【山登り】標高344mの奥武蔵「官ノ倉山」で楽しんだ秋山=2年前の「靴底剥がれ事件」のリベンジ登山
■山に登る前に靴を手当
11月もずっと好天が続いている。大学時代の仲間から声がかかって勤労感謝の日の翌日、奥武蔵の「官ノ倉山」(344m)に登った。「低山だがルートは変化に富んでおり、11月中旬以降は紅葉が楽しめる」山だ。
最後に山に登ったのは2019年11月17日。神奈川県と東京都の都県境にある初心者向けの854.8mの陣馬山(神奈川県相模原市)だが、その時に愛用の登山靴の底がガパッと剥がれてしまった。
事件に見舞われたのはまだ登山を始めて間もない人里だったので小屋などのコードや紐を見つけて応急修理を施し何とかしのいだ。それでも往生し、苦しい登山だったことを今もよく覚えている。
大学時代の友人はどういうわけか全員が埼玉県さいたま市在住。しかも全員が大宮区に住んでいる。この大宮グループとは2011年以来、ほぼ毎年にようにトレッキングをしているが、11年10月16日に志賀高原に登ったときはスマートフォンをクマザサの中に落として気付かないまま山を下山してしまった苦い経験もしている。
2日前にモンベル(本社・大阪市西区、辰野勇会長)新宿南口店で買ったのがこの靴「ティトンブーツMen’s」男性用(17490円)。軽量で柔らかく、軽装備のハイキングや野山の散策などで手軽に着用できるミドルカットの全天候型ブーツ。
モンベルは軽量・軽装備・ミドルカットの全天候型ブーツとして「ティトンブーツ」と「タイオガブーツ」を勧めているようだが、国内最大級の登山メディア「YAMA HACK」(ヤマハック)が双方を履き比べて検証結果を報告している。
それによると、ティトンブーツは整備された登山道や負担の少ない短距離や荷物の少ない人にお勧め。一方、タイオガブーツは①岩場や縦走など今後幅広く登山をやっていきたい人②まずは低山から始めて、ゆくゆくはステップアップしていきたい人にもってこいの靴と推奨している。
■「何もないですね」と話し掛けたら、「何もないよ」と地元民
メンバーは大宮グループ4人+私の合計5人。彼らは最近でこそテニスを楽しむようになったものの、もともとは同じ大学の同級生。山登りも好きで、年に何回か登っていた。そこに同じ大学の私が参加した。今回は東武竹沢駅東口で合流することになった。
あまりによい天気なので自宅を早く出て西武バスで東上線成増駅へ。そこからが意外と長距離で17駅。小川町からさらに寄居行きに乗り換え、1つ目の竹沢駅が待ち合わせ駅だった。家からの所要時間は1時間40分。
早く着いたら駅で時間をつぶそうと思ったが、東口の駅前は何もなかった。だだっ広い広場があるだけだった。所在なげにうろうろしていたら、ベンチが1つあってそこにたばこを吸いながら地元のおじさんが1人休憩していた。
手持ちぶささで「何もないですね」と声を掛けたら、「何もないよ」と返ってきた。どこへ登るのかと聞かれたから「官ノ倉山」だと答えたら、「おれの家のそばだ」という。
「官ノ倉山からだとみんな東秩父村に下りるよ。東秩父村は埼玉県唯一の村。野菜の直売所があって、そこから小川町駅行きのバスが出ている。距離的にもぐーんと小川町駅に近いしコースもいいよ」とのこと。
合流したメンバーにこの貴重な地元情報を伝えたが、残念ながら採用されなかった。山登りの旅程で途中バスに乗るのは邪道らしい。駅から登って駅に下りるコースが鉄則らしい。
■出土した石碑・石仏を「慈光尊」に
地下道を渡って西口に回ると「慈光尊」があった。「小川町竹沢東部郷土の文化財保全を進める会」が設置したもので、由来が書かれていた。河川改修工事の際、地中に埋もれて600余年。風雪に耐えること300余年の石碑・石仏が出土。この慈光尊を設けて文化財保存の機運を高めることになったようである。
どの土地にも歴史があり、文化が眠っている。石碑や石仏が地中から出てきたのならそんなにぞんざいな扱いをできないのは当然だ。それなりにほこらを作って安置するものだ。先祖を重視するのは今のデジタル時代だって同じではないか。
■5mの草丈にもなる「皇帝ダリア」
東武竹沢駅前の道路沿いの家に植わっていたピンクの綺麗な花。官ノ倉山に歩いて行く途中の集落にも植わっていた。グループの仲間に聞いて見ると、1人から「皇帝ダリア」とすぐに答えが返ってきた。キダチダリア(コダチダリア)とも呼ばれるとか。
最近は山の名前もすぐ分かるアプリが開発されているらしい。「Picture This」アプリも野菜や花、果物、多肉植物、雑草に至るまで何でも識別する。困ったときはアプリを向ければ答えが出てくるわけだ。便利この上ない。
プランティアによると、皇帝ダリアは、メキシコや中米を原産とするキク科の球根植物。一般的なダリアは生長しても1m程度にしかならないが、皇帝ダリアは5m程度の草丈にまでなるという。花色はピンクのほか、紫色もあるようだ。
貫禄ある花姿から、「ダリアの王様」と呼ばれることもある。他の花々を見下ろすように咲き乱れる姿は、圧倒的な存在感がある。11月から12月にかけて開花し、秋空の下、デコラティブな花姿をみせ、旅人を楽しませてくれる。
問題は原産地が暖かい地方なので、耐寒性は高くないこと。しかし奥武蔵に咲くようだから、土着化し意外と風土に強いのかもしれない。
■頂上で山コーヒを楽しむ
官ノ倉山到着。登り始めて1時間。木のベンチが2つあってたまたま先に着いたわれわれのグループが2つを独占することになった。風が意外と強かった。後から着いた2人連れ女性グループや単独行の何人かは地面に直座りしていて申し訳ないなとも思ったが、実は裏場に回ると風を避けられる休憩スポットがあった。
地元の人たちが自力で作ったベンチで、観光客用にずっと維持している人たちがいることを知った。感謝!例によってお弁当を食べたりミカンを食べたりし休憩。仲間の1人がコーヒーを入れ始めた。こちらは貴重なコーヒーをお相伴でいただいた。感謝!!
市販のドリップバックにお湯を入れて淹れるもので、手軽にコーヒーを楽しめる。コッヘルに水を入れてガスバーナーの上でお湯を沸かす。それをドリップバッグに注いで出来上がりだ。
一番のぜいたくはその場でコーヒー豆をミルで挽いて、ドリップする方法。挽き立ての香り高いコーヒーを楽しめる。山で優雅にコーヒーを楽しむなら、ミル挽きコーヒーかもしれない。
「山コーヒーを楽しみながら、しばし好きな本を読む」。こんな時間を持てれば最高にちがいない。
■準備不足の身には低山で良かった!
低山だとはいえ、下山道は予想以上に急峻で、長い鎖場もあった。下山口から小川町駅までが実に長かった。低山の割りに中山を登ったほどの疲れがあり、確かに変化に富んでおり、歩いた距離や時間の割りには疲労感が強かった。。
買ってすぐの靴を履いて山を登った結果、足が皮革部分にすれてか、インソールが足になじまないせいか、とにかく痛くてたまらなかった。痛いので靴下を脱ぐとそれほどでもなく、また歩き始めると傷み出す。なぜだか分からない。
「カカトの靴擦れの対策と対処法」を読むと、「ヒリヒリしたらすぐにテーピングや絆創膏を貼る」ことを薦めている。しかしテープどころか何も準備をしていなかった。足の裏に豆でもできていたら目も当てられなかったかもしれない。
実際に山に登る2日前に買った靴を履き、靴ずれ対策を何もせずに登ってしまった。登山のプロから見ると、気狂い沙汰に違いない。これがもっと距離のある中山・高山だったらと思うと胆が冷えた。低い山で良かったのだろう。
■更科そばで打ち上げ
「小川町は”小京都”と呼ばれる観光地。駅前にグルメ店が多い」とか。打ち上げは駅前のそば処「しむら」。ビールで乾杯し、自宅でも最近はなかなか食べられない「イカと里芋の煮っ転がし」や「肉じゃが」に舌鼓を打った。
打ち上げは1時間足らずで全員が小川町始発の急行に乗るべく駅に急いだが、実は私は駅から10分ほどのところにあるおがわ温泉「花和楽(かわら)の湯」(埼玉県比企郡小川町角山)に行きたくて仕方がなかった。昔一度浸かったことがあり、こんなところにこんな湯がと思ったことを覚えている。
「あの店のオーナーは屋根の瓦職人だったんだよ。それで名前も無理にかわら(花和楽)と付けたんだ」と朝の地元民との会話を思いだした。後からよく考えると、足も疲れて辛かったので、10分歩けるかどうかも分からない。見送って正解だったかもしれない。