【初秋】カマキリとアゲハチョウに出会った秋の日にイチジクをがぶりと頬張ると口中にとろけるような上品な甘さが広がる食感は何ともたまらない
■もうすっかり秋、奏者もセミから秋の虫に
あれ松虫が鳴いている。ちんちろちんちろちんちろりん♪ あれ鈴虫も鳴き出した。りんりんりんりんりいんりんー。日中の最高温度は30度を超える日が続いているが、陽が落ちると、世の中の景色はもうすっかり秋である。
夜お風呂に入っていると、外でどういう音がするかで何となく世の中の移り変わりが分かる。それまではうるさいくらい鳴いていたセミの声が聞こえなくなり、今やコオロギや鈴虫の声で満ちている。
虫は何のために鳴いているの?日経新聞(9月9日夕刊)の「親子スクール理科学」によると、虫が鳴くのは「メスを探して子孫を残すため」だという。
コオロギの仲間では、鳴いているのはもっぱらオス。音で交尾する相手を探しているのだという。コオロギは自分の縄張りの中にメスが入ってくると鳴き方を変えて、交尾に誘うんだという。自分の縄張りを主張したり、縄張りに入ってきたほかのオスと音でけんかをすることもあるようだ。
鳴く虫と言えば、真っ先に思い出すのはセミ。ついこの前までうるさいほど鳴いていた。流石に9月も半ばを過ぎると秋の虫に機会を譲ったようだ。コオロギは片側の翅(はね)の根元にギザギザとしたヤスリを持っていて、これで反対側の翅の根元にある突起をすばやくこすっていろいろな高さの音を出しているが、セミが鳴く方法はコオロギとは全然違う。
セミはお腹の中にある振動膜を震わせて音を出し、「気のう」と呼ばれる空気の袋に共鳴させて、音を出すのだとか。大声で鳴いて遠くのメスを呼び込んでいるのだという。
■蚊は30度を超えると動きが鈍くなる
玄関のそばが小さな庭になっており、春先はいろんな花が乱立している。一番大きいのはわが家のシンボルツリーであるヒメシャラで2階までそびえている。ヒメシャラからどうやら樹脂が落ちて、駐めている車の窓ガラスを汚している。窓ガラスを拭くのが結構大変だ。
4月ごろから7月始め頃までは庭先にテーブルを出して、朝方は毎日のようにガーデンコーヒーを楽しんでいた。春先の風は肌に気持ち良く、いい気分だった。
それが7月半ば頃から蚊が発生し刺され出した。水やりを行う場合、1回で大体10個所くらい刺されてしまう。家内の場合もっと刺されるので、ガーデンコーヒーも楽しめなくなった。露出している部分をスプレーでシューシューとやるが、刺されないようにするのは意外と難しい。
今年は酷暑が延々と続いている。9月に入ってからも30度を超える真夏日が続いている。アース製薬によると、「蚊は気温25~30度のときが一番活発。30度を超えると動きがにぶくなる」という。35度を超えると植木の葉の裏などの木陰に身を潜めるようになるらしい。
日本で刺されやすい蚊は、ヒトスジシマカとアカイエカ。ヒトスジシマカは屋外に多い白黒まだらの蚊。庭木や生け垣、草むらや墓地、雑木林などに潜んでいて、近づいてきた人や動物を狙って吸血してくる。
ヒトスジシマカは10月くらいまで見掛ける。卵で越冬するので、秋の終わりの成虫は、越冬卵を産む。卵を産むためには吸血が必要で、10月でも吸血してくる。成虫では冬を越せないので、子孫を残すために必死に吸血してくる。子孫を残すためと言われて、あなたは黙って腕を差し出しますか?
■カマキリは益虫
過日、庭先でカマキリを見つけた。カマキリの幼虫はとにかくアブラムシやダニ類を食べ、成長に従ってバッタ類やカメムシなど大きな獲物を捕らえてくれる益虫だ。正確に言えば、害虫だけを食べるわけではなく、益虫となる虫も食べるのだが、益虫としての効果は高い。
3年程前(2020年6月30日)にまだ小さいカマキリを見つけた。卵から生まれたときの大きさは1cm未満だが、ざっと見たところ5㎝くらい。生後2カ月くらいたっているかもしれない。益虫は歓迎だ。
それにしても虫が好きな子どもがいる一方で、嫌いな子どもいる。人生いろんな人間がいるのは承知しているものの、なぜそんな違いが生じるのかは不明だ。
「小さい時に何が好きだったのか」はその人の将来を決めることにもなる。昆虫好きの子どもが昆虫を研究する道に進むのか。嫌いな子どもはまた別の道を探すのだろう。
何でもいいから「自分が強く関心の持てるものをいつ見つけるのか」が重要なような気がしてならない。研究はいつしか研究者的な生活をすごすようになり、おのずと大きな発見につながるものだ。
何だっていい。人とは違う何者かを見つけることが重要だ。その違う者を追求していくことだ。子どもの研究者はすばらしい。
■あてもなく飛ぶアゲハ蝶
9月になって珍しくアゲハチョウ(揚羽蝶)を見た。いつも通っている最寄り駅に近い公園の葉の上に止まっていた。何をしていたのだろうか。
「美しい蝶がいるな」と思って、そのまま行く過ぎようとしたが、「今度いつ出会えるか分からない」と思い返して戻って写真に収めた。やはり羽根が美しい。
アゲハチョウとは、アゲハチョウ科に属する蝶の総称だが、日本では一般的によく見掛ける「ナミアゲハ」(並揚羽)のことを指す場合が多いという。
気にしていると自分の庭のあたりでも連続して飛んでいるのを見つけた。結構かなり速いスピードでふわふわ飛んでいる。どうも明確な方向性がなさそうだ。
「小さな園芸館」によると、チョウは羽根が大きく柔らかいので、一般的に「ふわふわと飛ぶ」が、そんなにのんびり飛ぶわけでもない。あんまりのんびり飛んでいたら失速しかねかねない。
いずれにしてもアゲハチョウの羽根は特に大きいため、「あっちにふらふら」「こっちにふらふら」とあてもなく大きくさまようように飛ぶ。次の動きを予感できない。よく見ていると、方向性が定まらないのだ。これがアゲハチョウの特徴と言われている。
また、アゲハチョウの成虫が見られるのは3月~10月に多い。どこへでも気ままに飛び回り、様々な花から蜜を吸っていく。水たまりや湿地、海岸に飛来して吸水することもある。
オスはメスを求めてひたすら飛び回り、メスを見つけると猛アタックをかける。一夫一妻ではなく、チャンスがあれば異なる相手とも何度も交尾をする。交尾は長く1時間ほど続くという。
成虫の寿命は2週間ほどでその間にオスとメスが出会い、産卵する。年に3回~6回ほど一生のサイクルを繰り返す。赤色や紫色の花を好む傾向が強く、春はツツジ、夏は百日草、秋は彼岸花などに多く集まるという。
■黒いアゲハ蝶は「吉兆」を意味する!
諸説あるが、一般的に蝶は、神や天使からの使いとして考えられている神秘的な生き物だという。つまり幸運をもたらしてくれるのだ。蝶に会いたいと思ってもなかなか会えない。飛び方もふわふわと優しい雰囲気を醸し出しながらも、上品で優雅さを感じる飛び方をしているようだ。
「どことなく、天使っぽいというか、神様が身守ってくれているような暖かさを感じさせる」(エンタメLab)存在のようにも思われる。
「スピリチュアルの公園」というスピリチュアル(精神や魂、神や霊など)やパワーストーン、パワースポット、占いなどの研究家サイトによると、スピリチュアルの世界では黒いアゲハ蝶は吉兆を意味するという。何せ「アゲハ蝶」=「上げ波長」らしい。
黒いアゲハ蝶の出現は「大きな変化の訪れ」を予示することもあるという。近い将来に人生の転機が訪れる可能性を示しているとも言うらしい。
それ以外にも青いアゲハはオーストラリアでは「幸運の象徴」とされ、日本ではお目にかかることがまずないが、標本などで出回っているとか。
さらに白いアゲハの出現は「悪縁を避けることを意味する」。白は日光を反射するため同じように悪い縁をはねのけるのだという。白いアゲハが現れることで、新たな人間関係やポジティブなつながりに導かれる可能性があるという。
さらに言えば、黄色いアゲハは金運や幸運の象徴でもあり、富を意味する。その色彩から金運や仕事運の上昇を示すメッセージが込められているだとか。
揚羽蝶1つとってもみても、含蓄が実に豊かだ。あんまりスピリチュアルに考えていくと、どうも神的な世界にのめり込んでしまいそうだ。スピリチュアルな世界は適当にすべきなのだろう。
■イチジクの旬は夏と秋の2回
イチジク(無花果/いちじく)は昔は家庭果樹として1~2本はどの家庭にも植えられており、季節の味を楽しんだ世代には、根強い需要があるものだが、私も需要家の1人。先日、近くの八百屋の店頭で見つけてしまった。
見つけるともうたまらない。確か500円台だったが、手が伸びてしまった。「とにかくおいしかった」「昔よくもいで食べた」という思い出が急膨張するのである。ビワなどあまりにあっさりしすぎておいしくなさすぎたという例もあるが、イチジクはあまり外れがないので嬉しい。
プチプチした食感と甘みが好きだ。秋のイメージが強いイチジクだが、実は旬の時期が2回あるという。夏に旬を迎える夏果専用種と秋に旬を迎える秋果専用種の2回だ。
夏果専用種の旬は6月頃~8月頃で秋果よりも大きいのが特徴。秋果専用種は8月頃~11月頃で夏果よりも甘みがあるという。
2020年に日本で最も収穫量の多いのは和歌山県(シェア19%)で、次いで愛知県(17%)、大阪府(12%)、兵庫県、福岡県の順。今回八百屋で買った千葉県(姉崎産)は12位となっている。
■8割は桝井ドーフィン
世界で最も古い果実の1つがイチジク。イチジクはイラクサ目イチジク属の落葉樹木。西アジア、アラビア南部で、アダムとイブの話の中に出てくる「禁断の果実」とはイチジクのことで、古来からあったようだ。
食用にされる部分は果実ではなく、イチジクの花に当たる部分。イチジクは、「隠頭花序」(いんとうかじょ)と呼ばれる花を付ける木で、果実のように見える部分は、花軸が肥大化したもので、切った時に粒流のように見える花があるのが分かる。
国内で流通しているイチジクの約8割は「桝井ドーフィン(ますいドーフィン)」という品種。広島県佐伯郡宮内村(現・廿日市市)出身の桝井光次郎氏が1908年(明治41)にアメリカから持ち帰った種を育苗したものだ。果実が大きく、収量も多く、果皮がしっかりしていて輸送性に優れていることで広がった。
イチジクも追熟しない。木でどこまで熟したものかで味わいには大きな差が出てくる。スーパーに並んでいるのは甘みがあっさりしたものが多いが、完熟してから収穫されたものは果実が柔らかく、ねっとりと舌に辛み、甘みもしっかりとしている。どれを食べるのか食べ方も難しいものである。