今やインフラ基盤は自前で構築するのではなくAWSの提供するクラウド基盤で=長崎忠雄AWSジャパン社長

 

アマゾンウェブサービスジャパンの長崎忠雄社長

 

ゲスト:長崎忠雄(アマゾンウェブサービスジャパン代表取締役社長)
滝澤与一(アマゾンウェブサービスジャパン技術統括本部レディネスソリューション本部本部長/プリンシパルソリューシ
ョンアーキテクト)
テーマ:クラウドサービスの現状と展望
2021年7月12日@日本記者クラブ

 

クラウド分野の大企業であるアマゾンウェブサービス(AWS)ジャパンの長崎忠雄社長と技術統括本部レディネスソリューション本部長の滝澤与一氏が登壇し、クラウドサービスの基礎知識から最新の活用事例、ソリューションやデータ保護などについて語った。司会は日本記者クラブ企画委員の竹田忠氏(NHK)。

 

■クラウドは初期費用や時間を大幅に短縮できる

 

・クラウドとは何か。クラウド進化とは何か。もともとはITは多額の初期投資をして調達してデリバリーするまで待たなければならない。使うとなると、ケーブリングとか結構な時間もかかる。初期費用が多くかかる。

・片やクラウドというのは使いたいと思ったときにすぐに使えるメリットがある。アクセスが増えた、社員が増えたときに今まではコンピューティングリソーシズを買って人為的に増やさなければならなかった。クラウドになるとそれが自動的にすぐに調達できるので、必要なときに増やすことができ不要になれば縮めることができる。2つ目のメリットだ。

・3つ目のメリットはアイデアから使い出すまでの時間を短縮できる。クラウドのメリットはイノベーション、あるいはアイデアを形にするまでの時間をぐっと短縮できる。

・特にクラウドコンピューティングはお金を多額に用意せずにすぐに使える。使いたいときにすぐに使える。やりたいことが頭に浮かんだときにすぐにコンピュータを開いて必要な物を調達できる。これがクラウドコンピューティングのメリットになる。

・従来のITに比べてたくさんのメリットがあって日本の企業、世界の企業のイノベーションを支えるプラットフォーム、テクノロジーとなっている。

 

■使いたいときに使え、不要になれば止めることもできる

 

・これまではデータセンターを自分たちで作って持たなければならなかった。何かやろうとした場合、ものすごく時間がかかった。サーバーを買おうとした場合、数週間、あるときは1カ月、2カ月かかるケースがある。それが届いて使えるようにするまでたくさんの人手をかけて作っていかないといけない。

・作ったあともメンテナンスが必要になってくる。継続的にコンピュータの維持コストが発生する。

・ところが初期投資が不要なだけでなく、必要な分だけ使うことができる。数分でクラウドを使えるようになる。使うことができるだけではなく、必要が無くなったときにそれを止めることもできる。

・ビジネス機会を逃さずに非常に早くシステムの構築をできる。ビジネスで新しいことをやりたい、企業が新市場に進出したい、新しいサービスを発表したいときにはスピードが重要だ。タイムリーなシステム構築ができる。

・サーバーとかコンピューティングなどの初歩的機能だけではなく、データベースやいろんなものがつながるようになってきたIot,

機械学習、深層学習、データ分析、コールセンターなどこれまでクラウドでできなかったことが今やクラウド上で動くようになってきている。時間短縮、コスト圧縮を実現することによって企業や開発者はすぐにやりたいことを実現できる。

 

■「イノベーション」を早く起こすために

 

・これをAWSに置き換えた場合どうか。もともとインターネットで本を売っていた会社からなぜAWSという会社が生まれたのか。2000年始め頃、テクノロジーが企業の成長、ビジネス側がやりたいことに追いつかないときがあった。調査をしたところ、本来客のために付加価値を提供すべき社員がサーバーやコンピュータのメンテナンスやバグ対応など守りばっかりやっていたことに気づいた。

・もっと早くイノベーションを起こしたい。ワンクリックでコンピューターが調達できないか。この問いかけからこのサービスが始まった。世の中のイノベーション、スピードを求める客には受け入れられるサービスではないかと2006年に開始した。

・いま時点で世界25拠点、81にデータセンターの塊を置いている。200以上のサービスを用意している。企業規模を問わない。すぐに止めることもできる。たくさんの企業、たくさんの業種、使われ方も多岐にわたっている。

・最近ではストリーミング。インターネットでやるケースが増えてきている。予測できないトラフィックに耐える。ゲームの基盤で使われている。広告の配信などさまざまなシーンで使われている。

・AWSで特徴的なのはこれまでに107回以上値下げをしてきている。ITは「値上げ」こそあれ、「値下げ」は従来のモデルでは普通ではなかった。常に利益を顧客に還元するために2006年から絶え間なくやっている。

・クラウドのテクノロジーは進化が早い。ユーザーコミュニティーが全国にある。意見交換をして知識を蓄える。成功・失敗体験をシェアしてもらう。

 

AWSのインフラ

 

■札幌市では1週間で業務支援システムを稼働

 

・リージョンは物理的な場所。日本では東京と大阪の2拠点にデータセンタの塊を置いている。1つのデータセンターではなく複数のデータセンターを固まりとしてサービスを提供している。

・1国に2拠点のデータセンターを置くのは米国以外では日本だけ。日本のニーズに耳を傾けてきた結果だ。

・Amazonは脱炭素にコミットしている。パリ協定より10年早く脱炭素を目指すと宣言している。全エネルギーを脱炭素で実現しようとしている。日本のグリーン社会の実現に向けて貢献したい。

・札幌市保険福祉局保険所感染症総合対策課は、コロナ対応で課内に情報システム班を編成。AWSをベースにわずか1週間で業務支援システムのプロトタイプをリリースし、検査データ、患者データの一元化を実現。混乱を収束させつつ、さらなる開発期間を確保。約3カ月後にはさまざまな作業の簡素化・自動化を果たす事務支援システムを稼働させた。感染症対策事務に関するさまざまなデータを統合したことで、新しい視点での分析にも活用できるようになった。

・社会のあらゆるところでクラウドコンピューティングが使われ始めている。新型コロナ下で新しいビジネス、新しいやり方が求められている。新しいイノベーションを生み出さなければならない。

・ゲームやヘルスケアなどあらゆる分野で活用されている。モデルナのワクチン開発もクラウドコンピューティングを使ったことによってデータのリアルタイム分析を縮めコスト圧縮を実現した。薬事の検証、開発でも利用されている。通信、小売り、エネルギーなどもそうだ。

 

■責任共有モデルを採用

 

・いろんな業界でクラウドを使うことが起こっている。初期費用が要らないとコストが安価ということは大量のデータが発生する時代においては大きなメリットが存在する。

・セキュリティが気になるが、AWSでは最優先事項の1つとして挙げている。柔軟性の高さを生かしながら安全なクラウドコンピューティング環境を実現しようとしている。

・日本国内でも数十万社の顧客があり、あらゆるニーズに応えなければならない。高度なセキュリティ対応も必要だ。顧客のセキュリティー目標も日夜考えている。

・責任共有モデルを採用している。セキュリティを考えた場合、顧客が完全にセキュアな状態を作り出さなければならない。AWSと顧客が責任を共有(分担)しながらセキュリティを確保していく。

・顧客に求められた場合、第3者機関の証明書を発行する。

・ベストプラクティスを提供している。

・データをどこに置くか(データの所有権や統制権)の権限はユーザー側にある。東京リージョンや大阪リージョンに置ける。バックアップで海外にコピーしたい場合にはユーザー操作によって移動も可能だ。

・個人情報をどう取り扱うのか。データの1つだが、ガイドやサービスを活用しながらデータを安心して置いていただく。安全に守ることが出来る。クラウドとして安全に扱える状況を整えている。(この項滝澤氏)

 

■クラウドはそれをやり遂げる人材が必要だ

・クラウドコンピューティングの活用とは3つの要素が重要だ。1つはテクノロジー、2つ目はリーダーシップ、3つ目はそれをやり遂げる人材。3つが揃ってクラウドコンピューティングの導入が成功に導かれる。

・クラウドコンピューティングは数十年続いたITのモデルとは運用、導入、構築の仕方が若干変わる。変化を伴う。クラウドが成長しているのはイノベーションとかスピードが何者にも代えがたいから。

・成功しているリーダーシップの8カ条は①トップがコミットしている、②流れる時代に抗わない、③発明に対して強い意欲を持った人材を揃えること、④顧客の真の課題を解決することに拘ること、⑤まずはスピードを重視してスタートすること、⑥シンプルにスタートすること、⑦豊富なツールが重要、⑧トップが積極的なゴール設定を行うことでチームがイノベーションに向かっていく。

・クラウドコンピューティングはITと違ってスピード重視だ。導入して終わりではない。常に進化していく。顧客が進化に付いていくことによってクラウドのメリットを享受できる。従来のITは作って固めてそのまま何十年も使う。

・今の世の中は先行き見えにくい。分からないものに初期投資をすることが難しい。小さく始めてトライ・アンド・エラーで行くことが最も重要。運用するためのノウハウ、知識を持つことが重要だ。

・顧客も自分たちで新しいイノベーション、新しい開発を始めたい声を持っている。パートナー様と二人三脚で変革を起こすための人材活用を支援させてもらっている。

・クラウドを活用できる人材のニーズは高い。最先端の動向を把握しながら絶え間なく進化するクラウドのテクノロジーを顧客と一緒に使うことで初めて120%享受できる。

・過去10年、トレーニング、資格にも投資をしている。特にコロナ禍によって生活様式ががらっと変わっている。顧客にも学びを継続してもらうためにオンラインにトレーニングを移行した。オンライン用配信などに大きな投資を行っている。

・世界でのクラウド使用率は4~5%にすぎない。95%は従来のITで作られている。これをどうやってクラウドに移行するか。これから加速してくる。トレーニング、資格に力を入れていきたい。

・企業だけにとどまらず、高等教育機関や学生がクラウド技術を学ぶための無償の教育プログラムも用意している。将来のクラウドの人材が育っていくような支援も行っている。

・コロナ下の1年半。デジタルトランスフォーメーションを起こす必要性があると聞いている。これまで感じたことのないくらい強い。クラウドが持つ3つのメリット(スピード、コストダウン、イノベーション)を提案することによって各社の活性化のお手伝いをしたい。

・従来のITと違うのはどなたでもすぐに使えるメリットがあると冒頭で言ったが、最大限使うためには人材が育っていかなければならない。何かやりたいと思ったときにクラウドで何か物事を作ってスピードアップし、強いてはそれがさまざまなイノベーションが日本で生まれることを強く期待している。

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