなりの修練は積んできた。
会社生活でも英語をそれなりに武器にしてきた。ニュース英語を翻訳したり、新聞を読んだりするのはお手のものである。他人と比べても自分の英語力は結構なものだと思っていたし、TOEICも最高点は875点で悪くはない。しかし、それ以上にはならなかった。
そうこうしているうちに35年間の会社生活は終わった。しかし、悔しいが、まだ勉強は終わらない。会話力が十分ではない。これまで60年間勉強してモノにならない。なぜこんなに出来ないのか。教え方が間違っていたのか。学び方がおかしかったのか。
■英語は単なる「ツール」なのか
日比谷文化図書館主催の日比谷カレッジ「英語が苦手なビジネスオアーソンのための”開き直り”英語塾」にも参加したことがある。今から11年前の2012年1月1のことだった。2回で各回1500円で合計3000円。
英語学習に苦労している人がいかに多いかを物語るように、60人の定員はあっという間に埋まった。講師は手島直樹氏。日産自動車の社長だったカルロス・ゴーン氏のアドバイザーを務めたことがあるとの触れ込みだった。
手島氏のメッセージは簡単だった。「ビジネスパーソンにとって英語はあくまで『ツール』で、英語の勉強は早く終えて、自分の『専門性』を高めることに時間をかけましょう。あとは『現場』で、どんどん話すだけです」というものだった。
ただこの「英語は単なるツールだ」といわれても、すんなり「はい、そうそうですか」とは言えないのである。道具だと頭では思いながら、その道具がなかなか自分のものにならないからだ。ツールを自分のものにするだけにあまりにも時間がかかるからだ。
日比谷カレッジで学んだのは11年前だが、既に会社定年を迎えていた。だから仕事で英語が必要なわけではない。むしろ趣味的な要素が強かった。道楽と言えるかもしれない。趣味とか道楽だと余計にやる気が薄れる。必死度が低下する。
■「ネイティブになりたい」
仕事で英語を使うのではなく、趣味や道楽で勉強するのだから、「相手の言っていることが分かり、自分の言いたいことが言えればそれで十分」というのが基本的スタンスだ。要は「通じれば十分」なのである。
しかし、私は「ネイティブになりたい」と思っていた。これが間違いだった。ある英語スクールの先生に「あなたはジャーナリスト。変な英語を話していると、そのレベルの人間と思われる。勉強する以上、きちんと話す必要がある。ネイティブになるんでしょう」
この「ネイティブのような英語を使いたい、ネイティブになりたい」という言葉が私を悩ませた。これだけ時間とお金を投入し、努力を重ねてきたのだから、いずれ自分もネイティブみたいな英語を操れるようになれるのではないか。
最近でこそ、「英語をネイティブのように操れるようになれる」ことが全くの幻想でしかなかったことが分かってきた。薄々は感じていたが、自分では認めたくなかったのだろう。それを認めると、自分がこれまでやってきたことが「壮大な徒労」だったことを認めることになるからだ。
■リストレを使ってCNN 『ENGLISH EXPRESS』学習
70代になって再び英語を学び始めた。そのきっかけになったのは米ケーブルニュース局CNNの発行している月刊語学雑誌『ENGLISH EXPRESS』(EE)。近所の図書館で何となく閲覧し、勉強を始めて既に1年以上になる。
CNNの生英語を素材とする語学雑誌。基礎編、中級編、上級編と段階を追って学習できる。CNNの速い英語に慣れることでリスニング力が身に付く(身に付いているように感じる)。
一時は「BBC RADIO 4 EXTRA」をながら視聴していたが、放送内容がなかなか自分のものにならない。悲しいが速過ぎるのだ。しかもチェックできる素材が手元にない。
EEにはCDも付いていたが、いまはむしろスマホを活用した音読法が奨励されている。音声再生アプリ「リスニング。トレーナー」(リストレ)だ。リストレを使えば、いつでもどこでもEEの音声を聞けるのが最大のメリットだ。
口を動かす音読は、リスニング・スピーキングの向上だけでなく、単語のインプットにも効果がある。またリストレでは停止・再生・速度変換・リピートを視覚的に操作できる。
また同時通訳者の行っている練習法「シャドーイング」も有効的だ。流れてくる音声をほぼ同時に、あるいは少しだけ遅れて、できるだけ正確に、あたかも影(shadow)のように、声に出して繰り返していく練習法だ。
初心者は英文を見ながらシャドーイングを行い、慣れてくると、英文を見ずに音声だけを頼りに練習できるようになる。簡単タップでさまざまな機能が使えるリストラなら、通学・通勤時、料理中などでの「ながらシャドーイング」が可能になり、学習効率も大幅にアップする。
■暗記には自由度の高い「Anki」アプリを
この1年くらいほぼ毎日やっているのが「Anki」。リストレを行う前の日課だ。Ankiは自由度の高い暗記カードアプリ。暗記したいものを片っ端から登録し、暗記していく。
私のパソコンの先生でもある「ぱーくん」が最近メルマガで送ってきた「英語を【しゃべれるように】なりたい人に効く方法・もちろん無料」に詳しく書かれている。私も1年ほど前からこれを使っている。
出題が忘却曲線に従って行われるため、忘れそうなころに再度出題されるのが暗記効果の高い理由です」とぱーくんも伝えている。
4年ほど前に読んだ『「英語を話せる人」と「挫折する人」の習慣』(西真理子、明日香出版社)を思い出した。英語を話せるようになるためには、「英語の勉強を正しく『習慣化』」する必要がある」と書かれている。
正しい勉強法を「習慣化」し、やり続けると効果は必ず出る。習慣を1年続ければ、効果を保証する。
・自分のスタイルを見つけること
・原理原則を守ること
・結果が出なくても続けること
・挫折を力にしていくこと
・あわてずに時が熟するのを待つこと
・「待つ」というのは「続ける」こと
「勉強法はあくまでも方法論にしかすぎないが、そこに血が通い、肉となったときに、学習者の『チカラ』となって働いてくれるものだと信じています」と書かれていた。信じるか、信じないか、そのどちらかだと私は追記している。