【シーフードショー】パルスパワーを利用した「アニサキス」殺虫方法を開発=食中毒リスクのない刺身を実現

 

アニサキス

 

第23回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー(主催・大日本水産会)が11月8ー10日、東京ビッグサイトで開催された。9日には熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授がセミナーで「アニサキス症リスクフリー刺身を提供するアニサキス殺虫装置」と題して講演した。講演の主な内容は以下の通り。

 

■パルスパワーを用いた新しい殺虫方法

 

・元々電気工学を専攻しており、水産業とはかけ離れたところで研究してきた。今回「魚に電気を流し続けた男」のキャッチフレーズを付けられた。

・アニサキスの予防方法。冷凍、除去が厚労省から推奨されている。マイナス60℃なら1分の加熱が必要で、100%殺虫が可能。ただし死骸は残る。アニサキスそのものは予防できるが、アレルギーは予防が難しい。

・加熱すると焼魚、煮魚になってしまい、お刺し身ではなくなる。冷凍は刺身で食べることができるが、「解凍」の表示をしなければならない。マイナス20℃以下で24時間以上冷凍することが推奨されている。殺虫率は100%達成できる。

・目で見て除去する方法がある。しかし処理時間が1フィーレ当たり15秒と非常に人件費がかかる。かつアニサキスが身の中に潜ってしまう。100%の除去ができない。アニサキス予防対策としては除去は万全ではない。

・我々は今回、新しい方法としてパルスの方法を提案している。生のまま処理をしている。瞬間的に大電流を流すことによりアニサキスを殺虫している。アニサキス予防効果は100%。今回この技術について紹介したい。

 

メリット・デミリット比較

 

■「日本の水産業活性化の一助に」を胸に開発を

 

・冷凍はメリットとしては長期保管が効く一方、デメリットは長時間(24時間)の処理が必要。保管ケースが必要なほか、要冷凍の表示も必要で、商品価値が低下する。

・パルスは短時間で処理できる。流すように出荷できる。除去に比べると低コストに処理ができる。生と同等の品質が得られる。デメリットとしては長期保管には不向き。新技術ということで馴染みの技術となるためにはもう少し時間が必要になる。

・「日本の水産業活性化の一助」になると思って開発してきた。日本からアニサキス症をなくすのが我々の夢としてあるので、社会実装に皆さんの知恵を拝借したい。

 

■サバ、アジ、カツオ、サンマなどに寄生

 

・アニサキスは見た目は透明のミミズのような形をしている。太さは大体0.5ミリから1ミリ程度。長さは2~3センチ程度。立派な生物。食道があって胃があって腸もある。接種してしまうとアニサキス症になる。

・ミミズのように柔らかくなくて非常に硬い外皮を持っている。包丁で切断しようとするとゴリゴリとする。あたかもプラスチックのコーティングがされているような感じだ。これがアニサキスを強くたらしめている原因と考えている。

・サバ、アジ、カツオ、サンマなど多くの魚介類の内臓に寄生している。鯨が最終宿主。いつか鯨に帰るために旅をしているが、その途中で魚に食べられてしまって、結果として魚の中に長いこと滞在する。それを我々が摂取することによって、アニサキスを摂取することになる。

・アニサキスを取り込んでしまうと、胃壁や腸壁に侵入して激しい腹痛を起こすといわれている。胃ならば内視鏡で除去できるが、腸まで行ってしまうと開腹手術をしなければならない。開腹手術をするか、痛み止めを飲んで1週間我慢をするかの選択を迫られる。1週間程度で死滅するのでそれまで我慢できるか。

・アニサキスは動かないものもあれば、活発に動くものもある。生体として動くことは神経節をしっかりと持っている。神経系を何らかの刺激でコントロール不能にしてアニサキスが死んだと予想しているが、まだ実証には至っていない。

・なぜ24時間必要かというと、アニサキスは芯まで凍らないと死なない。熱は表面から中に入っていく。殺菌、放射線など色んな技術が試されている。外にいると、非常に強い紫外線や超音波を浴びると何らかの影響で死ぬことは確認されているが、魚の中にいると魚の身がバリアとなって刺激をシャットアウトしてしまうのでなかなか殺せないのが現実だ。

・「かんで食べればよい」との指摘もネットでちらほら見るが、半分に体を切っても30%~40%は侵入してしまう。かみ切っても完全に殺さない限りはアニサキス症の発生は抑止できない。醤油やわさびなどで死ぬとの指摘もあるが、われわれが美味しく食べる濃度では全く影響がないことも確認されている。

・1971年に最初の実験が行われた論文が書かれている。水産業界は50年もアニサキスと戦っていることになる。

 

■食中毒の第Ⅰ位はアニサキス

 

・食中毒の発生件数の推移。トータルで1000件程度で推移していたが、サルモネラは減少傾向。アニサキスは2012年から食中毒の原因物質として登録され、公告が義務づけられている。うなぎ登りに増えている。平成30年には35%だったものが昨年のデータによると50%を超えている。食中毒の1位にアニサキス症はなっている。

・やっかいなところはアニサキス自身は食べるものに入っており、衛生だけでは対応できない。有効な治療薬はない。取り除く、ありは我慢するしかない。薬は今は存在しない。

・食中毒の保健所への届け出は必要になっている。場合によっては営業禁止店舗もあり得る。厚労省としては加熱・冷凍・除去を推奨している。熊本県では7月にアニサキスの食中毒が発生し鮮魚店が営業停止になっている。

・生のおいしい刺身を提供する場合でもリスクとして食中毒の発生がある。それから営業停止のリスクを負っているのが水産業界の悩みどころ。

 

■ヨーロッパでは「生は食べられない」

 

・冷凍のアニサキスの殺虫はマイナス20度で24時間以上冷凍することで100%殺虫できる。しかし冷凍による品質低下はある。魚体にはドリップが出てしまう。冷凍したものには解凍表示義務がある。表示だけで商品価値は下がる。

・種類によって変わりはするが、特定の種類は紫外線に反応して傾向タンパク質を持っている。紫外線が届かないアニサキスは何の効果もなく除去できない。表面上のアニサキスはきれいに取れるが、中に入ってしまうと取れない。100%は不可能。

・人がアニサキスを見つけて取る作業を行っており、非常に人件費がかかってしまう。かつ大容量の処理は不向きで何か新しい技術がほしいと開発を行ってきた。

・海外ではどのような予防を行っているのか。食品の国際規格にコーデックスがある。全世界共通規格だが、「マイナス20度C24時間以上」を予防方法として挙げている。強制はしていない。あくまでこういう予防方法がありますよ。

・米のFDAは「マイナス35度以上、15時間以上」「マイナス20度以上7日間」とさらに厳しい規格を設けている。州ごとに規則を決めている。ニューヨーク市やネバダ州、バージニア州はこの処理をしなければ業者への販売を禁止する規制にも取り組んでいる。米国も全土に波及する可能性が高い。

・欧州は「マイナス30度15時間以上」。ほとんどの国は2011年11月以降、生食については業者に冷凍処理を義務づけている。ヨーロッパでは生は法令上出すことができない状況。

・厚労省はコーデックスの規格を参照して「マイナス20度24時間」を生で食べる場合推奨している。1998年9月には生食用食肉衛生基準が策定され、生食用馬刺しについては「マイナス20度48時間以上」の冷凍処理を義務づけられている。肉に関しては海外と同じ規制が入っている。

・2012年12月にはアニサキスなどの追加が始まっており、個別集計も開始されている。魚にいる寄生虫として知られている。サルコシシスは馬肉にいる寄生虫。1万頭に1頭いるかいないかの割合だが、それでも全量処理しなさいと義務づけされている。

 

アニサキスアレルギー

 

■アニサキスアレルギーの予防は困難

 

・今回アニサキス症を予防する方法を提案している。もうひとつアニサキスアレルギーがある。アニサキス症は生きたアニサキスが侵入することで発症する痛みなどの病気だが、アニサキスアレルギーはアニサキス自身が持つアレルゲンに反応することでアナフィラキシーなどを起こすアレルギー。

・アニサキスアレルギーは生きた虫体、死んだ虫体、虫体から分泌されたアレルゲンを摂取することで発症する。どのような方法でも予防することができない。加熱、冷蔵、冷凍、全ての水産加工品ともアニサキスアレルギーリスクの回避は困難である。アニサキス症になったあとにアニサキスアレルギーになることも報告されており、たとえばアニサキス症が予防できればアレルギーを発症する割合は低くなると考えており、この方法を取り入れることによって発生率を減らすことができるのではないか。

 

パルスパワー

 

■殺虫にはパルスパワーが有効的

 

・ドライアーや電子レンジは秒単位、分単位で使う。1キロワットの電力を長時間使っている。熊本ではキロワット当たり17円。この面積が電気代を決める。面積は一定のまま細切りにして電力を出すことによって、時間は短くはなるが、電力は上がっていく状態を作り出すことができる。それを極限にまで短くすると非常に高い電力を得られる。

・短い時間に発電する力を「パルスパワー」と呼んでいる。電気エネルギーの使い方を提案している。自然界でパルスパワーと言えばどういったものがあるか。端的には雷が一番大きなパルスパワー。瞬間的な電力が大きい。一瞬に破裂する花火。ガソリンエンジンの中で爆発して燃焼するガソリンもパルスパワー。

・なぜ大電力が必要なのか。電気パワーは電力があって初めて仕事ができる。

・岩が動く。動くことは仕事がされたことを意味する。弱い力で長時間働かせても岩は動かない。その力を一緒にためてポンと与えることによって岩を動かす。強い力、大電力を出すことによって岩を動かせる。それまでにはできなかった仕事ができる。電力が大きいことで電気エネルギーができる仕事が非常に増えている。幅が増えている。

・コンロにヤカンをかけてヤカンの温度を上昇させているが、パルスパワーはこれをミリ秒以下で沸騰させることができる。短時間でエネルギーの遷移を達成できる。ゆっくり加熱するとエネルギーの無駄になる。

・パルスパワーの特徴としては大きな電力によってできる仕事の量が増えた。短い時間で行うことでエネルギーの散逸を解消できる。高効率なプロセスでできる。

・アニサキス殺虫装置のプロトタイプ機を完成させ、6月22日にプレス発表を行った。開発は経済産業省の支援を受けている。同装置は冷塩水生成装置、パルス電源、処理槽の3パーツから成る。

・安全を優先して実証機を作った。金属製の密閉容器の中で完全に電気エネルギーをクローズさせることによって安全性を担保し、プロト機を完成させることを目標にした。

・今後は大量処理可能な装置開発を目指す。

 

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