人事で官僚を支配することにまい進する史上最強・最悪の菅・杉田コンビ=前川喜平氏

 

登壇した前川喜平元文部科学事務次官

 

ゲスト:前川喜平元文部科学事務次官
テーマ:政治と官僚
2021年7月16日@日本記者クラブ

 

前川喜平元文部科学事務次官は16日、日本記者クラブで「政治と官僚」について話した。前川氏は初等中等教育局長、文部科学審議官(文教担当)などを経て2016年に事務次官就任。2017年1月に発覚した文科省天下りあっせん事件を受けて辞職した後、現代教育行政研究会を立ち上げ、代表を務めている。

 

■政治家はどうしても次の選挙を考える

 

・政治主導か官僚主導という問題があるが、この問題に関しては迷うことなく「政治主導」が正しい。代議員制民主主義という形を取っている以上当たり前だ。

・私が官僚になった1979年は「大臣はお迎えしてお見送りする。それを繰り返している。そういう存在という意識」が普通だった。しかし政治家と官僚のあるべき関係がだんだん崩れてきたという感覚も持っている。

・立憲政治の下ではすべての公務員を守っていく必要があるが、安倍・菅政治の下では全体の奉仕者ではなくなった。政治家と官僚の間には一種の緊張関係が存在していなければならない。

・政治家はどうしても次の選挙を考える。次の選挙で票につながるかどうか。次の選挙の資金を集められるかどうか。票と金につながるかどうかが行動原理になりがちだ。子どもとか外国人は金を持たない。あまり考慮する必要はなくなってくる。

・官僚には選挙がない。全体に目を配ることが出来る。少数者、弱者や非有権者を考えることができる。官僚は全体の奉仕者になりがちで、政治家はどうしても一部の奉仕者になりがちになる。

・政治家は放っておくと腐敗し暴走する危険性がある。それに待ったをかける歯止めとしての官僚の役割は大きいはずだ。緊張関係だけではなく協働関係を担いながら政治家のリーダーシップの下で政策を作っていくのが望ましい。

・政治家にはない官僚の特性を生かしていく必要がある。元文部大臣の与謝野馨氏が分かりやすく教えてくれた。「政治家は役人を恫喝するな、役人は政治家を馬鹿にするな」。役人を恫喝する政治家と政治家を馬鹿にする役人がいかに多いことか。

・「どんな政治家でも国民が選んている。よって馬鹿にしてはいけない」。これは役人の務めだ。政治家に賢くなってもらうしかない。

 

■菅・杉田ラインは史上最強で最悪のコンビ

 

・今の政治家と官僚の関係は与謝野氏が理想とした関係と逆になっている。今は「政治家は役人を恫喝し、役人は政治家を馬鹿にして動いている」状況だ。こういう状況をもたらしたのは安倍政権・菅政権の官邸一強体制だ。

・中でも大きな意味を持っているのは菅・杉田ライン。約8年官房長官を務めた菅義偉氏、その下で官房副長官を務めた杉田和博氏。2人は史上最強であり、史上最悪のコンビだ。人事で官僚を支配することをそもそも信条とする行動様式をずっと取ってきた。

・菅氏と警察官僚として権力に奉仕することを信条としてきた公安警察官僚が一体化している。2人が菅政権の中枢部にいる。最悪だ。その背景には官邸一強体制がある。その根っこにあるのは政と政の関係ではないか。政治の世界が官邸一強になっている。

・自民党総裁の地位が自民党の中で極めて強くなってしまったことが背景にある。今の小選挙区制では総裁がうんと言わなければ、公認が得られない。総裁には刃向かえない事態。政権に対する党内批判勢力が極めて弱体化している。

・政府と各省庁の間で明らかな上下関係ができている。総理は言うに及ばず官房長官にも頭が上がらない力関係ができている。第1次安倍政権のときにはこういうことはなかった。

・第2次安倍政権で官房長官は全く変わらなかった。官房長官は8年間変わらない一方、各省次官はほぼ2年で交代している。官房長官が力関係で上に立ってしまった。

・官僚の任命権者は大臣。それが官房長官が強い力を持つようになってしまった。菅さんはその権力を持ったまま総理になっている。各省大臣が持っている人事権が空洞化していった。

・内閣人事局の発想は間違っていない。うまく使っていく。逆に極めてまずい形で運営しているのが安倍・菅政権ではないか。その中枢に菅・杉田ラインがいる。

・杉田さんが事務の官房副長官に居座り続けたことも日本の政治にとって不幸なことだった。私が仕えた古川貞二郎元官房副長官は人間的に尊敬できる、誠実な人だった。政と官の結節点が自分の仕事だとわきまえていた。「官僚の問題は官僚の中で始末する」のが官僚だと考えていた。権力に従属する考え方ではなかった。

 

■総務省は菅総理の“天領”

 

・菅・杉田コンビで取り仕切った人事は枚挙にいとまがない。官邸権力の拡大に資する官僚は重用される。少しでも異を唱えると疎んじられる。これが常態化した。9年も経つと菅さんの言うことを聞く人間が登用され、言うことを聞かない人は外されている。

・法務省・黒川弘務氏。官房長と事務次官を7年半やった。政治との付き合い。大臣室と国会議事堂が職場で現場を重視する人間にはつまらない。黒川さんは政治の世界から非常に重宝がられていたことはよく分かる。

・東京高検検事長の勤務延長はあからさまにえこひいきされることが起こった。適用できない法律を適用した。法治国家ではあるまじきこと。

・総務省のテレコム官僚には菅政権では安全地帯にいる、あるいは特権的立場にいる意識があったのではないか。管さんが実効支配をしている”天領”。影響力は強い。脇が甘くなった。違和感はなかったのではないか。

・1つの省が1人の政治家に長年牛耳られることはこれまでにも起きている。文部省時代に西岡武夫さんが完全支配していた時期があった。外務省は鈴木宗男さんに牛耳られた。ときどき起こる。菅さんと総務省との関係もその一環だ。

 

 

 

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