【中元】宮崎産完熟マンゴーのセールスに寄与した東国原英夫元知事=富裕層にターゲットを絞った戦略が奏功
■インドが原産国
大阪からお中元が届いた。マンゴーである。送ってくれた人の友達がさらに西の宮崎県に住んでおり、そこで獲れた贈答品が「完熟マンゴー」だった。日本でもマンゴーが獲れるのである。
マンゴーを初めて見たのは現役時代に取材したアフリカ大陸のケニアだった。確か換金作物として地植えされていた。ウィキペディアによると、マンゴーはウルシ科マンゴー属の果樹、またはその果実。
マンゴーの栽培は古く、紀元前のインドで始まっており、仏教では「聖なる樹」(アソカノキ、インドボダイジュ、サラノキ、エンジュ、マンゴーと仏教5木の1つ)とされ、ヒンズー教では「万物を支配する神プラジャーパティ」の化身とされている。
日本語のマンゴーは英語のmangoから、さらにはポルトガル語のmanga、マレー語のmangga,タミル語のmankayから伝わったといわれる。
原産地はインドからインドネシア半島周辺と推定されている。インドでは4000年以上前から栽培が始まっており、仏教の経典にもその名が見られる。現在では500以上の品種が栽培されている。
インド、メキシコ、フィリピン、タイ、オーストラリア、台湾が主な生産国で、日本では沖縄県、宮崎県、鹿児島県、和歌山県、熊本県で主にハウス栽培されている。
■自然落果したものを「完熟マンゴー」として出荷
世界最大のマンゴー生産国(年間収穫量は約160万トン)はインドで、輸出も行われている。タイや台湾も盛んだが、特筆すべきなのは日本。
ウィキペディアによると、日本では露地栽培によって果実を実らせることが難しいため、ビニール栽培が普通。ハウス栽培を行うのは高い気温の確保ではなく、マンゴーの開花時期が日本の雨期と重なるため、水に弱いマンゴーの花粉を雨から守ることで受粉をさせ結実させるためだという。
日本では約3000トンが生産され、品種のほぼすべてがアーウィン種。生産量の上位は沖縄、宮崎、鹿児島の順。通常のマンゴーは完熟する前に収穫されているため、通常は追熟と呼ばれる経過をへて食べられるが、宮崎県で栽培されるマンゴーの全ては樹上で完熟し、自然に落果したものを「完熟マンゴー」として出荷している。
通常のマンゴーに比べ非常に甘く柔らかいことが特徴。完熟マンゴーは4月中旬から7月頃までしか出荷されない。出荷段階で完熟しているため、常温では数日、冷蔵でも1週間程度しか保存できないうえ、樹上から自然落果するタイミングも測れないため出荷が不安定となり、他県のマンゴーに比べて高額で取引される。
■宮崎産マンゴーのブランド化に成功した東国原知事
樹上で完熟を迎えた「完熟マンゴー」は自ら落果する。熟度が上がり、大玉(大きい物では650g級)がぷっつんと落果する瞬間は迫力があるという。
これに備えて、マンゴーは1玉ずつネットにつるされる。マンゴー農家は落果する気配がなんとなく分かると言うらしいが、落ちる瞬間を一度体験したいものだ。
世界中では1000種類以上あるマンゴーだが、日本では明治中頃に栽培が始まった。当時は鹿児島県以南の露地栽培が中心だった。宮崎県では昭和59年(1984年)にピーマンやキュウリに次ぐ基幹産業を育てるべく8戸の農家がマンゴーの栽培を開始した。
しかし栽培ノウハウもなく、炭疽病(黒点)も多く発生。栽培当初、宮崎県産マンゴーの品質は東京の市場ではまったく評価されなかった。
そんななかでJA西都の技術員をしていた楯彰一氏が農家からの相談を受け、完熟し自然落果してしまうマンゴーをキャッチする収穫方法を研究し始め4年ほどで収穫方法を確立させた。
平成11年(1999年)には「完熟」で収穫される食味の良い高品質マンゴーとして「太陽のタマゴ」を統一ブランドとして商標登録した。
豊洲市場ドットコムによると、宮崎産マンゴーの販売促進で力があったのはテレビタレントの「そのまんま東」こと東国原英夫氏。平成19年(2007年)1月の宮崎県知事選挙に当選し、宮崎県の知名度向上に乗り出した。
「農業が宮崎の基幹産業。だけど市場では、毎日農産品の全国大会が行われているようなもの。その中でどうやって勝てるか。僕なりに分析し選んだのがマンゴーだった」(転職サイト「@type」2015.2.26)
「安いものを求める人は捨て、富裕層にターゲットを絞る。そして、その人たちが『高くてもこれが欲しい』という付加価値を付ける。宮崎マンゴーを贈られた人が『こんな高級なものを』とありがたみを持てるようなブランドにしようと考えました」(同上)
東国原知事の登場から既に15年。今は企業が一斉に「安いものを求める人は捨て、富裕層にターゲットを絞る」時代に入っている。日本には小金持ちが多い。少子化で不動産相続が珍しくなく、小金持ちは一段と小金を積み上げている。貧乏人はそのままで、両者の分断がますますひどくなっているのが実態だ。