【北関東旅行】うだるような猛暑の中、世界最大120mの青銅製仏像「牛久大仏」を眺めて
■建てたのは東本願寺
世界最大120mの青銅製仏像で有名な牛久大仏(茨城県牛久市)に参拝した。ちょうど牛久市に住む親戚におめでたがあり、それを祝福するのが目的で牛久に行ったが、その前に大仏を拝むことになった。
牛久市に入ると、突然現れたのが大仏だった。120mもあり、ひどく目立った。浄土真宗東本願寺派本山東本願寺(茨城県牛久市久野町2083)という。
同じ仏教と言っても、真言宗などの密教や曹洞宗などの禅宗も入れると全部で13宗派もある。その中で最も信徒が多い宗派が浄土真宗と言われている。江戸時代までは「一向宗」と呼ばれていた。
教祖は、平安時代の後期に浄土宗で学んだ親鸞。教義は「善人なおもて往生す。いわんや悪人をや」。生きている間によい行いをした善人でさえ死んだら極楽に行ける。それくらいだから悪人であればなおさら極楽に行ける。
■世界最大120mの青銅製仏像
「牛久浄苑」は首都圏最大級の公園墓地を名乗っている。大仏の周辺には墓地が配置されているが、一方で周辺は工業団地でもあり、各種企業が立地している。立像の裏手には電線が配置され、いくら大きくても現代から無縁であるわけにはいかないようだ。
ブロンズ製立像で全高120m(像高100m、台座20m)、立像の高さは世界で6番目。青銅立像としては世界最大。姿は東本願寺派の本尊である「阿弥陀如来像」の形状をしている。
小動物公園や花畑などがある浄土庭園内にあり、公園墓地「牛久浄苑」との複合施設となっている。総面積は37万㎡。浄土真宗東本願寺派本山東本願寺によって1986年に着工し1993年に創建された。
奈良の大仏が掌に乗り、米の自由の女神の3倍近い大きさである。ギネスブックには「世界1の大きさのブロンズ製仏像」として登録されている。
日本で最も有名な大仏は東大寺の大仏(奈良県)。752年、聖武天皇の発願により造立された。2つ目は鎌倉の大仏(神奈川県)。高徳院にある。高徳院や大仏が建造された経緯は解明されていない。
第3の大仏は明確ではない。京都市の方広寺にあったが、火事で焼失してしまった。候補としては神戸市内能福寺にある「兵庫大仏」と岐阜市内正法寺にある「岐阜大仏」の2つ。前者は戦時中の金属類回収令によって焼失し1991年に再建され、後者は1832年に完成している。
ほかにも東京・板橋区には東京大仏や上野大仏もある。また仏像でなくても高崎白衣観音なども建っている。どうも高いものが好きな性格らしい。
■現在は「真宗教団連合」で交流
宗教というのはやっかいなものだ。強く自己主張をすればするほど他者と主張が対立するものだ。それも兄弟が対立するとどうしようもなくなるものだ。政治も絡んで分裂した。
浄土真宗は多くの宗派に分かれているが、その中でも最大のものが東本願寺を本山とする真宗大谷派と西本願寺を本山とする本願寺派である。浄土真宗には真宗十派と言って、10の宗派に分裂している。キリスト教にもカトリックとプロテスタントがあるのと同じだ。
ただ仲の悪かったのは江戸時代までで、対立は徐々に弱まり、内容によっては共同歩調を取るようになった。明治になると、お東とお西の間は雪解けムードが広がり、第2次大戦後は融和と言ってもよい関係になっている。
現在でお東とお西を含む浄土真宗の10派で真宗教団連合を組織し、互いに交流を深めているようだ。ただ一般門徒の間には心情的な違和感がまだまだ存在していると言えそうだ。
■地上80mから外を眺める
胎内に入ると、内部にはパネル展示等があり、歴史や仏教の世界について学ぶことができる。1階は「光の世界」で、2階は「知恩報徳の世界」(地上10m)。写経を行う空間。3階は「蓮華蔵世界」(地上20~30m)。約3400体の胎内仏に囲まれた金色の極楽浄土の世界。4階および5階は「霊鷲山(りょうじゅせん)の間」(地上80~85m)。
「霊鷲山」とは釈尊ゆかりのインドの地名。ここには仏舎利(釈尊の遺骨)が安置されており、エレベーターで昇ることができる。四方に窓があり東西南北を見渡すことが可能だが、像自体の美観の問題から広々とした展望台は設けられていない。
胸部からの景色はスリット(切れ目、隙間)状に設けられた小窓から見ることになる。この日は雲1つ無い快晴で、意外と遠望が効かない。
■猛暑の牛久大仏周辺、九州は大雨
10日の日本列島は暖かい空気が流れ込み気温が上昇。山越えの風が熱を帯びて吹き下ろす「フェーン現象」の影響で、牛久をはじめ関東甲信越は特に厳しい暑さとなり、山梨県大月市では今年の全国最高となる38.7度を観測。気象庁によると、午後4時時点で35度以上の猛暑日となったのは全国で53地点だった。ちなみに東京都心は36.5度、栃木県佐野市38.5度、埼玉県所沢市38度、群馬県桐生市37.9度。
関東甲信越が猛暑に苦しんでいる一方で、気象庁によると、活発化した梅雨前線の影響で10日午前、九州を中心に激しい雨が降った。各地で各地で土砂災害や河川の氾濫、クルマの水没などが相次ぎ、5人が死亡し3人と連絡が取れていないという。
福岡、佐賀、大分の3県で線状降水帯が発生。梅雨前線が付近に停滞し、太平洋高気圧の縁を回るように大量の水蒸気が流れ込んだ。この時期は同様のメカニズムで豪雨が起きやすく、特に今年は上空の偏西風が弱いことなどから前線がとどまり、雨雲が発達を続けているようだ。
大仏様の足元には約2万㎡のお花畑が広がっている。春先には桜や芝桜、6月はアジサイ、7月はケイトウが咲き誇っている。秋にはコスモスが満開になるという。
大仏様の裏手のステージではお猿のショーが開催されていた。どうやら猿も猛暑には弱いらしく、可哀想だった。