ほぼ散り花と化した「鬱金」の下でのんびり春を楽しむ
■ほとんどの桜が葉桜に
妻の実家の先祖様は都立八王子霊園(東京都八王子市元八王子町)に眠っている。と言っても同霊園は今年4月1日に開園50周年を迎えた最も新しい都立霊園であり、霊域はすべて1区画4平方㍍の芝生埋葬施設(芝生墓所)で、総面積は64万平方メートルと広大だ。
眠っているのも妻のだけだけで、墓としても新しい。最近は毎年1回4月頃にお参りしている。整然と洋型墓石が並ぶ様は何とも美しく、心が洗われる思いがする。
徒歩で行ける距離のところに国立研究開発法人 「森林研究・整備機構森林総合研究所多摩森林科学園(八王子市甘里町=とどりまち)があって、そこにあるサクラ保存林を見学するのが楽しみで大体3月末から4月にかけて訪れている。
今年は庭造りがあって墓参は4月も20日になってしまった。今年は開花が非常に早く、出掛けた日には桜はほとんど散っていた。
■桜は葉桜なれど、藤を観賞
霊園の正面を入ったすぐのところに藤棚があり、今年は満開の藤と出会った。熱くもなく寒くもないとても清々しい陽気で、吹き渡る風が肌をなぜて気持ち良かった。
これまでに10回ほどここには来ているが、いつも4月で、5月連休明け頃に咲く藤には早かった。桜も「例年より2週間ほど早い」(公園スタッフ)と言われびっくりされていた。しかし、今年はそのお陰で藤を見ることができた。
■鬱金と御衣黄は区別が付きにくい
多摩森林科学園は約7ヘクタールの樹木園のほか、8ヘクタールのサクラ保存林を毎年一般公開している。サクラ保存林には江戸時代から伝わる栽培品種や国の天然記念物指定のサクラのクローンなど、全国各地のサクラ約1500本が植えられており、見頃となる2月下旬から4月下旬は多くの人で賑わう。
樹木園は昭和の初期から国内外の樹木約500種、6000本を植栽。園内では775種の野生植物が記録され、季節の植物を楽しめる。また都市近郊としては珍しく、四季折々、野鳥、哺乳類などたくさんの生き物たちに出会えるのも魅力だ。今年は新型コロナウイルスに中止だが、園内ガイドツアー(2時間)も楽しい。
サクラの中で好きなのはサトザクラの「御衣黄」(ギョイコウ)と「鬱金」(ウコン)。遺伝的にはほぼ同一で枝変わりの関係になるという。特に御衣黄は濃い緑色の花から鬱金と区別しがたい花まで変異が多く、区別を付けがたい。
御衣黄は既に散り、辛うじて鬱金だけが枯れ落ちようとしていた。基本的に緑色のサクラが御衣黄、黄色のサクラが鬱金と覚えておくしかなさそうだ。
■桜餅「長命寺」をいただく
科学園の前にテントが2つ立ててあった。1つは萬盛堂(八王子市高尾町)。明治41年創業の饅頭屋で、JR中央線、京王高尾線高尾駅北口徒歩5分のところに店を構えている。焼きだんごと桜餅を買った。
やさしくほのかな香りで、春の訪れを感じさせてくれるのが桜餅。この桜餅にも関東風と関西風があるようで、関東風は小麦粉を使った薄焼きの皮を使用する「長命寺」。萬盛堂の桜餅は関東風だった。
関西風はもち米が原料の道明寺粉を使用する「道明寺」が名高い。いつもはこちらを食べていたように思う。道明寺、道明寺と言っていた。いつの間にか長命寺に変わっていた。地域によって種類も味わいも異なるらしい。
もう1つのテントはケーキや焼き菓子業者の八王子福祉作業所(八王子市元本郷町)。障害者が作る焼き菓子でキャラメリゼしたアーモンドをタルトに乗せて焼き上げたフロランタンやスポンジ生地に生クリーム、リキュール等を練り込みチョコレートでコーティングしたパルティールもいただいた。
ほとんどの桜は花が終わって葉桜状態。しかし吹く風は何とも言えないほど清々しく肌に気持ちいい。夫婦坂の終点当たりのベンチに腰掛けて買っただんごや桜餅をいただいた。ごちそうさま。